記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/2 記事改定日: 2019/4/16
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
女性は発症率の高い膀胱炎ですが、膀胱炎が原因で発熱が起こることはあるのでしょうか?膀胱炎の症状や危険なタイプの膀胱炎の特徴などをご紹介していきます。
人間は尿をある程度ためてから排出します。尿をためる場所を膀胱といい、何らかの細菌が膀胱で増えて炎症を起こした状態を膀胱炎といいます。ひんぱんに尿意が起きたり、血尿や残尿感、排尿時の違和感のほか、痛みを感じることもあります。膀胱炎の症状は排尿に関するものが中心で、発熱することはあまりありません。
膀胱炎は女性にとっては比較的多い病気のひとつです。膀胱炎の原因となる菌は、主に大腸や直腸にいる菌で、尿道とは近い場所に存在しています。特に女性は男性に比べて尿道が短く、細菌が感染しやすいと考えられています。膀胱炎にもいくつかの種類がありますが、尿意を我慢したり、冷えや月経が誘引となることもあります。また、妊娠時や便秘時のほか、性交渉後などに生じることもあります。
膀胱炎の症状といっしょに発熱を伴う場合は、他の臓器の炎症や全身の炎症の可能性を考える必要があります。たとえば、腎臓に炎症が起こる腎盂腎炎(じんうじんえん)や、前立腺や精巣の上側にある部位に炎症が起こる前立腺炎や精巣上体炎の可能性があります。また、発熱に加えて、ぐったりして意識がはっきりとしない、呼吸が荒く脈も速い、動悸がするといった症状がみられる場合は、全身性の炎症の可能性もあります。膀胱炎くらいでと様子をみず、早めに受診をしましょう。
腎盂腎炎や前立腺炎、精巣上体炎を併発している場合には以下のような症状が見られます。
放っておくと、敗血症に進行したり、将来的に造精機能に異常を生じて不妊症になるリスクもあります。当てはまる項目が多い場合は、なるべく早めに病院を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
膀胱炎が悪化すると、膀胱で増えた細菌が他の器官で増殖をしてしまい、炎症を起こすことがあります。中でも腎盂腎炎は重症化すると命に関わることもあります。腎盂は腎臓の中にあり、つくられた尿をためておくための袋です。腎盂腎炎は、腎盂で細菌が増殖して腎臓全体が炎症を起こしている状態をいいます。通常は細菌も尿と一緒に体外へ排出されますが、何らかの原因で尿の通り道に問題があるときに起こります。
腎臓は、身体の中のさまざまな代謝でつくられた不要物を、尿として体外へ出すための大切な臓器です。腎臓がうまく働かないと身体に様々な症状が起こります。膀胱炎の症状に加えて、高熱が出るほか、激しい腰痛、吐き気やだるさ、寒気、そして意識障害や全身へ感染が広がることともある怖い病気です。特に高齢者の場合は発熱しないこともあり、重症化に注意が必要です。
腎盂腎炎の治療は安静と投薬によるものが基本ですが、重症化すると入院が必要となることもあります。
膀胱炎のほとんどは細菌の感染によるもので、抗生物質の投与による治療が中心になります。軽度のうちに適切な治療を受ければ数日間で症状が治まってくるでしょう。大切なことは、処方された抗生物質は最後まで飲みきることです。たとえ症状がなくなっても、自己判断での中止をしないようにしましょう。また、症状が改善しなかったり、何度も繰り返したりするというときは、別の病気や普段意識していない要因が隠れているかもしれません。先延ばしにせずに医療機関を受診しましょう。
膀胱炎は女性に多い病気のひとつです。女性の身体は膀胱炎になりやすい構造をしており、妊娠や月経など女性のみが経験する現象も誘引となります。泌尿器の病気は受診を先延ばしにしてしまいがちですが、不快な症状だけではなく、トイレが心配で外出が億劫になるなど生活に支障がでることもありますし、重篤化のリスクもあります。しっかり治して毎日を楽しみましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。