記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/4/20
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病を改善・予防するには食生活の改善と定期的な運動が欠かせませんが、近年の研究によって「筋トレ」には糖尿病を改善する効果があることがわかりました。以降ではそんな筋トレで得られる具体的な効果や、おすすめの筋トレメニューについてご紹介します。
糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気ですが、この高血糖と筋肉量には深い関連性があります。
まず、人間の体内でブドウ糖を最も消費する器官は筋肉ですが、筋肉量は20代をピークに少しずつ減少していきます。すると、それに伴いブドウ糖の消費量も減少し、血中のブドウ糖の量が増えることで血糖値が上がってしまいます。また、近年の研究によって、肥満の人は筋肉中のインスリン受容体の機能が低下しており、さらにブドウ糖を取り込みにくい状態になっていることも判明しています。
つまり、血糖値を下げるには筋トレで筋肉量を増やすことが重要なのです。筋トレは体内のインスリンの効果を高め、血糖値を下げやすくするだけでなく、基礎代謝量を高め、肥満を予防する効果もあります。なお、海外の研究によれば、筋トレの時間を1週間あたりに1時間増やすごとに、糖尿病の発症リスクは約13%減少することが明らかになっています。
ただし、糖尿病の状態が悪い人は強度の高い筋トレをすると血圧が上がり、かえって心臓や血圧の負担になる恐れがあります。適度な強度、回数に留めるようにしてください。
糖尿病に効果的なのは、足や腰、背中などの大きな筋肉を使った筋トレです。具体的におすすめのメニューは以下の通りです。
肩の力を抜いた状態で立ち、片足ずつ膝を上げたり下ろしたりするのを30回程度行います。このとき、息を吐きながら膝を上げましょう。なお、足だけでなく腹筋を鍛えるために、膝を直角になる高さまで上げるのが望ましいです。
少し強度を上げたい場合は、上半身をひねりながら行いましょう。右膝を上げたら左手の肘がつくようにし、逆でも行ってください。
なお、腰痛持ちや高齢者の方などは、壁に手をついた状態で立ち、かかとの上げ下げをゆっくり行う筋トレも有効です。1日10〜20回程度を2〜3セット行いましょう(できる範囲で構いません)。
足を肩幅くらいに開いて立ち、両腕を前の方へ水平に伸ばします。そのまま呼吸をしながら両膝をゆっくり曲げ、姿勢を1秒前後維持したら、また足を伸ばします。これをはじめのうちは30回程度、最終的には60〜100回を目標に行ってください。
少し強度を上げたい場合は、足の幅を少し広げ、膝が直角になる程度まで腰を落とすようにしてください。
糖尿病を改善・予防するには筋トレと有酸素運動を組み合わせて行うのが有効、ということがわかっています。有酸素運動で筋肉への血流量が増えると、細胞の中へブドウ糖が取り込まれ、インスリンの効果が向上し血糖値が低下するからです。海外の研究によれば、有酸素運動と筋トレをどちらも週150分以上実施した場合、糖尿病の発症リスクがおよそ60%下がったというデータも得られています。
おすすめの有酸素運動は、ウォーキングやジョギングなどの全身を使った運動です。1日2回、30分程度は歩くようにしましょう。なお、歩く際は少し大股で背筋と膝を伸ばすようにしてください。少し汗ばむ程度のスピードで行うのが理想的で、逆にランニングなどの強度の高い運動は、血糖値を上げるホルモンの分泌量を増やしてしまうので避けましょう。
筋トレと有酸素運動を組み合わせた運動メニューを習慣的に取り入れると、糖尿病の発症リスクは低減し、また血糖値の改善効果もあることがわかっています。糖尿病の人も糖尿病予備軍の人も、ご紹介した運動メニューを無理のない範囲で実践してみてください。