記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/23
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
鍼(はり)の治療って、身体にいっぱい針を刺されたりして、なんだか痛そうなイメージがありますよね。
でも、頭痛や肩こり、腰痛など、身体の節々の痛みをラクにしてくれたりもします。ここでは、鍼灸(しんきゅう)治療は本当に痛くないのか? どんな効果があるのか、注意すべきことは何かといった、鍼灸治療の実際を説明していきます。
鍼灸治療は古代中国医学に由来します。治療または予防のために、細い針を身体の特定の部位に刺入します。
鍼灸治療は、有効性が証明されているものではありませんが、さまざまな症状の緩和に効果があります。
鍼灸治療をうけることで、ある程度長い期間で痛みを軽減できます。鍼灸治療により、皮膚の下および筋肉の中の感覚神経を刺激することにより、身体は痛みを緩和するエンドルフィンのような天然物質を産生します。これらの物質が、鍼灸治療の効果に関与していると考えられています。
伝統的な鍼灸治療は、エネルギー、すなわち「生命力」が経絡と呼ばれる体内の道を流れるという信念に基づいています。この生命力は「気」と呼ばれています。「気」が体内を自由に流れないと、病気を引き起こすため、鍼灸で「気」の流れを回復し、健康を改善することができるとも考えられています。
鍼灸師(しんきゅうし)は、様々な健康状態を改善するために鍼灸治療を使用します。
鍼灸治療は、有効性が明確には立証されているものではありませんが、以下の症状を改善するためによく行われます。
・慢性緊張型頭痛
・片頭痛
・頸部痛などの慢性疼痛
・関節痛
・歯の痛み
・術後痛
最初の治療は通常20~40分間で、健康状態、病歴の評価、健康診断を行ってから、鍼灸治療を行います。
治療の回数は人によって異なります。
針は、経穴と呼ばれる身体の特定の場所に刺入されます。治療中は、座ったりうつ伏せになるように言われます。鍼灸師が身体に針を刺入できるように服を脱ぐように指示されることもあります。
使用される針は細く、通常は数センチの長さです。針は使い捨てで、使用後に処分され、事前に滅菌されています。
鍼灸師は、患者の状態に基づいて針を刺入する部位を決めます。症状に応じて刺入する本数が変わります。
針がいったん刺入されると、数分から約30分間そのままに放置されます。
針が刺入されるとチクッとしたり鈍い痛みを感じることがありますが、激しい痛みではありません。もし激しい痛みを感じたら、施術者にすぐに教えてください。
場合によっては、針を回転させたり、軽い電流で刺激されることもあります。
鍼灸治療を受ける場合は、施術者が、鍼灸師の資格を保有していることを確認するようにしましょう。
有資格者によって施術される場合、安全性は高いですが、一部の人は、以下のような軽度(短期間)の副作用があります。
・針を刺入した場所の痛み
・針を刺入した場所の出血や内出血
・眠気
・気分が悪くなる
・めまいがする
・既存の症状の悪化
血友病などの出血性疾患がある場合、または抗凝固剤を服用している場合は、針治療を受ける前に、医師に相談してください。
また、金属アレルギーや、針が刺入される部位に感染症がある場合は、鍼灸治療は勧められません。
妊娠中に鍼灸治療を受けるのは安全ですが、針の刺入を避けたほうがよい部位もあるので鍼灸師に妊娠していると伝えてください。
「痛そう」「怖そう」といったイメージで敬遠されていた人も多いと思いますが、驚くような痛みはあまり多くないようです。それでも怖いと思う場合は、鍼灸師に相談してみましょう。
頭痛や肩こり、腰痛などを和らげてくれるので、そうした症状に悩まされている方は、ぜひ鍼灸治療を考えてみてください。