記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/6/29
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠初期は、微熱や頭痛など風邪に似た症状が現れることがあります。風邪の症状と見分ける方法はあるのでしょうか。また、妊娠初期の発熱は、お腹の赤ちゃんに影響するのでしょうか。
この記事では、妊娠初期の発熱について解説していきます。
妊娠すると、体内のホルモンバランスが変化し始め、体調に変化があらわれます。これを「妊娠初期症状」とよびますが、微熱、頭痛、疲労・倦怠感(だるさ)、吐き気など、風邪と似たような症状があらわれます。
女性の身体は、生理周期に合わせて高温期と低温期をくり返しますが、妊娠すると高温期の状態が維持され妊娠を継続するための準備が進んでいきます。高温期が続くと身体がほてり熱っぽさやだるさを感じますが、それは妊娠によるホルモンバランスや自律神経の乱れが原因です。
のどの痛みや咳、鼻水や鼻づまりは、風邪の影響の可能性が高いといえますが、妊娠の心当たりがあれば検査の必要があるでしょう。また、少量の性器出血、胸の張りや痛み、腰痛、水っぽいおりものの増加、胃のむかつき、味覚や嗅覚の変化、ひん尿や便秘、下痢、肌荒れ、情緒不安定がみられる場合には、妊娠初期症状である可能性が高いといえます。妊娠の可能性があって月経が遅れている場合には、産婦人科に受診するようにしましょう。
妊娠中に風邪をひいても、原因となるウイルスが胎児に感染することはないため、軽い症状であれば特に影響はありません。ただし高熱が続くような場合は、食欲も落ちて体力が低下するため、妊婦にも胎児にも良い状態とはいえませんし、単なる風邪ではない何らかの感染症にかかっている可能性も考えられます。そのような場合には流産や早産につながる恐れもあるので、念のため病院に受診するようにしましょう。
さらに、激しい咳が続くと腹圧がかかり、まれにお腹の張りにつながることがあります。切迫流産や切迫早産のリスクがあると言われている人で、なかなか咳が治まらないときは医師に相談しましょう。
基本的に、妊娠初期に風邪をひいて発熱したことが原因で流産するということは、ありません。しかし、インフルエンザなど別の感染症が原因で熱が出ている場合には、流産などの危険性があるため注意が必要です。
また、通常は感染しても重症化することがまれな食中毒菌「リステリア菌」(重症化すると致死率が高い)など、初期症状がインフルエンザや風邪との区別がつきにくく、胎児に感染して早産や流産、出産後の赤ちゃんの健康に影響するものもあります。発熱が続く場合には、熱の原因を確かめるためにも、早めに病院で診てもらうようにしましょう。
妊娠中の薬の服用の胎児への影響は、妊娠週数によって全く異なります。4週までは胎児への影響はないと考えられていますが、それに続く4~7週目は影響が高く、7~15週目は中くらい、15週目以降は低めとなっています。
特に注意が必要なのが、胎児の臓器が一斉に作られる「器官形成期」とよばれる時期で、中でも4~7週は薬に過敏とされています。また、風邪薬で器官形成期を過ぎた後(妊娠中期以降)に特に注意が必要なのが、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)です。市販薬としてもよく使われる薬ですが、子宮内の胎児の血液循環に重要な役割を持つ「動脈管」という血管を閉じてしまう作用があります。子宮内でこれが閉じてしまうと、胎児の状態は急激に悪化して死に至ることもあります。風邪薬を服用するときには、必ず確認しましょう。
一般に薬の多くは胎児に影響を及ぼす可能性がありますので、妊娠中はすべての薬(市販薬を含む)や栄養補助食品(薬用ハーブを含む)について、服用前に必ず医療従事者に相談するようにしてください。
妊娠初期にはさまざまな症状が出ますが、一般的に症状が出るのは5週目以降とされています。個人差が大きいですが、「妊娠超初期」である4週まではあまり変化はみられず、症状を自覚できる人はほとんどいません。
妊娠初期には、熱っぽさや腰痛、月経のような出血、おりものの量や状態の変化、胸が張る、ねむい、だるい、寒気などといったものがあらわれますが、まったく症状のでない人もいます。5週から7週に入るとつわりや食欲不振がでてくる人があわれます。発熱があっても感染症による発熱でなく、かつ38℃を超す高熱でなければ胎児に影響はありませんが、だるさや体調不良が続く場合には主治医に相談するようにしましょう。
妊娠初期には風邪に似た症状があらわれることがありますが、微熱で感染によるものでなければ特に心配はいりません。風邪をひいてしまったり高熱が続く場合には、自己判断で胎児に影響する市販薬などを服用してしまうことのないよう、早めに医師に相談するようにしましょう。