記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
発症すると体のあちこちに皮疹が出来る乾癬ですが、治療方法にはどのようなものがあるのでしょうか?またどんな薬が使用されるのでしょうか?乾癬の治療法や薬について解説します。
乾癬は軽快と悪化を慢性的に繰り返す病気なので、患者さんの症状に合わせた治療が行われます。大きく分けて局所療法と全身療法に分けられます。治療の基本は、局所療法の中心を占める外用療法が第一選択です。全身療法として必要に応じて内服薬や紫外線療法などを行います。
また2010年からは、これらの治療(外用薬、内服薬、紫外線療法)で効果が見られない場合や、薬の副作用が問題になる場合などに「生物学的製剤による注射療法」が行えるようになりました。
生物学的製剤による注射療法では、アダリムマブ(皮下注射)、インフリキシマブ(点滴注射)、ウステキヌマブ(皮下注射)などが用いられます。また関節炎の症状が強い場合は、痛み止めや注射薬、内服薬などが使用されることがあります。
炎症を抑える効果がある塗り薬で、乾癬治療で使用されることが多い薬です。強さが5段階に分かれていて、症状のレベルに応じて使い分けられます。効果は比較的短期間で現れることが多いですが、長期間使用していると副作用が起こることがあります(皮膚が薄くなる・内出血によるアザなど)。
細胞が過度に増殖することを防ぎ、免疫反応を調節する効果があります。皮疹がおさまってから、再発するまでの期間が長いことが特徴ですが、効果が出るまでに時間がかかり、ヒリヒリ感などの刺激が生じることがあります。
自己判断で使用回数を増やしたり減らしたりすると、症状が悪化する可能性があるので、医師の指定した量・回数を守って使用しましょう。
乾癬の治療では、複数の治療法を組み合わせることがあります。そうすることで、治療の効果が上がり、副作用が起こる確率を下げられるケースがあります。
ステロイド外用薬とビタミンD3外用薬を組み合わせて使用する治療法を「コンビネーション療法」と呼びます。朝にステロイド外用薬、夕方にビタミンD3外用薬を塗る方法や、平日はビタミンD3外用薬、土日にステロイド外用薬を塗る方法、などがあります。
また、併用療法の一つである「シークエンシャル療法」では最初はステロイド外用薬とビタミンD3外用薬を併用することで短期間のうちに症状を良くし、次第にステロイド外用薬の外用回数を減らして、最終的にはビタミンD3外用薬のみで良い状態を保つことを目指す方法がとられます。
光線療法とは、紫外線の特徴である「免疫力を弱める効果」を使用して行う治療方法で、紫外線ランプを皮疹に直接照射して治療を行います。
紫外線にはいくつか種類がありますが、乾癬治療では主にUVA(長波長紫外線)・UVB(中波長紫外線)が用いられます。UVA(長波長紫外線)・UVB(中波長紫外線)は、皮膚への悪影響が少なく、細胞増殖や炎症抑制効果があります。光線治療の種類には以下のようなものがあります。
病変部が広範囲に渡り、塗り薬を塗り切れない場合は全身照射や、他の治療法が効かない部分にだけ照射することもあります。光線療法を行う頻度は、治療方法の種類や照射する範囲などにより異なりますが、基本的には以下のようになっています。
表皮細胞の増殖抑制、新陳代謝の調節、炎症抑制などの効果があります。外用薬や光線療法と組み合わせて使用されることもあります。ただし、胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため、妊娠している人は使用できません。また服用中止後も、女性は2年間、男性は6か月間の間、避妊する必要があるので注意しましょう。
免疫抑制効果があります。服用を開始して皮疹が改善してきたら、徐々に薬の量や飲む回数を減らしていき、休薬が可能な状態を目指します。
副作用として、腎障害や血圧上昇などが起こることがあるため、服薬中の血圧測定や月1回の血液検査を行い腎機能を検査しましょう。
乾癬による炎症を抑制する効果があります。飲み始めに起こることがある、吐き気・むかつき・頭痛などを防ぐため、少量から服用を開始し、徐々に量を増やしていく方法がとられます。また、妊娠している人は使用できず、服用する期間中は避妊をする必要があります。
乾癬の治療をする際は、複数の治療法を組み合わせる方法「コンビネーション療法」を行うことで、治療効果が上がったり副作用が起こる確率を下げられたりする場合があります。
生物学的製剤とは、生物が合成する物質(タンパク質)を応用して作られた治療薬です。
乾癬に効果がある薬ですが、使用できる症状が限られているため、全ての人が使用可能なわけではありません。日本皮膚科学会で定められた医療機関のみで治療が受けられるようになっています。
乾癬の治療法には、外用薬・内服薬・光線療法・注射療法などがあり、症状に合わせた治療が行われます。必要に応じて複数の治療法を組み合わせることもあります。薬の種類も、症状の程度に合わせて変えたり、使用頻度を減らしたりなどその都度使用法が異なります。
そのため、処方された薬は医師の指示を守って正しく使用しましょう。