記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/23
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
この数年間で、自殺者数が減少しているというデータもありますが、それでも日本の自殺者は諸外国に比べても多くなっています。自殺を食い止めるのは難しいことですが、日常の中で自殺を防止するためにできることはあります。ここでは自殺を防止するために役立つことを紹介していきます。
精神病にならないようにすることは不可能ですが、精神的な健康状態をよくすることはできます。
精神的に強ければ、ストレスや動揺に対処でき、うつ病などの精神病になるリスクや、自殺願望を低くすることができるでしょう。
軽度のうつ病の人にとって運動は、症状を軽くするうえで抗うつ薬と同じぐらい効果的であることが研究で示され、次のことにも効果があるとされています。
・気分をあげる
・ストレスと不安の軽減
・エンドルフィンと呼ばれる脳内化学物質(気分をよく感じさせる物質)の放出を促す
・自尊心を高める
また、健康的な食事を摂ることも重要です。健康的な食事は、精神的健康を維持するために重要であり、かつ肉体的な健康問題を予防することにも役立ちます。
飲酒は、悩みや不安感に対処しようとする方法としてはいいこともありますが、悲しみや絶望などの感情を悪化させる可能性もあります。
アルコールの過度な摂取で起こる精神的健康上の問題を避けるために、厚生労働省では1日20g(日本酒1合弱またはビール中ビン1本相当以下)の節度ある適度な飲酒を推奨しています。
どうしてもアルコール量を抑えることができない場合は、医師に相談してください。
悩みや不安感を抱えている人は、感情を対処するために薬物を使います。しかしアルコールと同様に薬物使用が持続すると、うつ病などの重大な精神病が発症するリスクが高くなります。
薬物の使用をやめるのが難しい場合は、カウンセリングや投薬が必要な場合があります。
社会的に隔離されることは、自殺にいたる大きな要因です。自分のまわりの人たちとできる限りかかわり続けるようにしてください。気が向かないときでも、信頼できるだれかに自分がどう感じているかを話し、友だち関係を維持し、関心を持ち続けるようにしてください。
友だちを作るのが難しい場合は、ウォーキンググループなど、地域のアクティビティグループに参加してみるのも手です。地元の図書館、コミュニティーセンター、役所などで、自分の地域にあるさまざまなグループやクラブのチラシが置いてあります。
研究によると、ボランティアやその他の自発的な活動を通じて、人のために定期的に時間を使う人は、通常、一般の人よりも精神的に健康だという結果が示されています。地元のボランティア団体でボランティア活動を行うことからメリットを得られることでしょう。
ボランティア団体にとっては、小さなことでも助けになります。
関心が強いものを選んで、関連する組織に連絡してください。組織をみつける最も効果的な方法は、インターネット検索です。
ポジティブであり続けることは、特に重度のうつ病の人にとっては、無意味なことのように聞こえるかもしれませんが、できる限りポジティブなままでいることが重要です。
ネガティブな考えに固執することは、まわりの世界からひきこもって、さらに孤立してしまいます。
このパターンをなくすには、何かの出来事が自分を動揺させたとき、どのようにポジティブな方法で答えることができるのかという、「ステップバック」という意識を要求します。
ネガティブ思考を変えることができない場合、認知行動療法と呼ばれる治療を受けることができます。
認知行動療法は精神状態をより良く理解し、問題、思考、感情、行動がどのように相互に影響を与えるかについて理解するのに役立つ心理的治療の一種です。治療の目的は、ネガティブな、行動や考えを修正することによって、不安と向き合う方法を学ぶことに役立ちます。
身近に悩みや不安をかかえている人がいれば、ここで紹介したことを参考にアドバイスをしたり、一緒に病院に行ってください。後悔しないようにするには、行動することが重要になります。そのためには、身近な人が悩みを抱えていないかをちゃんと気づくために普段からのコミュニケーションをとるようにしましょう。