記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/1 記事改定日: 2019/7/4
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病にはさまざまな合併症がありますが、そのうちの一つが腎臓の機能が低下する「糖尿病性腎症」です。
糖尿病性腎症は重篤化すると透析が必要になりますが、透析をした場合、寿命は短くなってしまうのでしょうか。早期発見のために知っておきたい症状についてもご紹介します。
糖尿病による合併症の一つに「糖尿病性腎症」があります。糖尿病が原因で腎臓の機能が低下する病気で、進行するとタンパク尿が出るようになり、老廃物を腎臓でろ過できなくなっていき、最終的には腎不全に陥ります。そして腎臓の機能が5〜10%まで低下すると、「透析(機械で血液をろ過する治療法)」を余儀なくされます。
糖尿病性腎症は糖尿病患者の約1/3が発症すると言われており、新たに透析を開始する約36000人の透析患者のうち、40%を超える約16000人は糖尿病が原因ということがわかっています(2015年時点)。
糖尿病で透析治療を行なっている患者は、寿命が短くなる傾向にあります。
その理由はいくつかあるのですが、まず、糖尿病と腎不全では治療法が相反する点が多く(腎不全の食事療法では糖質と脂質の摂取量を増やす必要があるが、糖尿病では糖質や脂質の摂取は抑える必要がある等)、治療が困難という側面があります。
また、透析では血液のろ過のために血液量が豊富な血管が必要になりますが、糖尿病性腎症の患者は高血糖状態が続いたことで血管がもろくなっていることが多いです。
透析に適した血管が見つからないために効果を十分発揮できず、老廃物が体内に蓄積した結果、寿命が短くなる傾向があるのです。
糖尿病とは、インスリン不足によって血中の糖分が多い「高血糖」の状態が続く病気ですが、この高血糖こそが腎臓病を招く主要因です。
腎臓は「糸球体」という細小血管の塊が集まった組織で、正常に機能している間は、赤血球や白血球、タンパク質などはろ過せず、老廃物や水、電解質だけを通過させて尿を作ります。
しかし高血糖の状態が続くと、糸球体の血管が硬く狭くなることでろ過機能が低下してタンパク尿が出るようになり、さらに進行すると排尿が困難になり老廃物が溜まって腎不全に陥ります。
また、「高血圧」も腎臓の機能低下を招く要因の一つです。糖尿病患者は高血圧や肥満、脂質異常症などを抱えていることが多いですが、これらも腎臓の機能低下に拍車をかけると考えられています。
糖尿病性腎症は、自覚症状がほとんどないまま進行する厄介な合併症です。しかし、初期段階でもアルブミンと呼ばれるタンパク質が微量に尿から排出されるため、尿検査で発見できることがあります。
3〜5年ほど経過し病状が進行すると、大量のタンパク尿が排出されるようになり、むくみや息切れ、胸部の圧迫感、食欲不振などの症状が現れます。さらに進行すると、吐き気や手の痺れ、顔色が悪い、筋肉・骨の痛み、腹痛、発熱などの症状が出やすくなります。
ただ、糖尿病性腎症は目立った自覚症状が出た段階では、腎臓を元の状態に戻すことは難しくなります。そのため、定期的な尿検査で早期発見することが重要です。
糖尿病腎症は悪化すると腎機能の著しい低下が引き起こされ、最終的には人工透析や腎移植が必要となります。
このような事態を防ぐためにも、糖尿病は早期の段階で発見し、治療や生活習慣の改善につなげていくことが大切です。
しかし、糖尿病は自覚症状が現れにくく、網膜症や腎症などの合併症を併発するほど悪化して初めて発見されるケースも少なくありません。
自身の血糖値の状態を知るには、定期的な健康診断で血液検査を受けるしかありません。目立った自覚症状がない場合でも、職場や自治体の健康診断は毎年欠かさず受けて健康管理をするようにしましょう。
また、糖尿病を発症した場合には、医師の指示に従って治療と経過観察を続けていくことが大切です。
腎機能の低下が見られる場合には腎臓に負担がかかるたんぱく質や塩分などの摂取を控えめにし、水分摂取量にも注意しましょう。状態によっては運動を制限されるケースもありますので、必ず従うようにしてください。
先述の通り、糖尿病と腎不全では食事療法の方針に相反する点がありますが、基本的に透析治療中の食事療法では、食事から出る老廃物を極力少なくすることを重視します。具体的なポイントは以下の通りです。
タンパク質は分解される際、尿酸やアンモニアなどの窒素化合物を出します。これらの老廃物の量が多すぎると、透析で十分除去するのが難しくなります。1日60g程度を目安に摂取しましょう。
食事制限の都合で摂取カロリーが不足すると、体内のタンパク質が分解され、先述の老廃物の量が増えてしまいます。
ミネラルの中でも、透析中にカリウムを過剰摂取すると高カリウム血症、リンを過剰摂取すると関節の石灰化などの合併症のリスクが高まります。
また、塩分は過剰摂取すると喉が渇き水を飲みたくなりますが、透析中は排出できる水分量に制限があるので、塩分は控えめにする必要があります。
糖尿病による腎臓の機能低下で透析をした場合、寿命は短くなる傾向にあります。糖尿病性腎症は発症率の高い合併症なので、糖尿病患者は定期的に尿検査を行い、むくみや息切れといった症状を見逃さないようにしましょう。