記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/5/9 記事改定日: 2019/8/22
記事改定回数:2回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠初期は体調の変化が大きく、仕事に影響を及ぼすことは少なくありません。こちらの記事では、妊娠初期の出血や仕事による流産のリスク、仕事をする際の注意点について解説します。
妊娠初期とは妊娠4~5カ月頃までの期間で、胎児の体や手足はもちろん、脳や心臓などの臓器、神経、胎児への栄養を運ぶ胎盤などが作られる重要な時期です。極端に安静にする必要はありませんが、妊娠初期は無理し過ぎないことが勧められます。このため、妊娠中の母体に影響を及ぼす可能性がある場合を除いて、妊娠初期に仕事をしても問題はありません。
ただし、仕事の内容や体調によっては、なるべく仕事を休んだ方が良い場合もあります。
妊娠中の女性のうち、5割~8割の方にはつわりが認められ、仕事中に具合が悪くなってしまうことも考えられます。つわりは妊娠5~6週から始まって12~16週頃に治まる一過性の不快症状で、妊娠3カ月にあたる妊娠7~11週にピークを迎えるのが一般的です。
つわりが始まると、吐き気や嘔吐、眠気、頭痛などがあらわれます。胃腸の症状がひどくなると、脱水を起こして妊娠悪阻につながることもあります。もし、このような状態になってしまったら仕事を休みましょう。
妊娠初期に出血がみられるのは珍しいことではないため、腹痛はなかったり、出血が極めて少量だったりするのであれば、流産のリスクもないので心配する必要はありません。ただし、妊娠初期に出血には、以下のような可能性もあるため、大事をとって仕事は休むのが安心です。
妊娠22週未満で胎児が体の外に出てしまうことです。
妊娠22週未満で、出血や腹痛などの流産の傾向はみられるものの、胎児は子宮の中にとどまっている状態です。そのまま流産につながるおそれはありますが、お腹の赤ちゃんの命を維持できる可能性もあります。
絨毛膜(胎児を包んでいる胎嚢の周りにある膜)と、子宮壁の間に血が溜まっている状態です。将来的な流産や、早産の原因になる可能性が指摘されています。
このような状態の場合、出血だけでなく腹痛も起こることが多いです。出血に腹痛が伴う場合は無理に仕事をせず、速やかに病院で診てもらってください。
妊娠初期は、ホルモンバランスや体調の変化で身体的にも精神的にも不安定になりやすく、ストレスが溜まりやすい時期です。仕事内容によっては心身に過剰な負担がかかり、これが流産に繋がるのではないかと不安になる妊婦さんも少なくありません。
流産は妊娠した女性のうち15%に起こるとされており、そのうちの80%が妊娠12週未満で起こっています。流産は母体に原因があるわけではなく、胎児の染色体異常(遺伝子の異常)によるものがほとんどのため、安静にしていても防げないケースは少なくありません。
ただし、仕事のストレスが体調に影響を及ぼしてお腹の張り(子宮収縮)を招くことも考えられます。お腹の張りは流産や切迫流産につながるおそれがあるため、注意が必要です。ストレスや疲れを感じた場合は仕事を休み、不安であれば病院に行きましょう。
妊娠初期に仕事をする場合は、以下のようなことを心がけましょう。
周囲には安定期に入ってから妊娠の報告をする場合が多いですが、仕事に影響する可能性を考えると、直属の上司やチームで仕事をしている方には早めに伝えたほうがよいとされています。あらかじめ連絡しておくことで、急な体調変化にも対応しやすくなります。
重いものを持ったり、立ちっぱなしになったり、体を冷やしたりする仕事はできるだけ控えてください。体に過剰な負担がかかると、子宮の収縮に繋がる可能性があります。
腹部への圧迫や転倒などを防ぐため、通勤ラッシュを避けたほうが無難です。職場でフレックスタイム制や時差通勤が導入されている場合は、こうした制度を上手に活用しましょう。
体調が悪い、いつもと違う、気分が悪いなどと感じた場合は、無理に仕事を進めず、休息を取るようにしてください。妊娠を理由とした通勤緩和や休憩が認められない場合は、医師と相談の上で「母性健康管理指導事項連絡カード」を活用してもよいでしょう。