記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/6/18
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠中、とくに妊娠初期には体調の変化や不調が起こりやすいです。下痢や腹痛に悩む妊婦さんもいると思いますが、妊娠初期の下痢はどのように対処すればいいのでしょうか。
この記事では、妊娠初期の下痢の原因と対処法について解説しています。妊娠中の下痢のなかには、病院での治療が必要なものもあるので、この機会に正しい知識を身につけておきましょう。
妊娠初期の流産のほとんどは、何らかの胎児の先天性異常が原因で妊娠継続ができなかったケースであり、母体の消化器官の不調を原因とするものではありません。
このため、下痢そのものによって流産など胎児に害が及ぶことはないので、妊娠初期の下痢に対して大きな不安を抱く必要はないでしょう。
下痢を含め、妊娠初期は急激に身体が変化し、子宮も大きくなっていくため、多少の腹痛を経験する妊婦さんは多いと言われています。
特に、下腹や足の付け根に引っ張られるような痛みを感じる人は多いですが、これは子宮が大きくなり、骨盤が開くなど身体の変化による痛みなので、心配ないでしょう。
しかし、あまりにも下痢の症状がひどく長期間にわたる場合や、生理痛のような下腹部痛や不正出血が見られる場合は、注意が必要です。
切迫流産・早産の危険性もあるので、すぐに病院に行ってください。
前項で述べた通り、妊娠の初期症状として下痢を経験する妊婦さんは少なくありませんが、下痢と一緒に発熱や嘔吐の症状があるときは、注意が必要です。
このような下痢が起こっている場合は、妊娠の初期症状によるものではなく、ウイルス性の胃腸炎である可能性が高いですので、医師の診断を受けてください。
また、胃腸炎を引き起こす細菌やウイルスのなかでも、以下の3種類は胎児への悪影響も懸念されていますので、特に注意しましょう。
河川の水や動物の腸、魚介類、昆虫などに付着している可能性のある、高熱・下痢・嘔吐・頭痛・悪寒などの食中毒症状を引き起こす細菌の一種です。
加熱によって死滅しますが、妊婦が感染すると胎児を流産・早産する原因となることがありますので、以下のような非加熱の食品・加工品には細心の注意を払いましょう。
サルモネラ菌も、下痢や嘔吐などの食中毒症状をもたらす細菌の一種です。
胎児に感染することはありませんが、激しい下痢が子宮の収縮を引き起こした結果、流産や早産してしまう一因となり得ますので、注意しましょう。
ヨウ素は、ひじきや海苔、昆布、わかめなど海藻類に多く含まれる栄養素の一種です。
人に必要な栄養素なので、摂取自体が妊婦と胎児に害を及ぼすわけではありませんが、妊婦が摂取しすぎると甲状腺機能低下症になる恐れがあります。
また逆に、摂取量が著しく足りていないと、流産や早産、胎児の脳障害や甲状腺機能低下症を引き起こすことがあります。
ヨウ素は、妊娠中の推奨摂取量である1日当たり2.2㎎を目安に摂取するようにしましょう。
一般的に、前回の生理開始日から数えて0~4週目を妊娠超初期と言い、その後妊娠4~15週までを妊娠初期、妊娠16~27週までを中期、妊娠28週以降を後期と言います。
妊娠の初期にはプロゲステロンという女性ホルモンの分泌が急激に上昇します。プロゲステロンは腸蠕動運動を妨げ便秘となることがほとんどですが、人によっては便秘の後に続けて下痢をすることを繰り返す方もおられます。
妊娠中期になりプロゲステロンの分泌が落ち着くと、症状が落ち着くケースがほとんどでしょう。
妊娠初期に下痢が見られたときは、自己判断で下痢止めなどの薬を飲むのではなく、内科や産婦人科の医師に相談し、許可をもらってから飲むようにしましょう。
下痢のための身体の不調や、過度な心配・不安によるストレスも、妊婦さんと赤ちゃんにはよくありません。心配なことがあるなら、気軽に医師に相談するようにしましょう。
また、妊娠初期の下痢の原因には、ホルモンバランスの変化の他にも、つわりなどによる食生活の変化で、胃腸が弱っている可能性も考えられます。
妊娠初期の下痢を予防・緩和に効果的な対策を以下でご紹介しますので、医師に相談しながら、実践してみてくださいね。
妊娠初期には身体が急激に変化し、下痢を含めいろいろな症状が出ます。妊娠初期症状の1つとしての下痢なら、流産や早産への心配はしなくても大丈夫でしょう。でも、下痢が長く続いたり、下痢と一緒に発熱や嘔吐、強い下腹部痛などの症状がある場合は、赤ちゃんにも影響の出る感染症が隠れている可能性もあります。気になる症状があるなら、すぐに病院に相談しに行ってくださいね。