骨粗しょう症の薬の種類と使用上の注意点とは!?

2018/5/14 記事改定日: 2020/5/28
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

加齢とともにリスクが高くなる骨粗しょう症ですが、実際に病院で治療する場合にはどのような薬を処方されるのでしょうか?また、副作用などはあるのでしょうか?
この記事では、骨粗しょう症の治療薬の種類と使用上の注意点について解説していきます。

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骨粗しょう症の治療はどのように進めていくの?

骨粗しょう症の多くは加齢などが原因で引き起こされますので、残念ながら骨粗しょう症を完治させる治療法はありません。そのため、骨粗しょう症の治療では「病気の進行を抑えて骨の更なる脆弱化を防ぐ」ことが目的になります。

骨粗しょう症の治療は、骨が溶け出すのを防ぐビスフォスフォネート製剤、骨を丈夫にするために必要なカルシウムやビタミンDなどの薬物治療が主体となり、必要に応じて骨の代謝に関わる副甲状腺ホルモンの投与などが行われることもあります。

ただし、骨粗しょう症は薬物療法だけでは進行を防ぐことができないケースも少なくありません。丈夫な骨を作るには、これらの薬物療法以外にも、カルシウムやマグネシウム、タンパク質、ビタミンなどの栄養素をバランスよく摂取する食事療法、骨に適度な刺激を与えるための運動療法などを並行して進めていく必要があります。

骨粗しょう症の治療薬にはどんな種類があるの?

骨粗しょう症の治療薬には、骨が壊れることを防ぐ薬と、骨を作る薬、必要な栄養を補給する薬があります。

骨が壊れるのを防ぐ薬(骨吸収抑制剤)

ビスホスホネート製剤
骨を壊す細胞の働きを抑制する効果
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:サーム)
骨のカルシウムが体内に流出するのを防ぐ効果
カルシトニン薬
痛みを緩和し、骨のカルシウムが体内に流出するのを防ぐ効果
デスノマブ(抗ランクル抗体薬)
骨の成分を溶かす物質の働きを抑制する効果

骨をつくる薬(骨形成促進剤)

副甲状腺ホルモン薬
骨の新陳代謝を促進させ、新たな骨形成を助ける効果

栄養を補給する薬

カルシウム薬
カルシウムの摂取量を増やし、骨量が減少するのを防ぐ効果
活性型ビタミンD3薬
腸内のカルシウム吸収率を高める効果
ビタミンK2薬
骨形成を促進する効果

注射で投薬する骨粗しょう症の治療薬は?

注射を使って投与する骨粗しょう症の治療薬として、以下のものが挙げられます。

デノスマブ

半年に1度ほどの頻度で皮下注射する薬で、骨密度を上げる効果が高いため、症状が重い人に使用されます。

ビスホスホネート製剤

骨吸収を抑制して、骨密度を上げる効果があります。経口剤、注射剤タイプがあり、1日1回~4週間に1回など摂取する回数は場合により異なります。

カルシトニン製剤

鎮痛効果の高い、骨吸収を抑える働きのある注射薬です。背中や腰痛があるときなどに使用されます。

テリパラチド(副甲状腺ホルモン)

新しい骨を形成する細胞を活性化させることで骨を強くする効果があります。特に、骨密度が著しく低い場合や骨折する可能性が人に用いられます。皮下注射剤は1日1回患者さんが自分自身で注射するタイプと、週1回医師に行ってもらうタイプの2つがあります。

骨粗しょう症の治療薬に副作用はある?

骨粗しょう症の薬には、それぞれ副作用があります。項目ごとで以下にまとめました。

ビスホスホネート製剤

ビスフォスフォネート製剤は治療効果が非常に高い薬ですが、服用を続けるとまれに顎の骨が壊死する「顎骨壊死」を発症することがあります。
顎骨壊死を発症すると治療は難しく、大掛かりな手術が必要になるため、顎の違和感や舌のしびれなどを自覚した場合は速やかに医師に相談するようにしましょう。

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:サーム)

副作用として血栓症のリスクがあります。

デノスマブ(抗ランクル抗体薬)

顎骨壊死が起こることがあるため、歯科治療の際に注意が必要になります。歯科治療を受ける際には、必ず担当医に服用していることを伝えましょう。また、血液中のカルシウム濃度が低下することもあります。

テリパラチド(フォルテオ)

この薬は24カ月間までしか使えません。24カ月を超えて服用すると、骨吸収スピードが骨形成を超えてしまい、骨量が減少する恐れがあります。

カルシトニン剤

歯科治療の過程などで、あごの骨に炎症が発生すると顎骨壊死・顎骨骨髄炎になる可能性があります。その他の副作用として、顔面硬直などがあります。

カルシウム剤

大きな副作用はないといわれていますが、カルシウムだけではあまり効果が得られないため、他の薬と併用すること多いです。

ビタミンK2

ビタミンK2は「ワルファリン」との併用が出来ません。ワルファリンには血液の凝固を防ぐ効果があり、特定の不整脈を患っている人に使用されます。しかしビタミンK2はワルファリンの効果を下げてしまうため、併用はしないように注意が必要です。

ビタミンD3

副作用として高カリウム血症が起こる可能性があります。ビタミンD3はカルシウムと併用する場合が多いため、注意が必要です。

骨粗しょう症の薬を飲むときの注意点

骨粗しょう症の薬を飲む上で注意すべきことは、顎骨壊死などの重篤な副作用の発現です。
薬の服用中に歯科治療を受けるととくに発症頻度が高くなることがわかっていますので、服用中は口腔内の健康に注意し、日頃から丁寧なブラッシングなどを行うのはもちろんのこと、定期的に歯科検診を受けて歯周病を予防しましょう。

また、顎の違和感や痛み、舌のしびれ、歯の痛みなどを自覚した際にはなるべく早めに病院を受診するようにしましょう。

おわりに:骨粗しょう症の薬の副作用と使用上の注意はきちんと理解しておこう!

骨粗しょう症の治療にはさまざま種類の薬が使われるため、その飲み合わせや副作用にも注意する必要があります。
なかには顎骨壊死などの重大な副作用などもあるため、十分に注意して服用するようにしましょう。また、日ごろからカルシウムの吸収を促す食品の摂取をすることも骨粗しょう症の予防につながります。

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