記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/27
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
前十字靱帯(ACL)は、膝にある靭帯のひとつです。運動中に急に立ち止まったり、誰かが膝にぶつかってきたりしたときに発症することが多いと言われています。この記事では、前十字靱帯(ACL)損傷のメカニズムや症状、治療法について解説します。
前十字靱帯(ACL)とは膝関節の中にある靭帯です。膝頭(膝蓋骨)の後ろに位置し、 膝が回転するときに膝を安定させる役割を担っています。ちなみに、そのほかの靭帯として、後十字靱帯(PCL)、内側側副靭帯(MCL)、外側側副靭帯(LCL)があります。また、前十字靭帯と後十字靱帯は、大腿骨と脛骨をつないでいます。
膝前十字靱帯(ACL)損傷は一般的な膝の損傷で、ジャンプして着地したときや、膝の外側からタックルしたときなどに膝が外れて発症し、その後痛くて動けなくなったり、時間が経つにつれて膝が腫れて曲げ伸ばししづらくなったりすると言われています。
平均すると、男性より女性のほうが前十字靱帯損傷(ACL)のリスクが2〜8倍高いと言われています。サッカーや野球といったスポーツをする子供も増えていることから、最近では10代の子供たちの間でも発症することが多い症状です。
膝前十字靱帯(ACL)損傷は、スポーツ中に起こることが最も多いです。たとえば、サッカーやフットボールの試合中に、相手選手が膝にぶつかってきたことが原因で頚骨が離れたときや、スキーやトランポリンでジャンプなどの動作を行うときなどに発症することがありあます。
また、以下のような一人でいる状況でも発症することがあります。
・動き続けていたときに突然止まったり、急に向きを変えたりした場合
・ずっと動いていなかったのに、突然ジャンプやターンのような動きをした場合
・膝関節を過度に伸ばした場合
膝前十字靱帯(ACL)を損傷すると、部分的または完全に断裂する可能性があります。 また同時に、他の膝靭帯(内側側副靭帯(MCL))の損傷や、半月板損傷、または骨挫傷も発生する可能性があります。
膝前十字靱帯(ACL)損傷の主な兆候は、「ゴリッ」「ブツッ」といった「断裂音」です。これは痛みや腫れを伴うもので、骨や膝が削れているような感じがすることがあります。また、もうひとつの兆候として、損傷後、足に体重をかけることができなくなる、といった症状がみられます。
運動中に断裂音がしたり、膝が腫れて曲げ伸ばしできなくなったりなど、膝前十字靱帯(ACL)を損傷したと思われる場合は、なるべく早く整形外科で診察を受けてください。
医師は、怪我をしたときの状況を聞いた後、膝の可動域や怪我の程度を確認するために検査します。また、MRI(磁気共鳴イメージング)で損傷を確認することができることがあります。
主治医は損傷の重症度、年齢、身体状態、病歴、およびほかの損傷または病気などを考慮しながら治療方針を決定します。若い人や健康な人の場合、手術を受けるのが一般的です。
膝前十字靱帯(ACL)損傷後、膝の曲げ伸ばしの回復が遅れたり、太ももがやせて力が入りにくくなったりすることがあります。この状態を放置していると、普通に歩くことも難しくなってしまう恐れがあります。このような場合、手術前に2~4週間ほどリハビリを行って、運動機能の回復を促すことがあります。
手術では、生体組織を使って膝前十字靱帯(ACL)を修復または再構築します(「膝前十字靱帯再建術」と言います)。生体組織は、太ももの後ろにある筋肉の腱(半腱様筋[はんけんようきん]と薄筋[はっきん])か、もしくは」膝のお皿の下にある腱(骨付き膝蓋腱[しつがいけん])のどちらかを使います。術後の経過をよくするために、損傷してから5カ月以内に手術を行うのが理想的です。
手術後、膝と脚の強度を回復するために、集中的な理学療法(リハビリ)を行います。
リハビリは決して無理をせず、痛みが出たり不安を感じない範囲で行われます。少しずつ手術をした脚に体重をかけていき、松葉杖や装具がなくても安定して歩けるようになることを目指します。階段の昇り降りや、通勤・通学ができるようになったら(10日前後かかります)退院となることが多いです。治療期間はおよそ10〜32週間です。 治療目標は、動きと強さを増やし、靭帯が自然に治癒できるようにすることです。
膝前十字靱帯(ACL)損傷から回復するのは、難しいかもしれません。 これは、日常的または定期的な活動中に損傷が発生した場合に特に当てはまります。 医師の目標は膝前十字靱帯(ACL)を回復させることですので、治療が大切です。
なお、膝前十字靱帯(ACL)損傷をしたことがある人は、将来、変形性関節症または退行性関節炎を発症するリスクがある、ということが明らかになっています。これは、怪我の治療法がどのようなものであったかに関わりなく起こり得ると言われています。
膝前十字靱帯(ACL)損傷といった怪我を防ぐためには、特定のトレーニング(損傷防止、パフォーマンス向上(PEP)プログラム)に取り組むのが効果的です。このプログラムは、膝の安定や強化に焦点を当てたストレッチや、敏捷性を鍛える練習を組み合わせたものです。
ちなみに、膝当てを使用すれば膝前十字靱帯(ACL)の損傷を防ぐという明確な根拠はありません。 また、膝当てが治療や理学療法に役立つという証拠もありません。
膝前十字靱帯(ACL)を損傷すると、鈍い断裂音がしたり、痛みや腫れで思うように膝を動かせなくなるといった症状があらわれます。治療せず放置すると、日常生活に支障をきたす恐れがありますので、なるべく早く整形外科医にみてもらいましょう。