ADHDの診断を受けるメリット・デメリットは?診断の流れは?

2018/5/22

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「自分はもしかしたらADHDかもしれない…」「うちの子供はADHDなのかも…」など、大人になってからADHDの症状が現れた場合や、お子さんにADHDの症状らしきものがある場合、医療機関の受診を考えるでしょう。
この記事では、医療機関を受診するときの不安をできるだけ少なくするために、ADHDの診断方法や診断を受けるメリット・デメリットについて解説します。

ADHDの診断を受けるメリット・デメリットは?

メリット① 問題の原因がわかり、進むべき方向性が決められる

失敗する原因が脳の異常により起こっているのだと知ることで、対策を立てたり、周囲の人に自分の状況を説明することができます。

大人の場合

会社に、ADHDであることを話すことで、自分をサポートして貰える体制を整えてくれるケースがあります。また、苦手な分野を割り切ることで、自分の得意分野の方に力を注ぐことができるようになります。

子供の場合

幼稚園のかわりに、ADHDの子供たちをサポートしてくれる「療育」に通うという選択肢もあります。ADHDならではの対策や学習、訓練などを受けることができます。

メリット② 薬物治療やカウンセリング治療が受けられる

ADHDに有効な薬として、ストラテラ®とコンサータ®という薬があり、7割ほどの人に効果があることがわかっています。また、症状に合わせてカウンセリングを受けることもできます。ただし、副作用にも注意する必要があります。

メリット③ 障害者手帳の獲得や障害者就労の利用

医師にADHDの診断書をもらい、役所に提出すると発行の審査があります。そして審査に通ると障害者手帳を獲得することができます。障害者手帳をもらうと、税金の優遇、美術館、バスや都営地下鉄、映画の割引などのメリットがあります(各自治体により異なります)。

デメリット① 病院を探すのが難しい・診断結果が出るのに時間がかかる

現状では、ADHDなどの発達障害を診断してくれる医療機関があまり多くはありません。また、診断にかかる時間として、初診を受けるまでに数カ月、検査まで数カ月、診断結果が出るまで半年ほどかかる場合があります。

デメリット② ADHDと診断されるとは限らない

大人になってから症状が現れ始めるケースでは、ADHD以外の病気の診断結果が下されることがあります。大人の場合、子供の頃の状況を本人があまり覚えていないため、ADHDと診断することが難しくなることがあります。

デメリット② 診断結果にショックを受ける可能性がある

医師からADHDと診断された後にショックを受けてします場合がありますが、、自分の特性を正しく理解することで、今後の対策が立てやすくなりますので、なるべく診断を受けることが推奨されます。

デメリットもいくつかあげましたが、基本的には真剣にADHDで悩んでいる人に対して診断を受けることのデメリットはあまりありません。少しでも悩んでいることや困りごとがある場合は、専門の医師に相談してみましょう。

ADHDは病院でどんなふうに診断されるの?:子供の場合

まず始めに問診を行い、医師が面接や診察室で子供の行動や様子を観察します。次に、保護者には、子供の精神的・心理的な経過、生育歴、既住歴、家族歴などを質問していき、必要に応じて子供の行動評価テストや心理発達検査を行います。
問診で確認される内容と検査で確認する内容は以下の通りです。

保護者との面接による行動観察

子供の普段の生活での行動を保護者に聞き、診断基準に加えます。

幼稚園・学校の先生による行動観察

家ではあまり目立たなくても、学校では症状が顕著に現れる場合があり、これを「状況依存的多動」といいます。学校の先生に子供の学校での様子を評価調査票に書いてもらうことで、診断に役立つことがあります。

面接時の子供の行動観察

診察室などでの子供の態度・行動などを医師が直接観察することで、判断の材料として加える場合があります。ただし、状況依存的多動の症状がある場合は、ADHDの傾向が認められないことがあります。

生育歴

生まれてから現在までの社会性やコミュニケーション、言語の発達、既住歴、学校での様子、1歳半健診・3歳児健診での様子などを医師が質問します。母子手帳や成長記録などがある場合は、診断の手がかりとなるので持っていきましょう。

発達検査

発達検査とは、子供の心身の発達レベルを検査するものです。検査方法としては、知能検査の他にも、持続作業課題(CPT)、活動量の測定(アクティグラフ)、事象関連電位(ERP)などがあります。

合併する症状の診断や鑑別のための検査

発達障害に伴う可能性のある合併症の有無を検査します(てんかん、感覚過敏、鈍麻など)

知能検査

精神年齢、IQ(知能指数)、知能偏差値などで測定します。

脳波検査

脳の器質的な疾患の有無や、異常の有無をCTやMRIを使って診断します。

鑑別のための検査

発達障害の症状に類似している病気を見分けるために、遺伝子検査、血液検査、その他の検査で調べます。必要に応じて精神病に関する検査を行うこともあります。

ADHDは病気でどんなふうに診断されるの?:大人の場合

大人になってから症状が現れた場合は、精神神経科や大人も診ている小児科(小児神経科、小児精神科)で検査をしてもらえます。ホームページなどで診療可能か確認してから受信するようにしましょう。
受診するときは、以下のものを持っていくことをおすすめします。

  • 日ごろの行動や様子を記録したもの(メモや書面)
  • 幼少期の資料(小学校の通知表など)
  • 大人のADHD症状チェックリスト
  • 幼少時の様子に対する家族の意見など

検査方法

大人のADHDのでは、下記のように検査が進められます。

  1. 現在の状況の確認
    悩み事、普段の生活の様子、苦手な事、今まで医療機関の受診歴、などをチェックリストで診断します。
  2. これまでの経緯の確認
    幼少時の様子、家族の意見、過去の病歴などを問診します。
  3. 身体検査、心理検査、生理学的な検査
    必要と判断された場合、脳波検査、頭部MRIやCTによる画像検査、血液検査などを実施します。
  4. ひとまずの診断結果が出される
    うつ病などの併存疾患がないかなどを確認した後に、ADHDの有無の診断結果が出されます。
  5. 診断後
    1回目の診断でADHDではないと診断が下されても、後にその診断が変わる可能性があります。

おわりに:不安があるなら、まずは病院でADHDの検査を受けましょう

大人・子供を問わず、ADHDの診断を受けるメリットは沢山あります。検査方法の種類は豊富で、時間もかかるかもしれませんが診断を受けることで、その後の対策や方向性などを決めることができます。悩み事や心配事がある場合は、医療機関に相談に行きましょう。

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