記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/6/1
記事監修医師
前田 裕斗 先生
更年期になると太るとよく言われますが、特に更年期障害でホルモン治療を受けている女性は、このホルモン治療が原因で太るという噂も。果たしてそれは本当なのでしょうか?
更年期症状の代表的な治療法の1つに、急激に分泌量の減った女性ホルモンを補うことで症状の改善をはかる「ホルモン治療(ホルモン補充療法)」があります。
ホルモン治療の副作用として、治療の初期にホルモンバランスの変化によって軽い吐き気、胸の張り、腹部膨満感が出ることはありますが、ホルモン治療のみで太るということはないとされます。
ただし、ホルモン治療によって体調が良くなったことで食欲が増進し、その結果としてホルモン治療の開始後に太る、体重が増えるという可能性は十分考えられます。直接的なホルモン治療の副作用として太るということはないため、更年期に太るのはホルモン治療のせいではないと覚えておきましょう。
更年期に太ってしまうのは、主に「代謝の低下」と「エストロゲンの減少」が原因です。
以下に、それぞれの原因別に更年期に太る理由を解説しているので、参考にしてください。
代謝とは「飲食物から摂取したカロリーを、身体を維持したり、動かすためのエネルギーとして使用する能力」のことです。一般的に、代謝は年齢を重ねるごとに低下していくため、更年期(40~50代)にもなると若い頃のようにエネルギーを消費できなくなります。
このように、更年期になると同じ食事量でも消費できるエネルギーが少なくなり、消費しきれなかったエネルギーが身体に蓄積されるため、若い頃に比べて太りやすくなるのです。
更年期には、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が著しく減少します。
エストロゲンには内臓脂肪を付きにくくする作用があるため、分泌量が減ると内臓脂肪がつきやすくなり、どうしても太りやすくなってしまうのです。
加齢に伴う更年期太りを解消するには、運動と筋肉の増強で基礎代謝量を増やし、食事内容を見直すのが効果的です。
基礎代謝量の増量のために、ウォーキング、軽めのジョギング、サイクリング、水泳など、身体に負担が少なく無理のない範囲で行える有酸素運動を習慣づけましょう。有酸素運動には脂肪燃焼と筋肉量・代謝アップに加えて、身体を動かすことによるイライラ、うつ症状など、他の更年期症状の改善も見込めます。
食事は栄養バランスを保ちながら、無理のない範囲で脂肪・糖分・塩分の摂取を控えて、野菜を多く使った和食メインの食生活を心がけてください。食事を抜いたり、肉や米など一部の食物だけを摂らないようにするなどの極端な食事制限は、体調を壊したり、更年期症状が悪化する原因になりますので、絶対にやめてください。
更年期になると太るのはホルモン治療の影響ではなく、加齢によって代謝が下がること、エストロゲンの減少によって内臓脂肪がつきやすくなることが主な原因です。更年期に負けず、体型を維持したいのなら、無理のない範囲で運動と食事の習慣を見直してみてください。