記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
近年、ダイエットを行う上での遺伝子検査に注目が集まっています。こちらの記事では、ダイエットにおける遺伝子検査のメリットや得られる効果、遺伝子検査のやり方などについて解説します。
遺伝子検査とは、身体の組織を採取し、遺伝子を構成している「塩基」という物質の配列を調べるものです。人間の遺伝子の99.9%は同じ配列になっており、残りのたった0.1%の違いが個々を生み出しています。この0.1%の部分の配列を詳しく検査することで、太りやすい体質やアルコールに弱い(もしくは強い)体質、罹りやすい病気など、生まれつきの体の傾向を知ることができるのです。
人間が持つ遺伝子には肥満と大きく関わるものがあり、その数は50種類にものぼると言われています。代表的なものは「ベータ3アドレナリン受容体遺伝子(β3AR)」「ベータ2アドレナリン受容体遺伝子(β2AR)」「脱共役たんぱく質1(UCP1)」などです。
遺伝子検査では、どの肥満遺伝子を持つかを調べることによって肥満の原因を知ることができるため、体のどの部位に脂肪が付きやすいか、どのような食事を摂ると太りやすいか、どのようなダイエット法が適しているかといった、ダイエットをより効率的に進めるために必要な情報を得ることができます。
ダイエットを目的として行う遺伝子検査では、以下のようなことがわかります。
・お腹や下半身など、脂肪が付きやすい部位
・筋肉の付きやすさ
・基礎代謝量が少ないかどうか
・摂取すると太りやすい食べ物
人それぞれ体質が異なるため、適しているダイエット方法は異なります。とある人には効果が感じられたダイエット法であっても、また別の人には全く効果が見られなかったというケースは珍しくありません。ダイエット方法をひとつひとつ試していくことはできますが、体質に合っていないと続けられなかったり効果が得られなかったりし、時間もかかってしまうでしょう。
遺伝子検査で体質と太りやすさの傾向が把握できれば、その人に合ったダイエット方法を見つけることができます。そのため、遺伝子検査をしておけば、より効率的にダイエットを進められると言えるでしょう。
遺伝子検査には、病院で受ける方法と自宅で行う方法の2つのパターンがあり、どちらも検査のやり方に違いはほとんどありません。病院でも自宅でも、専用の検査キットを用いて行います。近年はインターネットなどでダイエット向けの遺伝子検査キットが販売されており、自宅で気軽に検査をすることが可能です。
検査のやり方は、口の内側をこすって粘膜を付けた綿棒をケースに入れる、もしくはケースに直接唾液を入れるだけと簡単です。病院で検査を受けた場合はそのままケースが回収されて検査が行われます。自宅でキットを使った場合はケースを郵送する必要があり、結果は自宅に郵送されたり、使ったキットによってはインターネットで閲覧できたりします。
ダイエットにおいての遺伝子検査のメリットは、自分の遺伝的な体質を知ることができることから、自分の体質に沿ったダイエット方法が見つかりやすくなることです。受診する病院や使用する市販のキットによって多少異なりますが、遺伝子検査の結果をもとに体質の傾向は3~5つのタイプに分類され、どのようなダイエット方法が向いているか、どのような食事を避けたほうが良いかなどのアドバイスを細かく受けることができます。
自分に合ったダイエット方法を選択することで効果を実感しやすくなることから、ダイエットをする気力が起こりやすいこともメリットのひとつです。気持がより前向きになることで、ダイエットが継続しやすくなるでしょう。
肥満に関与する遺伝子が存在することは確かですが、肥満に関する遺伝情報の現れ方には個人差があり、その情報のみでは個々人に合ったダイエット方法などを厳密に分析することはできません。また、肥満遺伝子は現在わかっているだけでも60以上の種類があり、未だ解明されていないのもの多くあると考えられています。検査キットではこれらの遺伝子すべてを調べることはできず、いくつかをピックアップして評価が行われるため、完全に正確な検査であるとは言えないのです。
遺伝子検査はあくまでも、「その可能性が高い」といった参考の一つとして考えるようにしましょう。
遺伝子検査ではその人それぞれの体質が詳細に把握できるため、罹りやすい病気だけでなく、肥満の傾向を知ることができます。そのため、より効果が得られやすいダイエットの方法や、太りやすい食事など、肥満への対策を練ることも可能です。なかなかダイエットが継続できない方は、市販のキットを使ったり、遺伝子検査をしている病院を受診したりすることを検討すると良いでしょう。