記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/5/14 記事改定日: 2018/7/24
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記事監修医師
前田 裕斗 先生
不妊治療にはさまざまな方法があり、排卵を促す、採卵を行うための方法の1つとしてhCG注射があります。hCG注射には、どのような効果があるのでしょうか。hCG注射の効果と副作用を紹介していくので、不妊治療方法の選択のために役立ててください。
hCGとは、妊娠が成立すると分泌されるようになる糖タンパク質のことで、絨毛性性腺刺激ホルモンとも呼ばれています。
hCGは、卵胞ホルモンや黄体ホルモンの分泌を促す作用があるため、不妊治療の際などで以下のことを目的に使われることがあります。
排卵の誘発にはいくつかの方法がありますが、卵胞は育つけれどうまく排卵しないという場合には、排卵を誘発する作用のあるhCG注射が使用されることがあります。ただし、卵胞の発育そのものが悪い場合には、卵胞を育てる内服薬や注射と併せて使用することもあります。
また、hCG注射には育った排卵を刺激する作用があるため、注射をしてから24~36時間後くらいを目安に排卵が起きます。
hCGは排卵を促すだけでなく卵子の最終的な成熟を促す効果があるため、採卵前の仕上げとして投与されます。具体的な注射時期については超音波所見などから判断されます。
hCG注射は、排卵を促したり卵子を成熟させる作用があり、不妊治療に利用されていますが、少なからず副作用がみられることがあります。
経口の排卵誘発剤や注射をすることにより、卵胞が複数育ちすぎてしまった時にhCG注射を使用することで、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)という副作用が起こる場合があります。
この副作用は、排卵誘発剤の使用時の強い刺激により、卵巣が大きく腫れます。また、腹部の膨満感や呼吸困難などの症状見られ、重症化すると卵巣内の腫れや腹水が起こります。さまざまな合併症を起こす可能性もあります。OHSSはPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の人が起こりやすいとされています。通常は、超音波検査で卵巣の状態を確認してから注射を行います。もしリスクがあると判断された場合はhCGの注射を中止します。
排卵誘発剤により、卵胞が複数育っている状態でhCG注射を使うと、一度に複数の排卵が起こることも多く、双子や三つ子などの多胎妊娠の割合が通常よりも高くなります。多胎妊娠は、早産や妊娠高血圧症候群等のリスクがあるとされています。
以上に挙げたような、ホルモン剤や各種薬剤の使用状況によっては、血液検査を行う場合があります。また、治療を繰り返すことにより、身体へ何らかの影響が生じる可能性もあります。
男性不妊の原因には様々なものがあります。特に、精巣の働きを司るホルモン分泌を調整するための脳の部位に異常が生じ、それが原因となって不妊を引き起こすものを低ゴナドトロピン性性腺機能低下症といいます。これは、男性ホルモンなどの分泌が正常に行われないことで、精子の産生量が低下した状態になります。
このため、治療のためにはFSHなどのホルモン剤を定期的に注射する必要があります。多くは通院を必要とせずに、自宅での自己注射を行いますが、劇的に無精子症や乏精子症が改善することも珍しくありません。
hCG注射は、効果が高い反面、副作用が出やすいというデメリットも併せ持ちます。hCG注射を受ける前にはまず、主治医に相談してみて治療内容を正しく理解することが大切です。また、夫婦でもよく話し合い、お互いの気持ちを確認してから慎重に治療を進めていくようにしましょう。