記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/5/31
記事監修医師
前田 裕斗 先生
更年期になってから、茶色い不正出血が見られた場合、どうすればいいでしょうか?更年期の不正出血や下腹部痛の原因、治療法と併せて解説します。
閉経前後の10年間、特に40~50代の更年期にあたる女性は、エストロゲンなどの女性ホルモンの減少による不正出血が起こりやすいとされています。
ひとくちに不正出血と言ってもその症状は人によってさまざまで、一時的に少量出血することもあれば、大量の出血が長期間続く人もいます。
出てくる血液の色も、鮮血(鮮やかな赤色)のこともあれば、出血から時間が経って酸化したような茶色・赤茶色であることもあります。
不正出血は一般的な更年期症状の一種ですが、以下のような症状が複合的に起きている場合は、子宮や腟に出血性の病気が潜んでいる可能性があります。
1つでも当てはまるものがあれば、早めに婦人科を受診して、医師に相談してくださいね。
更年期の不正出血を伴う子宮や腟の病気としては、以下のようなものが考えられます。
いずれも早期の発見・治療が完治のカギとなるので、疑わしい症状があるようなら、できるだけ早く婦人科を受診しましょう。
子宮の入り口にあたる「子宮頸部」にできるがんのことです。
悪臭を伴う茶色いおりものが出たり、性交時に不正出血することがあります。
腟と子宮をつないでいる「子宮頚管」に細菌などが感染して、炎症を起こす病気です。
不正出血とあわせて、膿のようなおりもの、性器のかゆみなどの症状が出ることもあります。
腟と子宮をつなぐ子宮頚管に良性のポリープ(腫瘍)ができる病気です。
ポリープが傷つきやすいため、ちょっとした刺激で不正出血の症状が出ます。
妊娠時の胎盤をつくる組織である「絨毛」に、炎症やがん、胞状奇胎などの異常が出る病気です。症状の1つに不正出血が見られます。
子宮のなか、「子宮内膜」にできる癌のことです。
少量の不正出血が長く続く、性交時や排尿時の痛みなどの症状が出ます。
女性ホルモンの減少によって腟内が乾燥・萎縮して傷つきやすい状態になる病気です。
性交時などに傷がつくと、そこから不正出血や細菌感染をおこすことがあります。
腟内の正常細菌であるラクトバシラス属の減少によって、他の細菌が異常増殖する病気です。不正出血の他、灰色がかったおりものや、おりものの増加などの症状が出ます。細菌が子宮やお腹の中まで達すると、下腹部痛が出ることもあります。
不正出血の原因が、更年期による女性ホルモンの減少であった場合は、一時的なもので心配はいらず、すぐに症状も治まるため経過観察のみとすることが殆どです。不足している女性ホルモンをホルモン補充療法(HRT)で補う治療方法もあります。ホルモン補充療法では、飲み薬や貼り薬のホルモン剤を使って、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンを投与していきます。
ただし、乳癌や子宮関係の癌など女性系の病気を患っている場合は、ホルモン補充療法によって病気を進行させてしまうリスクもあります。女性系の病気を患っているなら、治療を始める前に医師に病気の進行にどのような影響があるのか、しっかり確認してください。
茶色や赤色の不正出血は、多少なら一般的な更年期症状の範囲内です。しかし、出血量が多い、期間が長い、下腹部痛などの症状が出るという場合は、更年期以外の出血性の病気が原因の可能性があります。更年期と婦人科系の病気、どちらの場合でも婦人科で治療が可能です。不正出血が続くようであればできるだけ早く婦人科に行って、医師の診断と治療を受けてくださいね。