記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病を発症すると、三代合併症や動脈硬化、歯周病などあらゆる病気のリスクが上がります。今回の記事ではそのメカニズムを中心に解説します。
糖尿病には、「糖尿病神経障害」「糖尿病腎症」「糖尿病網膜症」の三代合併症があります。では、これらの合併症はどういうメカニズムで発生するのでしょうか。
糖尿病で高血糖の状態が続くと、細小血管の血流が悪化したり、神経細胞の代謝異常が起こったりすることで、神経細胞に血液や栄養、酸素が行き届かずに神経障害を起こすようになります。
腎臓には血液をろ過し、老廃物を尿と一緒に排出する役割がありますが、糖尿病で血糖値の高い状態が続くと、ろ過の役割を担っている糸球体の毛細血管が損傷し、腎機能が低下して糖尿病腎症を起こすようになります。
目の網膜付近には細小血管が多数存在するため、その分、高血糖による血管の損傷を受けやすくなります。そして網膜付近の血流が悪化することで、出血や白斑が見られたり、網膜剥離を起こして失明するなど、糖尿病網膜症の症状が現れるようになります。
まず動脈硬化は、動脈の内膜にコレステロールが蓄積することで進行するものです。このコレステロールは水に溶けないので、血中で水溶性のたんぱく質と結合しリポ蛋白となるのですが、糖尿病によって高血糖状態が続くと、リポ蛋白が酸化するなど変質し、内膜に蓄積されてプラークを形成します。このメカニズムがあるため、糖尿病患者は動脈硬化が進行しやすくなるのです。
糖尿病によって高血糖の状態が続くと、体内の免疫力が低下し感染症にかかりやすくなります。そして歯周病も細菌感染が原因のため、糖尿病になると歯周病を発症しやすくなります。また、高血糖によって歯茎の血管が損傷することも、糖尿病患者の歯周病の要因です。
なお、歯周病になると歯茎の中で炎症性物質が生み出されるのですが、この炎症性物質はインスリンの作用を妨げるため、糖尿病を悪化させる側面も持ちます。
喫煙すると交感神経が刺激され、血糖値が上昇しやすくなります。また、タバコに含まれるニコチンは体内のインスリンの作用を低下させるため、糖尿病になりやすくなると言われています。国内外の研究によれば、喫煙者は非喫煙者と比べ、2型糖尿病の発症リスクが1.4倍になることが判明しています。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-004.html
みなさんは「ステロイド糖尿病」をご存知でしょうか。ステロイド糖尿病とは、長期にわたってステロイド薬を服用し続けたことが原因で起こる糖尿病です。
ステロイド薬の主成分であるグルココルチコイドは、インスリンの分泌量を低下させ、インスリンの作用を減退させる側面を持ちます。このため、服薬を長期間続けると血糖値が上がってしまい、糖尿病を起こす可能性があるのです。
糖尿病による三代合併症や動脈硬化、歯周病は、いずれも高血糖状態の持続が原因で起こるものです。糖尿病患者は血糖コントロールに注意し、未然に合併症を防ぎましょう。