記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
2018/3/27
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
発症すると激しい嘔吐と下痢を起こす、と言われるノロウイルス感染症。主にウイルスが付着した二枚貝を食べたことが原因で発症し、症状が落ち着いた後もしばらくはウイルスを排出し続けるため、二次感染のリスクが高いと言われています。この記事では、ノロウイルス感染症の症状や治療法とともに、家族内で二次感染を防ぐ方法についても紹介します。
ノロウイルス感染症は、冬場に多くみられるもので、激しい嘔吐と下痢を起こす胃腸炎として有名です。乳幼児から高齢者まで、幅広い年齢層で発症します。主な感染経路として、ウイルスに汚染されたカキなどの二枚貝を生で食べたり、加熱が不十分なまま食べたりすることが挙げられます。
ノロウイルスは感染力が非常に強いため、ノロウイルスに感染した人の嘔吐物や便などを処理したり、ノロウイルスに感染している人が調理した食事を食べたりすることで、人から人へと感染していきます。このため、学校や幼稚園・保育園、高齢者施設などで集団感染が頻繁に起こります。
ノロウイルスは急性胃腸炎を引き起こすウイルスで、感染すると24~48時間後に、激しい吐き気や嘔吐、水のような下痢、腹痛が起こります。熱は高くないのが特徴で、ほとんどの場合、36度台の平熱か、37度台の微熱が出ます。このような症状が1~2日ほど続いた後、数日で治ります。後遺症もありません。
なお、ノロウイルスに感染しても発症しない場合や、軽い風邪のような症状が出て落ち着くこともあります。
ノロウイルスそのものに効く薬はなく、1~2日で自然に症状が改善し始めます。対症療法として、整腸剤や吐き気止めの薬が使われることがあります。ただし、下痢止めを使うと体内にウイルスがとどまり、治るのが遅くなる可能性があるため、積極的な服用はお勧めしません。
ただ、乳幼児や高齢者が発症した場合、脱水症状を起こすことがあるため、水分をこまめに摂取することが大切です。もし、下痢や嘔吐によって脱水症状がひどい場合は、点滴をすることもあります。
ノロウイルス感染症を発症した場合、何日ぐらい学校や幼稚園などの通学・登園を控えたほうがいいかは、法律で決まっていません。会社についても特に法律上の決まりはないので、下痢や嘔吐といった症状が落ち着くまでは通学・通勤を控えたほうがよいでしょう。
ノロウイルス感染症の場合、症状そのものは数日で治まりますが、症状が落ち着いた後も数週間はウイルスが糞便などに排泄されています。このため、家族間での二次感染を防ぐための予防策がとても重要です。
ノロウイルスは、嘔吐物を処理したときや、トイレに行ったときなどにウイルスが手に付着し、その手でドアノブや水道の蛇口などに触れることで人から人へ感染していきます。このため、面倒であっても、嘔吐物の処理後やトイレの後はもちろん、帰宅後や調理前、食事の前にはその都度しっかりと石けんで手を洗って感染を防ぐことが大切です。
また、嘔吐物や糞便、おむつを処理する際は、使い捨てのマスクや手袋をして、すばやく処理しましょう。特に嘔吐物は、拭き取る際に飛び散ることがありますので、飛び散らないように静かに拭き取ってください。また、拭き取った後は、市販のノロウイルス用の消毒液や家庭用の塩素系漂白剤を薄めたものを使って消毒することも忘れないでください。もし処理が不十分で拭き残しがあると、嘔吐物が乾燥し、ウイルスが空気中に漂って空気感染を引き起こす恐れがあります。丁寧に拭き取って消毒しましょう。
拭き取った嘔吐物やおむつ、拭き取りに使用した雑巾やマスクや手袋などは、ビニール袋に入れて密閉して処理します。処理後は、必ず手を洗いましょう。
また、ノロウイルスに感染した人が使った食器や洗濯物は、基本的にほかの家族のものと分けて洗いましょう。ノロウイルスは、85度以上の高温であれば1分ほどで死滅するウイルスですので、熱湯に浸してから洗うと、感染を予防することが出来ます。また、塩素系漂白剤に浸して消毒してから洗ってもよいでしょう。
ノロウイルス感染症は、激しい嘔吐と下痢を繰り返すため、脱水状態になりやすいです。経口補水液やスポーツドリンクなどを利用して、こまめに水分を摂取するようにしましょう。
ただし、スポーツドリンクには糖分が多量に含まれており、大量に摂取すると急性の糖尿病になる恐れがありますので注意が必要です。また、食事は無理に食べる必要はありません。もし、食べることができそうだったら、おかゆやスープなど、消化の良いものを少しずつ食べるようにしましょう。
ノロウイルス感染症の原因となるノロウイルスは、感染力がとても強く、症状が落ち着いた後もしばらくはウイルスが混じった便を排出することがわかっています。発症した人は無理をせず、体力をしっかり回復させてから学校や会社に戻りましょう。また、看病する人は二次感染を起こさないよう、嘔吐物などの処理のあとは消毒と手洗いを忘れないようにしてください。