記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/9
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病患者が悩むことのある症状の一つに、足や体の「浮腫(むくみ)」があります。では、なぜ糖尿病になると浮腫が発生するのでしょうか?改善方法と併せてご紹介します。
「浮腫(むくみ)」とは、全身の血流が悪くなることで細胞間の水分が異常に増加してしまった状態のことをいいます。立ち仕事やデスクワークなど同じ姿勢を取り続けたときなどに起こりやすくなりますが、糖尿病を患っている人にひどい浮腫がみられる場合は、合併症である「糖尿病性腎症」が疑われます。
糖尿病性腎症は、高血糖状態が続くことによって腎臓が酷使され、腎機能が低下してしまう病気です。腎臓は、血液中の老廃物をろ過して尿として排泄する働きのほかに、体内の水分量やナトリウムなどの電解質バランス、血圧の調節なども担っています。そのため、障害が起こると体内の水分量がうまく調節できなくなり、浮腫が出やすい状態となります。糖尿病性腎症の症状が悪化して「腎不全」となると、人工透析を受けなければならない状態になりかねません。
糖尿病性腎症は、「糖尿病性細小血管症」が進行したものです。糖尿病で高血糖の状態が長く続くと、組織のタンパク質に血液中のブドウ糖が結合した物質が増えて全身の細い血管を痛めつけ、血管が詰まったり破れたりします。これが糖尿病性細小血管症で、腎臓のろ過装置である糸球体は細い血管が多いために起こりやすく、その結果腎機能が低下して糖尿病性腎症となります。
初期にはほとんど自覚症状はありませんが、進行すると浮腫が足や全身に出るようになり、身体を動かすと息切れや胸苦しさを感じるようになります。血圧が上がり、消化管がむくむことから食欲不振や満腹感が起きることもあります。さらに悪化すると、貧血で顔色が悪くなり、疲労感、吐き気やおう吐など、尿毒症の症状もあらわれ、腎不全となって人工透析が必要となります。
糖尿病性腎症を原因とした浮腫の対策として大切なのは、医師の治療方針に従った食事療法や運動療法、インスリン療法などによる「血糖コントロール」です。
一時的な浮腫の予防、解消法であれば、身体を温めて血流をよくすることがおすすめです。同じ姿勢を取り続けないようにし、デスクワークなどでは1時間に1回は立って軽いストレッチをする、むくんでいる部位をマッサージする、湯船でしっかりと温まる、適度な運動で血流をうながすことなどができます。足の指を開いたり閉じたり、足首を回すだけでも効果があり、状態に応じてフットバス(足浴)、フットマッサージを行うと良いでしょう。
また、ビタミン・ミネラルを食事できちんととることも大切です。それでもむくみが改善しない場合は、早めに医療機関に受診しましょう。糖尿病性腎症の早期発見は簡単な尿検査で可能なので、糖尿病の人は定期的に検査を受けて腎機能を確認しておくことが大切です。
糖尿病の人にひどいむくみがあるなら、糖尿病性腎症かもしれません。初期に自覚症状はありませんが、悪化すると腎不全となって人工透析が必要となります。日常的に血流をよくすることや定期検査での早期発見を心がけ、異常があればすぐに血糖コントロールの治療、指導を受けるようにしましょう。