糖尿病の末期にあらわれる症状にはどんなものがある?

2018/5/2

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

国民病とも呼ばれる糖尿病ですが、糖尿病が進行し末期になるとどんな症状が現れるのでしょうか。また、末期症状を食い止めるにはどうすればいいのでしょうか。

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糖尿病の末期にあらわれる「三大合併症」とは

糖尿病の怖さは、進行することで全身にさまざまな合併症を引き起こすことにあります。多くは血管の病気で、末期になると「三大合併症」を発症するほか、免疫力が弱まってひどい感染症を起こす危険性も増します。

三大合併症のひとつは、「糖尿病網膜症」です。毛細血管がもろくなって出血しやすくなり、目がかすむ、飛蚊症、視力低下、視野が狭くなるなどの症状があり、進行すると網膜剥離を起こして最終的に失明する危険があります。

2つ目は「糖尿病性腎症」で、腎臓の血管がもろくなって機能が低下し、浮腫(むくみ)や高血圧があらわれます。放置すると腎不全を起こして人工透析を受けることになります。

3つ目は「糖尿病性神経障害」です。末梢神経に異常があらわれ、しびれや痛み、感覚が鈍くなる、発汗のコントロールができない、立ちくらみ、下痢や便秘、排尿障害や勃起障害などさまざまな症状が起こります。

糖尿病網膜症とは

糖尿病網膜症は、高血糖の状態が長く続くことで、目の網膜(カメラでいうフイルムにあたる部分)に広がっている毛細血管が詰まったり破れるといった障害を受ける病気です。初期には小さな出血や白班などが少数ありますが、自覚症状はありません。進行すると白班が増えて比較的大きな出血もあらわれ、視力低下、視野の異常を自覚することがあります。ここまでの段階でしっかりと治療しないと、その後の進行を食い止めるのが難しくなります。

次には詰まった血管に代わって新生血管の増殖が始まることから、レーザー光線で焼き固めてそれを防ぐ「光凝固治療」が行われます。さらに進んで大出血や網膜剥離、網膜前の硝子体の混濁などが出現すると、治療は大変難しくなり、最悪の場合失明に至ります。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、高血糖の状態が長く続くことで、細かい血管の多い腎臓のろ過装置である糸球体が傷害され、腎機能が低下してしまう病気です。初期にはほとんど自覚症状はありませんが、尿の中にタンパク質が漏れ出しているのが通常の検尿でもわかるので、この時期に発見ししっかり治療することが大切です。

進行すると、むくみ、貧血、高血圧などがあらわれ、厳格な血糖コントロールが必要となります。さらに進むと普通に生活することが難しくなっていき、やがて腎不全になり老廃物などを尿中に排泄する働きの障害がはっきりとあらわれます。末期まで進行して尿毒症の状態になると、人工的に老廃物などを血液中から取り出す治療(人工透析)に頼らなければ生きていけなくなってしまいます。

糖尿病神経障害とは

糖尿病神経障害も、高血糖の状態が長く続くことで起こります。もっとも典型的な初期症状は両足の裏のしびれで、だんだん上の方へ広がり両手指も先端からしびれはじめます。ひどくなるとほとんど痛みを感じなくなるうえ免疫力の低下などが重なり、足にケガをしても気づかずに小さな傷が足の切断にまで至ることもあります。

神経障害が進むと、足の力が入りにくくなったりこむら返りが起こりやすくなる、眼球をうまく動かせずものが二重に見えるといった「運動神経障害」、不快な痛みを感じたり、逆に痛みなどを感じなくなる「知覚神経障害」も起こります。また、「自律神経障害」を起こし、立ちくらみや発汗異常、下痢や便秘、消化吸収の異常や排尿異常、インポテンツなどがあらわれ、重症になると昏睡に陥ったり心拍が止まり急死することもあります。

どうすれば末期症状を食い止められる?

糖尿病自体に末期はなく、一般的に末期といっているのは糖尿病合併症の改善が困難な状態のことです。生活習慣からくる糖尿病の基本的な治療は、食事療法と運動療法による血糖コントロールです。これができていれば糖尿病を発症しても悪化せず、合併症の発症も防ぐことができます。糖尿病が進行してからでも、症状の改善は可能です。末期の症状が起こるのは、高血糖状態が続いて血管がもろくなり、血液が十分に送られず酸素や栄養が細胞まで送られなくなるためです。こうなる前に、きちんと血糖値をコントロールすることが大切です。日々の身体の変化を観察してセルフケアにつとめ、異常に気付いたらすぐに医師に相談するようにしましょう。

おわりに:合併症が重篤化した場合は糖尿病末期。異常に気付いたら、すぐに医師に相談を

糖尿病は病状が進行しても血糖コントロールで改善が見込めますが、糖尿病合併症を発症しそれが悪化すると元の状態を取り戻すことは難しくなります。合併症を発症しないように予防すること、発症したら早く進行を止めることが重要です。異常に気付いたらすぐに医師に相談するようにしましょう。

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