記事監修医師
工藤内科 副院長 工藤孝文先生のスマホ診療できるダイエット外来
工藤 孝文 先生
熱中症は、真夏に起こるというイメージを持っている人も多いかもしれませんが、春にも注意しなければいけないということをご存知でしょうか。
この記事では、運動会のシーズンでもある春の熱中症について説明していきます。毎日の寒暖差が激しく、涼しい日もあるこの季節は夏に比べて油断しがちです。もしものことが起こらないように対処法を覚えておきましょう。
熱中症は、初夏から秋などの気温が高く、直射日光が照りつける環境で発生しやすいですが、冬も厚着によってうまく体温調整できないことで発生することもあります。
そして、春から夏の季節の変わり目でもある5月に起こる「春の熱中症」にも注意が必要です。
これは、5月特有の「環境の変化」に体が対応できないことが原因と考えられています。
健康な状態であれば、人の体は35度から40度のまでの適切な体温を保っていられますが、疲労がたまっていたり、水分が不足してしまうと体温調節が効かなくなってしまいます。
また、緩やかに気温が上昇する分には体も少しずつ対応することができますが、急激に気温が上がったときは対応できずに体温を保てなくなってしまうことも多いといわれています。
特に突然25度以上まで気温があがるような5月は、毎日の炎天下や猛暑の環境に慣れている7月から8月に比べ、体が対応しにくい環境といえるでしょう。
また、春先は夏に比べて水分補給も疎かになりがちです。急な暑さに備えた服装で過ごしている人も少ないのではないでしょうか。
油断しがちな春こそ、こまめな水分補給などを徹底して熱中症に備えることをおすすめします。
小学校から中学校、中学校から高校へ進学すると、1年生と3年生が一緒に練習するようになります。この時期の学年差による体力差は大きく、3年生と1年生が同じ練習をしている場合は、体力の消耗が激しい下級生の熱中症には特に注意する必要があります。
指導者や先輩は、下級生の様子をよく観察し、適切なタイミングで水分補給や休憩をとらせるようにしましょう。
熱中症の症状には、3つの段階があり、初期の段階(1度)では、めまい・意識の低下・立ちくらみ、頭がぼーっとするなどの症状が起こったり、筋肉痛や体がつってしまうなどの症状が現れることもあります。
さらに進行(2度)すると、頭痛・吐き気・嘔吐・下痢・倦怠感・虚脱感・失神などといった症状がみられるようになり、身体に力が入らなくなったり、ぐったりするといった「熱疲労」と呼ばれる状態が起こります。
意識障害・手足の運動障害・ショック状態にまで進行(3度)すると死に至るおそれがある危険な状態に陥ることになり、緊急治療が必要になります。
重度の熱中症にならないうちに、適切な対処をすることが重要です。
熱中症は、体温調節機能がうまく働かなくなるために引き起こされます。本来人間は、少々暑くても汗を流すことで体内の体温をうまく調節できるのですが、汗をかかなくなり脱水症状になると熱中症を起こすことがあります。
熱中症かもしれないと感じたときには、まずは涼しい場所に移動しましょう。衣服をゆるめてリラックスさせ、できるだけ安静にしてください。それから首筋・脇の下・脚の付け根を冷たいペットボトルや氷嚢などを使って冷やしておくようにします。意識があって嘔吐がなければ、経口補水液で水分補給をさせることも重要です。
ただ、2度以降の症状の場合はできるだけ早急に救急車を呼び、病院で治療を受けましょう。救急車が来るまでは、衣服を緩め、体を冷やして体温を下げる対処を続けてください。
熱中症予防のためには、屋外・屋内を問わず水分補給をしっかり行うことが大切です。のどが渇く前に水分を補給するようにしましょう。
特に気をつけるべきなのが、高齢者です。高齢者は身体の異変に気付かず、そのまま放置した結果、知らずに熱中症になっているケースが少なくないからです。気温が28度を超えるような暑さのときは、室内でもエアコンをしっかりとつけておきましょう。
また、屋外に行くときはできるだけ通気性に優れた服装にしましょう。もし気分が悪くなったと感じたら、すぐに周囲の人に報告してください。
5月はゴールデンウィークもあるので、外出する機会も多いでしょう。出かける前には必ず天気予報を確認し、夏日や真夏日、蒸し暑い日という予報のときは衣服を脱いで涼しい格好になれるような服装で出かけるようにしてください。
その他、暑いと予想される日は、長時間歩くような観光スケジュールを組まないことも大切です。
5月は暑い日と涼しい日の寒暖差が激しく、体が適切な体温調節ができなくなってしまうことも多いです。こまめな水分補給を心がけ、体温調節しやすい服装で過ごすようにしてください。
また、進学や進級したばかりの子供は上級性よりも体力の消耗が激しいため、同じ練習をしていると熱中症になってしまうおそれがあります。指導者は目をはなさず見守るようにしてください。
そして、熱中症は早い対処が重要です。めまいや頭がぼーっとする、吐き気がする、意識がもうろうとするといった症状がみられたら、すぐに身体を冷やしたり、救急車を呼んだりするなど、段階にあわせた適切な対処を行ってください。