記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/1
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病患者さんで、慢性的な便秘や下痢にお悩みの方は少なくありません。では、糖尿病と便秘・下痢にはどんな関連性があるのでしょうか?発生メカニズムと治療方法をご紹介します。
糖尿病によって高血糖状態が続くと、神経細胞で代謝異常が起こったり、細小血管の血流が悪化して神経細胞に栄養や酸素が届かず、神経障害が起こるようになります。神経の中でも自律神経は内臓の活動や血圧維持などを調整する神経ですが、糖尿病によってこの自律神経が障害されると、消化管運動の機能が低下し、便秘や下痢を引き起こすようになるのです。
また、同じく神経障害によって、便秘や下痢の他に不整脈や発汗異常、立ちくらみ、勃起障害などの症状が現れることもあります。
まず治療の前には、便秘や下痢が糖尿病の神経障害によるものかを検査することが重要です。検査の結果、神経障害が原因と診断された場合は、血糖コントロールを改善し、血流を良くして神経細胞に栄養や酸素が届くようにすることが基本的な治療方針となります。よほど重度の便秘や下痢でない限りは、血糖コントロールの改善によって緩和するのが一般的です。
また、血糖コントロールだけでなく神経障害を治療する薬物療法も実施されます。具体的には、アルドース還元酵素阻害薬(細胞内のソルビトールの蓄積を防ぎ、神経細胞の機能低下を防止する)や血流を改善する薬、整腸薬などが処方されます。
神経障害による便秘や下痢は、市販の下剤や下痢止めでも改善はしますが、根本原因である神経障害を放置すると他の症状も進行する恐れがあるので、やはり一度は病院を受診し、便通を改善する薬を処方してもらうことが大切です。また、便秘を改善するには、日々の食事で食物繊維を積極的に摂ることもおすすめです。
便秘や下痢は、糖尿病による自律神経の障害によって起こるものと考えられています。「たかが便秘で…」と病院で相談するのをためらう方も少なくないですが、神経障害が原因の場合、根本的に治療を進めないとその他の症状も進行してしまう恐れがあります。食生活の改善などで血糖コントロールを行いつつ、一度病院で相談してみてください。