記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2018/7/29
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
あらゆる病気と同じように、目の病気も早期発見・早期治療が重要になります。中でも緑内障は、一度病気が進行してしまうと自然に治ることがありません。物がぼやける、目がかすむといった異常を感じたら、まずは眼科を受診することが大切になりますが、そもそも緑内障はどんな治療をするのでしょうか?緑内障の治療法について解説します。
緑内障の治療に使用する点眼薬は、主に「房水の生産を抑える治療薬」「房水の流出を促進させる治療薬」「房水の生産を抑え、排出を促進する2つの効果がある治療薬」の3つの種類に分けられます。
まずは1種類の点眼薬から治療を開始して、その効果を観察しながら、別の点眼薬と組み合わせたり、薬の変更を行っていきます。
交感神経を刺激することで、房水(※)の生産を抑える効果があります。
自律神経のβ受容体と結びつくことで、交感神経の働きを抑制し、房水の生産を抑える効果があります。
※「房水」とは目の中を循環する液体のことで、房水の循環によって、眼内がほぼ一定の圧力になり、眼球の形状が保たれます。そのため、房水の生産のバランスが崩れて眼圧が上昇すると、視神経が障害されやすくなり、緑内障になるリスクが高くなってしまいます。
副交感神経に働きかけることで、房水の排出を促す効果があります。
プロスタグランジンには房水の排泄を促進させる作用があります。
α遮断薬は、毛様体筋を収縮させることで、房水の排出を促す効果があり、β遮断薬は毛様体から分泌される房水の生産を抑える効果があります。
点眼薬の治療で効果が見られない時は、内服薬による治療を併用します。緑内障の治療に使用する内服薬には「炭酸脱水素酵素阻害薬」があり、房水の生産を抑制する効果があります。
点眼薬よりも内服薬の方が効果が高いとされていますが、内服薬は副作用が起こる可能性があるため、量や服用期間には制限があります。また、一定期間服用しても効果が見られない場合には、手術による治療が行われます。
緑内障の点眼薬は、何度もさしたからといって痛みが解消するというものではありません。「2滴3滴とたくさんさせばもっと効くのでは?」と、何度もさす人がいますが、目の中には1滴分しか吸収されませんので、それ以外は周囲に流れ出たり、鼻を通じて全身に回ってしまいます。つまり2滴目3滴目は副作用を起こす可能性もあり、危険なのです。
主な副作用に、発疹、手足のしびれ、発熱、吐き気、食欲不振、頻尿、尿管結石などがあります。
レーザーを使用した手術は、まず点眼麻酔を行い、手術時間は10分程度で終了します。そのため手術当日に帰宅できます。
この手術は、原発閉塞隅角緑内障に行う手術です。原発閉塞隅角緑内障とは、虹彩と水晶体がくっつくことで房水の通り道を塞いでいる状態なので、レーザー光線で虹彩に1mm程度の小さな穴を開けることで、房水が通る新たなバイパスを作ります。
しかし効果が期待できるのは、発作から3日以内がリミットで、それ以上経過すると虹彩と水晶体が癒着を起こし、手術の効果が得られなくなってしまいます。また、原発閉塞隅角緑内障は、片目だけに発症することが多いのですが、もう片方の目にも発症する恐れがあるため、予防的な処置として両目に処置を行います。
なおこの手術には、虹彩炎や角膜混濁などの合併症が生じることがあり、角膜と虹彩の距離が近すぎると手術ができないことがあります。
この手術は、原発開放隅角緑内障に行う手術です。房水の排出口であるシュレム管の前には、フィルターの役割を果たす「線維柱帯」という網状の組織があります。この病気は、線維柱帯が詰まることが原因となり発症しているため、線維柱帯にレーザーを照射して、房水の通りを改善します。手術時間は5~10分程度で終了し、副作用もほとんどありません。
ただし、手術後1~2年程度で効果が薄れる場合がありますので、その場合は再手術が必要になります。
緑内障で最も大切なことは、早期発見・早期治療、そして定期的に眼科を受診して治療を継続していくことです。治療を開始して自覚症状が改善されると、治療に対する意識が薄れてくることがありますが、自己判断で点眼を中止したり、点眼回数や点眼量を変えてしまうと病気が悪化してしまう恐れがあります。医師の指示に従って定期的な経過観察を続けていきましょう。