記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/6/4 記事改定日: 2019/9/18
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
乳腺炎になると、胸の痛みで授乳ができなくなるだけでなく、高熱が出てしまうこともあります。どうにかして乳腺炎を予防したいと考えている人のために、食事や睡眠、マッサージなどをする際に気をつけるべきことを解説していきます。
胸部を圧迫させないためには、起きている時だけではなく、寝ている時の姿勢にも気をつける必要があります。就寝時の姿勢も乳腺炎の原因となることがあるからです。横向きで寝ると下側の胸を圧迫してしまいますし、うつ伏せで寝ると両方の胸を圧迫してしまいます。そのため、仰向けで寝ることが最も良いとされています。
ただし、寝ているときの姿勢はなかなか意識することが難しいので、せめて眠り始めのときだけでも仰向けに寝て、胸を圧迫しないようにしましょう。仰向けの体勢が辛いときは、タオルの上に腰を乗せて寝ると多少は快適に眠ることができます。
WHO(世界保健機関)は、乳腺炎と食事の関係性について「高塩分と高脂肪の摂取は乳腺症の可能性を高めるという点も含めて、食べ物は乳腺炎に関係していると考えられてはいるが、根拠はまだはっきりしていない」と発表しています。つまり、現時点では食べ物と母乳が溜まりやすくなることの関係性について、まだはっきりと解明されていないのです。
一方で、母乳相談室や母乳外来などでは「脂肪分や糖質の高い食事は乳腺をつまらせたり、母乳の質を下げたりするため、できるだけ避けるように」といった食事指導がされることも多くあります。
このように、まだはっきりとは解明されていなくても、食事と乳腺炎に関係があるのではないかと考えられているのが現状です。また、WHOにおいても「食事と乳腺炎は関係がない」とまで言い切っていない、という事実もあります。これらを踏まえた上で、乳腺炎がひどい人や乳腺炎を予防したいという人は、なるべく高塩分や高脂肪の食事を控えるというのもひとつの方法です。
乳腺炎マッサージも乳腺炎予防には効果的とされていますが、施術を受ける際は身体や症状について医師と相談しておくと安心です。また、乳腺炎のしこりやつまみが取れたあとにも、継続してマッサージをすることで、乳腺炎の発症を抑えることができます。
ただし、高熱がある場合などは、マッサージによって体調を悪化させてしまうこともあるので、自己流のマッサージは控えましょう。また、少し乳房に触れただけで痛みが走るというようなときも、無理にマッサージをするのは控えましょう。
マッサージをする際には、無理をせずに体や部屋を温めた状態で行いましょう。また、鋭い痛みを感じた場合にはすぐに中止してください。
乳腺症予防法のひとつに、漢方薬の「葛根湯(かっこんとう)」を使う方法があります。葛根湯は、一般的に「風邪のひきはじめ」に効果があると知られていますが、そのほかにも頭痛や肩こり、首や背中のこわばり、筋肉痛や体を温める効果、熱や腫れ、痛みを発散させるなどの効果があります。
葛根湯には、身体や経路を温めて発汗を促す作用があり、痛む場所に滞っている気や血・水の流れをスムーズにして、こわばりや痛みをとる効果があるとされています。特に葛根湯に含まれる生薬「葛根」には、乳汁の分泌を促進させる作用があるとされています。それにより母乳が十分に作られてスムーズに排出されるようになれば、乳腺が詰まるリスクを軽減できます。
葛根湯を飲む際に気をつけたいのが、服用するタイミングです。葛根湯は、症状が出始めたと思ったときに飲むのが、一番よいとされています。「なにかいつもと違う気がする…」など、乳房に少しでも違和感を感じたときは、すぐに飲むようにしましょう。
市販の葛根湯・病院で処方される葛根湯のいずれも、1日の用量は決まっています。基本的に漢方薬は食前または食間に飲むことが効果的とされているため、飲み忘れに注意しましょう。また、葛根湯はお湯などで溶かして、温かい状態で飲むと、さらに効果があるとされています。