腰痛の手術について ― 椎間板ヘルニアの手術法とリスクについて

2018/6/6

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

誰にでも起こる可能性があり、身近な疾患のひとつである腰痛ですが、その原因や程度によっては治療に外科手術が必要になるケースがあることをご存知でしょうか?
今回は腰痛、特に椎間板ヘルニアの場合の治療法について、外科手術の方法や、手術を受ける前に知っておくべきリスクなどについて紹介していきます。

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腰痛の手術法、椎間板ヘルニアの場合は?

まずは、代表的な椎間板ヘルニアの手術方法を4つ、それぞれの手術法のメリット・デメリットと一緒にご紹介していきます。医師と手術方法を決めるうえでの参考にしてください。

その1:LOVE法

全身麻酔で行われる、最も一般的な椎間板ヘルニアの手術方法です。

手順としては、まず背中の皮膚を5cm程度切開して、突出して周辺の神経などを圧迫している脊椎の一部(椎間板ヘルニア)を切除します。

《この手術法のメリット》

  • 目視で患部を切除するため、確実にヘルニアを除去できる
  • 特別な技巧は必要でないため、多くの病院で受けることができる

《この手術法のデメリット》

  • 手術による傷が大きくなりやすい
  • 手術で取り除く範囲が広いため、術後に骨・筋肉の機能低下が見られる可能性がある
  • 回復に比較的時間がかかるため、入院期間が2~4週間と長くなりがち

その2:MED(内視鏡下ヘルニア摘出術)

全身麻酔をした患者の腰骨に直径16mm(1.6cm)程度の内視鏡を差し込み、内視鏡を使ってそのまま突出した椎間板ヘルニアを切除する手術方法です。

《この手術法のメリット》

  • 傷口が小さいため、LOVE法に比べ身体への負担が少ない
  • 手術で取り除く範囲が狭いため回復も早く、入院期間が1週間程度と短い

《この手術法のデメリット》

  • 相当の技術のある医師でないと行えないため、特定の病院でしか受けられない
  • 内視鏡のため目視よりも視野が狭く、まれに椎間板の取りこぼしや周辺の損傷が見られる

その3:PLDD法(経皮的レーザー椎間板減圧方)

局所麻酔の状態で背中に針を刺し込み、レーザーを照射して椎間板ヘルニアを蒸発させ、除去する手術法です。

比較的初期で軽度、小さい椎間板ヘルニアの除去治療のために使用されます。

《この手術法のメリット》

  • 針を刺すだけなので、傷口がほとんど目立たないほど小さい
  • 身体への負担が少ないため、入院期間が半日~3日程度とかなり短く済む

《この手術法のデメリット》

  • 手術による効果には個人差が大きい
  • 保険適用外の治療法のため、手術費用が35~40万円程度(病院によって異なる)と高額になる
  • 初期または軽度の椎間板ヘルニアにしか効果が期待できない

その4:PN法(経皮的髄核摘出法)

局所麻酔をして背中に直径4mm程度の細い管を差し込み、その管のなかに特殊な器具を入れてX線やMRIで透視しながら、直接椎間板ヘルニアを切除する手術です。

《この手術法のメリット》

  • 傷が小さくて出血も少なく、身体への負担が極めて少ない
  • 手術時間が30分~1時間程度で、日帰り手術できる場合もある

《この手術法のデメリット》

  • 初期または軽度の椎間板ヘルニアにしか効果が期待できない

椎間板ヘルニア手術にリスクはないの?

椎間板ヘルニアの手術のリスクは非常に低いといわれていますが、手術を受けるうえで「死亡の可能性」「下半身不随になる可能性」「症状の悪化・再発の可能性」があるということは理解しておいた方が良いでしょう。

死亡の可能性

死亡リスクはかなり低くほとんどないといわれていますが、LOVE法やMED法など全身麻酔をして行う手術を受ける場合には、麻酔から目覚めない、術中の医療事故などの理由によって死亡するリスクを完全に否定することはできません。

下半身不随になる可能性

椎間板ヘルニアの手術では、身体を動かす重要な神経が集まっているエリアを手術することになります。
万が一手術のときに誤って神経などを傷つけてしまうと、下半身障害や排尿・排便障害、下半身不随になってしまうリスクがあります。

症状の悪化・再発の可能性

椎間板ヘルニアは、手術したからといって症状が完璧に治るとは限りません。手術によってかえって痛みが強くなったり、術後しばらくしてから再発するという可能性は考えられるので注意しましょう。

なお、手術にはリスクがあるとはいいましたが、「死亡」や「下半身不随」のリスクは、きちんと技術のある医師の手術であれば、遭遇する可能性はほとんどありません。

おわりに:手術方法とリスクを知ったうえで、医師と治療法を決定しよう

外科手術は椎間板ヘルニアの代表的な治療法ですが、外科手術を行う以上、やはり何らかのリスクは伴います。通常、手術方法やそれぞれのメリット・リスクなどは医師から十分に説明をされますが、患者本人もきちんと理解・納得したうえで治療を選んだ方が安心です。この記事を参考に手術方法とリスクを知ったうえで、医師とともに椎間板ヘルニアの治療方法を選択してください。

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