記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/5/31
記事監修医師
前田 裕斗 先生
母乳育児中のママがよく経験する「乳腺炎」。乳腺炎が悪化すると発熱し、悪寒や頭痛などの風邪のような症状を引き起こすことがあります。成分が心配で気軽に薬も飲めないので、対処法がわからず、むやみに母乳を絞ったり、何もできずに放置したりして、さらに悪化させてしまう人もいます。そこで今回は、乳腺炎で痛みを感じたときの対処法や、葛根湯の乳腺炎への効果について解説します。
乳房に痛みなどの違和感が生じた場合、自己判断せずに早めに産婦人科を受診することが大切です。基本的には、授乳を続けることのできる薬が処方されますが、念のため、医師に授乳について確認しておきましょう。また、処方された薬は、医師の指示にしたがい服用するようにしましょう。
乳腺炎による熱は風邪ではないので、炎症が落ち着いたら解熱することがほとんどですが、なかには1週間ほど微熱が続くこともあります。発熱した場合は、産婦人科や母乳外来などを受診するのがおすすめですが、すぐに行くのは難しいという場合には、以下の方法を参考に対処してみてください。
炎症を起こしている部分は熱を持っているので、温めるとさらに悪化する可能性があります。できるだけ安静に体を休めながら、冷却シートやタオルにくるんだ保冷材で、患部を少しずつ冷やすようにしましょう。このときに、氷水などで急激に冷やすと悪化させてしまうこともあるので、注意が必要です。
「急性うっ滞乳腺炎」の多くは、定期的な授乳と圧を抜くことで自然と治まってくるので、胸が痛くて授乳するのが辛いという人も、定期的に赤ちゃんに母乳を飲んでもらうことが必要になります。このとき、強く搾って乳腺を傷つけてしまわないように優しく行いましょう。
「母乳が出にくい」「味がいつもと違う」などの理由で、赤ちゃんがなかなか飲んでくれない時に、授乳する回数を減らしてしまうと、ますます母乳の分泌が活発になってしまう可能性があります。このような場合には、1回でしっかりと飲ませて、その後胸を休ませることが必要になります。
いつも同じ体勢で飲ませていると、乳腺が詰まりやすくなる場合があるので、適度に角度や抱き方を変えて飲ませましょう。
きつい服やサイズの合わない下着(ワイヤー入りブラジャーなど)で胸を圧迫してしまうと、同時に乳腺も圧迫してしまい、詰まりの原因となってしまいます。なるべくゆったりとした服装にし、自宅であれば下着を外しておきましょう。ワイヤーの入っていない授乳用ブラジャーなどの活用もおすすめです。
葛根湯は風邪の初期によく使われる漢方薬のひとつですが、乳腺炎の症状を和らげる効果もあります。
葛根湯には主に発汗作用や炎症を抑える効果があり、発熱を抑えるために有効的ですが、飲むタイミングに気を付ける必要があります。
葛根湯は、「発熱する前」や「少し微熱がある」という時点で、早めに服用することで効果が期待できます。既に発熱した後のタイミングでは遅いのです。
母乳は、血行をよくするとたくさん作られるとされています。しかし乳腺炎の場合は、既に乳腺に母乳がパンパンに詰まっているので、さらに母乳が作られると症状が悪化してしまいます。そのため、なるべくお風呂での入浴は控え、しばらくはシャワーで済ませるようにしましょう。
温かい食べ物や飲み物の過剰摂取は、胸が張りやすくなる原因の一つとなります。中でも根菜類は母乳の出を良くする働きがあるので、乳腺炎の時にはあまり食べすぎないようにしましょう。
乳腺炎は母乳育児にはつきものですが、痛みが続く場合などには、無理せずに産婦人科や母乳外来で診てもらいましょう。また、母乳外来のマッサージでは、自分では意識できない所まで施術してもらえるので、症状が楽になる可能性があります。なかなか体調がよくならない場合には早めに医療機関を受診しましょう。