糖尿病のめまいや吐き気を甘くみてはいけない?原因と対処法とは

2018/5/1 記事改定日: 2020/7/9
記事改定回数:3回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

糖尿病患者さんにしばしば起こる症状に、めまいや吐き気、ふらつき、体がふわふわした感覚などがあります。めまいなどは病気でなくとも起こりますが、注意が必要な場合もあります。この記事では、糖尿病の人に起きるめまいの原因、対策や予防法について解説しています。

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糖尿病でめまいやふらつきが起こる原因は?

糖尿病の人がめまいやふらつきを感じる原因として、以下のことが挙げられます。

血流の障害

めまいやふらつきは体の平衡感覚に異常が出たときに生じる症状で、平衡感覚は耳の内側にある「内耳」が司っています
糖尿病による高血糖で血流が悪い状態では、内耳への血流が阻害され、めまいやふらつきが起こることがあります。

自律神経の障害

高血糖の状態が続くと、体内でソルビトールという物質が生み出されます。ソルビトールが神経細胞内に蓄積されることで自律神経が障害されますが、自律神経は心拍や血圧などを司っているため「めまいやふらつき」が起こりやすくなります。

めまいやふらつきの対策

血流や自律神経の障害は、いずれも高血糖状態が続くことで起こるものなので、日頃から食事療法と運動療法を徹底し、血糖値コントロールを続けていくことが大切です。

上で述べたような糖尿病の合併症を予防・改善するには、適正な血糖値をコントロールしていくようにしましょう。

血糖コントロールの方法は糖尿病の重症度によって大きく異なります。
血糖降下薬の内服治療やインスリン自己注射などによる薬物療法が必要な場合は、医師の指示に従って治療を続け、定期的な検査を受けましょう。

また、薬物療法が必要な人も必要でない人も、食生活に注意し、適度な運動習慣を身に付けることが大切です。食事療法や運動療法に関しても医師や理学療法士、栄養士の指示に従って進めていくようにしてください。

糖尿病の人は食後低血糖の発作に注意!

糖尿病で血糖降下薬やインスリン自己注射をしている人は、下記のような場合に薬の作用が強くなりすぎて低血糖発作を生じることがあります。

  • 食事量が少なくなった
  • 激しい運動をした
  • 薬の量を間違えた

低血糖発作では、手の震えや冷や汗、動悸などが生じ、めまいを引き起こすことがあります。

糖尿病の人が食後低血糖を予防するには以下のような対策をとりましょう。

  • 食事は規則正しく3食摂る
  • 過度な運動は控える
  • 薬は厳重に管理し、間違えのないにする
  • 薬を飲んだり、インスリン注射をした後に気分が悪くなった場合はジュースやブドウ糖の飴などを口にして糖分を素早く補給する
  • 空腹感が強い時は薬の使用を中止し、病院を受診する

吐き気の症状も出たら糖尿病ケトアシドーシスかも?

糖尿病の人で、めまいだけでなく吐き気も見られる場合は、「糖尿病ケトアシドーシス」を発症している可能性があります。

糖尿病ケトアシドーシスとは、インスリン注射の打ち忘れなどによって極度にインスリン不足になり血糖値が下がらない高血糖状態になることで起こります。

この時の体内では糖分をエネルギー源として活用できなくなり、代わりに脂肪を分解し始めます。その際にケトン体という物質が血中で増えることで血液が酸性に傾き、脱水状態となり、症状があらわれます。

糖尿病ケトアシドーシスの症状
  • 脱水状態になる
  • 急激に喉が渇く
  • 倦怠感
  • 吐き気
  • 腹痛 など

なお、2型糖尿病患者さんの場合は、清涼飲料水の過剰摂取によって血糖値が急上昇し、糖尿病ケトアシドーシスが引き起こされることがあります。重度の場合は昏睡状態に陥ることもあるので注意しましょう。

糖尿病ケトアシドーシスの対策

糖尿病ケトアシドーシスは昏睡状態に陥ると生命の危険を伴うこともあるので、すぐに病院を受診し、点滴やインスリン注射による治療を受ける必要があります。

低血糖によるめまいや動悸などには迅速な対処が必要

めまいだけでなく動悸や頭痛、頻脈などが見られる場合は、低血糖が原因の可能性があります。
糖尿病の人はインスリン分泌がうまくいかないため、血糖コントロールが自然にできない状態です。

食事の時間がいつもより遅れていたり、過度な運動をしていたり、インスリン注射や飲み薬の量が多かったりして血糖値が急激に下がると以下の症状が現れます。

  • 動悸
  • 手指の震え
  • 頻脈
  • 発汗
  • 顔面蒼白

なお、血糖値が50mg/dL程度まで低下すると、頭痛やめまい、かすみ目、生あくびなどの中枢神経症状が出始め、さらに血糖値が低下すると意識障害や昏睡状態に陥ることがあります。

低血糖症状の対策

低血糖の症状が出たら、ブドウ糖5〜10gかブドウ糖を含むジュース150〜200mLをすぐに摂取してください。摂取後も症状が改善しない場合は、すぐに病院を受診しましょう。

なお、意識障害を起こしている場合は、ご家族など周囲の人にグルカゴン注射を打ってもらったり、ブドウ糖を唇や歯肉に塗布するなどの応急処置を受けた上で、救急車を呼んでもらう必要があります。

危険なめまいに注意!

糖尿病の人は動脈硬化を起こしやすいため、脳梗塞や脳出血などを発症するリスクが健康な方よりも高くなります。突然、身体が浮くようなめまいと共に吐き気、手足の麻痺・しびれ、言語障害などの症状が現れたときは脳に何らかの異変が生じている可能性がありますので速やかに救急車を要請しましょう。

糖尿病は単に血糖値が上がるだけでなく、様々な合併症を引き起こす病気です。なかには命を落とすケースもありますので、糖尿病と診断された人や健康診断などで高血糖を指摘されたことがある方は定期的な受診と適切な糖尿病治療を続けるようにしましょう。

おわりに:糖尿病患者さんはめまいや吐き気が出たら処置が必要!あらかじめ医師から対処法を聞いておこう

めまいや吐き気、ふらつき、動悸をもたらす原因としてはさまざまなものが考えられます。症状や状況によって考えられる原因は異なるので、慌てず対処するようにしてください。低血糖の場合は意識障害に陥り命に危険がおよぶこともあるので、ご家族や職場の人などに応急処置の方法を伝えておきましょう。

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