糖尿病で貧血やめまいが起こる原因は? 血液検査で貧血がわかる?

2018/4/21 記事改定日: 2020/9/29
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

あまり知られていませんが、糖尿病患者さんで貧血やめまいにお悩みの方は少なくありません。早期発見のためにも、貧血が自覚症状のひとつであることを理解しておきましょう。今回の記事では、糖尿病による貧血と鉄欠乏性貧血との違い、検査で気づくためのポイントなどを解説します。

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糖尿病で貧血やめまい?「腎性貧血」が起こる理由は?

糖尿病患者の貧血やめまいの原因は、「糖尿病性腎症」によるものです。普段、腎臓は体に必要なミネラルやタンパク質は体内へ戻し、不必要なものは老廃物として排尿するろ過機能を担っています。しかし糖尿病で高血糖状態が続くと、動脈硬化などの影響で腎臓のろ過機能が低下し、尿タンパクが出たり、老廃物を排出できなくなったりして腎機能が低下するようになります。これが糖尿病性腎症の状態です。

そして糖尿病性腎症になると、腎機能の低下に伴い、腎臓から分泌されるエリスロポエチン(赤血球の産出を促すホルモン)の分泌量が減少することで、貧血やめまいが起こるようになるのです。こうした腎機能低下に伴う貧血を、「腎性貧血」と呼びます。

一般的によくみられる貧血は、「鉄欠乏性貧血」です。

鉄欠乏性貧血とは?

鉄欠乏性貧血とは、鉄分が不足することによって引き起こされる貧血のことです。
身体に酸素を運搬する赤血球中の「ヘモグロビン」の正常な産生には鉄分が必要です。そのため、不規則な食生活や胃腸の病気などによる鉄分の吸収障害、胃潰瘍などによる慢性的な出血などが原因で鉄分が不足すると、貧血を引き起こします。

鉄欠乏性貧血の症状は、他のタイプの貧血と同じく、身体が酸素不足になることによる息切れ・動悸・めまい・倦怠感などが挙げられます。重症化すると心臓に負担がかかって心不全を発症するリスクもあります。

また、鉄欠乏性貧血は進行すると味覚に異常を来すことが知られており、氷を異常に食べたがるようになる「異食症」と呼ばれる症状が引き起こされることがあり、爪が割れやすくなる、舌や唇は荒れる、髪の毛が抜けるといった症状が見られることもあります。

検査で貧血がわかる?HbA1c値をチェックしよう

腎性貧血を起こしている糖尿病患者は、「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)値」が低下しやすい傾向にあります。それはなぜかというと、先ほどお伝えしたように、糖尿病性腎症による貧血は、赤血球の産出を促すホルモンの分泌量が減少することで起こります。

赤血球の中にはヘモグロビン(酸素を運ぶタンパク質の一種)が存在するのですが、このヘモグロビンとブドウ糖が結合することでHbA1cができます。つまり赤血球の数が少ないと、その分HbA1c値も低くなるのです。

血液検査で「血糖値は改善しなかったのに、HbA1c値だけは低くなった」という場合には、腎性貧血を疑いましょう。

糖尿病による貧血は食事で改善?薬の治療が必要?

糖尿病による貧血は腎機能の低下が原因で起こります。鉄欠乏性貧血とは異なり、食事から鉄分を摂取するだけで改善するわけではありません。

糖尿病による貧血の治療薬

根本的な原因であるエリスロポエチンの分泌不足を補う、腎性貧血の治療薬による治療が必要です。ただし、エリスロポエチンは鉄分が不足していると効果が低減するため、食事で鉄分を補うことも大切です。

鉄分を豊富に含む食べ物
レバーやほうれん草、大豆、煮干し など
その他、貧血の人が摂りたい食べ物
鉄分の吸収をよくする動物性タンパク質、鉄分を血液に変化させる葉酸やビタミンB2 など

おわりに:糖尿病患者は貧血に注意!血液検査でHbA1c値をチェックしましょう

糖尿病患者は高血糖によって腎臓の機能が低下することで、貧血やめまいが起こることがあります。血液検査の結果で、HbA1c値が低くても血糖値が変わらないなら腎性貧血の可能性があるので注意しましょう。

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