記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/22
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
美容外科や肥満外来などで処方されることのある「ダイエットピル」とはどんなものなのでしょうか?やせる効果や副作用などのリスクについて解説します。
ダイエットピルとは肥満治療薬のことを言います。ダイエットのためのサプリメントなどとは異なり、医師が処方しないと手に入れることができず、主に美容系の皮膚科や形成外科、内科や肥満外来などで処方してもらうことができます。
ダイエットピルには、食欲を減退させて食事の摂取量を減らすタイプと脂肪分が身体に取り込まれるのを防ぐタイプに分類されます。身体に無理なダメージを与えず、自分の体質に応じてストレスをかけずにダイエットをすることができるという特徴があります。
ダイエットピルは薬品のため、副作用があります。その効果によって副作用も異なります。
1つ目は、薬への依存性、睡眠障害といった精神面の副作用です。食欲中枢に作用して食欲を抑制するダイエットピルです。この種類のお薬は食欲を調節するために神経伝達物質としてセロトニンやノルアドレナリンに対して制御をします。このセロトニンやノルアドレナリンは循環器や精神機能なども制御しているため副作用が出やすいことが特徴です。また、便秘や吐き気、胃の不快感、口の渇きも見られます。
2つ目は分解酵素の阻害です。食べた脂質は分解されないと吸収されないので、その分解を抑制するものがこのお薬です。薬を使うことで脂肪の分解が遅延し、吸収される前に排出されます。体内で吸収されなかった脂肪はすべて便として排出されます。そのため副作用として腸の不調や下痢、おならの回数の増加が見られます。またおならと一緒に脂肪分が出てくることもあるため便漏れのような状態となり下着を汚してしまうこともあります。
ゼニカル®とは脂肪を体内で吸収させずに排出するお薬で、食事中に含まれる脂質や脂肪分の約30%を消化させずに体外へ便として排出させます。アメリカのFDA(米国食品医療品局)による厳しい審査基準を満たした安全性の高い肥満治療薬となっています。
ゼニカル®は脂溶性が高いため、内服後、胃内で食物中の油脂成分と混合されて油滴に溶解します。その後エマルジョンの界面でリパーゼを阻害し、食物由来のTG分解を抑制します。その結果小腸での吸収を抑制し,糞便中の脂肪排出量を増大させて脂肪を排出することで体内での脂肪吸収を抑制します。
ゼニカル®の効果を最大限に発揮するためには服用方法が非常に重要です。ゼニカル®は食事前後の30分以内に内服します。食後時間が空きすぎると腸内で脂肪の吸収が始まってしまうため食直後に内服することが理想的です。1日3回まで内服することができますが、1日1回でも効果は見られます。
副作用は腸の不調や下痢、おならの回数の増加、脂肪を含んだ脂肪便、歯の不調や吐き気などがあり、飲み始めて3か月以内に起こります。多くの人が1~4週間ほどすれば症状が軽減します。
サノレックス®とは食欲を抑制させる作用のあるお薬です。アドレナリン再取り込み阻害薬であり、前シナプス細胞からのアドレナリン放出を増強することで食欲抑制効果を発現します。しかし、アドレナリン放出が枯渇すると作用が持続しないという特徴があります。
前述したゼニカル®よりも適応者が厳しく、BMI35以上の高度肥満者とされています。
薬は医師によって内服回数が異なり、1日2錠または1日3錠を食前に内服します。継続期間は3か月が目安とされており、1か月内服しても効果が見られなければ中止しなければなりません。
副作用は口渇感、便秘、胃部不快感、悪心などが多くなります。他にも精神症状や自律神経症状、中枢・末梢神経障害などが多くみられ、精神に作用することから依存傾向も強く出ます。
ダイエットピルは、正しい方法で内服することによってストレスを最小限に抑えつつ、ダイエットを成功に近づけることができます。しかし医薬品であるため自己判断で内服すると身体に異変をきたす可能性もあります。そのため、医師の診察を受けて医師と相談したうえで薬を選択して内服することをお勧めします。まずは一度医療機関を受診して医師に相談をしましょう。