自閉症の診断はいつから受けられる?病院での検査内容は?

2018/5/10 記事改定日: 2019/2/17
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

お子さんが発達障害かもしれないと思っても、いつ頃、どこに診断を受けに行くべきなのかわからないという方もいるでしょう。また、診断方法や診断の基準はどのようなものなのでしょうか?医療機関での詳しい診断方法や診断の流れなどを解説します。

自閉症の診断は何歳ぐらいから受けられる?

発達障害は、症状や困りごとが現れて初めてわかる疾患とされており、障害の種類や程度、性別によっても発症年齢や特徴は異なります。
また、医療機関による診断がなくても受けられる支援もあるので、検査や査定を受けることで特性が把握できる場合もあります。

医療機関を受診するかどうかの判断は、本人や保護者の判断となりますが、早期に気づき相談・診断を受け、適切な支援を受けることで、二次障害などを予防しやすくなります。

発達障害は、その種類や症状により異なりますが、乳幼児期頃に症状が出始めることが多いとされています。3~4歳頃になると言葉やコミュニケーション面などで特徴的な行動や発達の遅れが目立ち始め、地域の3歳児検診で指摘されたり、園から相談機関を紹介されるケースもあります。また、表情の乏しさや視線の合いにくさ、集団の遊びに馴染めない、言葉に遅れが見えるなどといった症状から、何らかの違和感に気づくこともあります。

また、学習障害(LD)の場合は、読み書きや算数などの学習が始まる、就学前後の年齢になってから気づく場合が多いとされています。しかし、乳幼児期は成長に従い症状が大きく変わりやすいこともあり、一度出た診断が見直されたり変わることもあります。また、わかりにくい症状の子供の場合は、診断が遅くなったりしがちです。

周りが障害に気づかず、見逃されている場合も多く、大人になってから初めて判断が下る場合もあります。

どんなときに自閉症の検査を受けた方がいい?

自閉症の子どもには以下のような症状や行動が見られます。当てはまる項目が多い場合はかかりつけの小児科などに相談することをおすすめします。

  • じっと落ち着いていることができず、チャイルドシートなどを極端に嫌がる
  • 人見知りをしないものの、抱っこされると身をのけぞって嫌がる
  • 人と目が合わない
  • 靴下やズボンなど特定の衣類を嫌がって脱いでしまう
  • 言葉をおおむ返しにすることがある
  • 特定の事柄のみに異常な興味を示し、その他の事には無関心である
  • 言葉の発達が遅く、二語以上の文章がなかなか出てこない
  • こだわりが強く、叶わないとパニックになって泣き叫ぶ
  • オムツが外れない
  • 同年代の友達と遊ぶことができない

自閉症の診断、病院ではどんなことをする?

発達障害の症状は、先天的な脳機能障害が原因となり生じるとされています。しかし未だその詳細なメカニズムや、脳機能障害が引き起こされる理由は解明されておらず、遺伝的要因と環境要因が相互に影響して脳機能障害が起きると考えられています。また、発達障害の症状はさまざまなので、原因も多様であると考えられ、全ての人に同一の原因があるとは限りません。

また、現在の医学では生理学的な検査方法で診断することができないので、症状の有無について、今のところ数値化された基準がありません。そのため、医療機関で診断を受ける際には、現れる症状について医師が問診や行動観察を行い、そこで得た情報をもとに、心理検査や発達検査などを行います。そして最終的には、『DSM-5』や『ICD-10』などの診断基準を満たしているかどうかや、日常生活・社会生活の適応力などを総合的にみて診断します。

診断に際しては、症状が一定期間以上持続することが条件となっているため、何度か検査や経過を見て診断されることもあります。

『DSM-5』『ICD-10』とは

発達障害の診断には、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)やWHOの診断基準である『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)といった国際的な診断基準が使われます。

『DSM-5』と『ICD-10』では診断名や診断基準が異なる疾患が多くあり、例えば、『ICD-10』ではアスペルガー症候群という診断名がついても、『DSM-5』では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害という診断名に当てはまります。そのため、医療機関の適用する診断基準によっては、診断名が変わってくることもあります。また、最初の診断名から成長につれて診断名が変わる場合もあります。

自閉症の診断:問診、行動観察

本人の症状や困りごとについて尋ね、行動観察を行ったり、生育歴についての問診を行います。子供の場合は保護者に聞き取ることが多いです。

行動観察
子供を遊ばせて、医師がそれを注意深く観察します。その際に保護者へのインタビューを行います。
生育歴
生後〜現在までの社会性や対人コミュニケーション、言葉の発達、幼稚園・保育園での様子や1歳半健診・3歳児健診での様子などをヒアリングした上で、知的障害の疑いや特性などを見ます。

自閉症の診断:発達検査

発達検査とは、子供の心身の発達の度合いを調べる検査です。本人の発達の特性や何が困難なのかを客観的に見るために、実施されます。さまざまな側面から子供の発達度合いを評価し数値化することによって、治療が必要な部分を見出すことができます。

発達検査にはさまざまな種類があるため、検査ごとに検査結果の表現方法や評価の仕方が異なります。現在では「新版K式発達検査」や「遠城寺式乳幼児分析的発達診断検査」などが使用されることが多いです。

自閉症の診断:その他の検査

発達障害には知的障害、てんかん、感覚過敏、鈍麻などのさまざまな合併症を伴う場合があります。合併する障害があるか査定を行ったうえで検査する場合が多いです。

また、ほかの障害や疾患によるものかどうかを鑑別するための検査が行われる場合もあります。この場合、知能検査、脳波検査などの検査方法が実施されることが多いです。

おわりに:検査してもらうのは「気になることがあったとき」

発達障害は見過ごしたり、適切な支援を受けないままでいると、症状や特徴的な行動によって誤解を招いたり、うまく人間関係を構築できずに本人が悩むこともあります。また、適切な治療やサポートを受けられない場合、思春期以降になって「二次障害」を引き起こしてしまうケースもあります。子育てをしている中で、お子さんの気になる行動や強い困り感があった時には、ぜひ身近な相談機関に相談してみましょう。

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