記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/25
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
発達障害の一種「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」は、脳に何らかの原因があって発症するものなのでしょうか?また、遺伝する可能性はあるのでしょうか?妊娠中の検査で判明するのかについても、併せて解説していきます。
ADHDは、「多動」「不注意」「衝動性」の3つの特徴を示す発達障害のひとつです。ADHDの原因は脳にあるとは言われていますが、はっきりとした仕組みは解明されていません。現在は、脳の前頭前野という部分の機能が関係しているのではないかという説が有力です。
脳の前頭前野は、物事を順序立てて考えたり、感情や行動をコントロールしたりする働きがあります。脳内の神経細胞は、神経伝達物質を受け渡しすることで情報を伝えています。ADHDの人は、神経伝達物質のひとつであるドーパミンがうまく受け渡しできず、その結果、前頭葉の働きが弱まっていると考えられるのです。
ADHDは脳の機能障害が原因です。そして、脳の機能障害には複数の遺伝子が関連するという報告もあります。しかし、同じ遺伝子をもつ一卵性の双子であっても、両方の子供がADHDになる確率は100%ではありません。
ADHDには家族性はありますが、必ず遺伝するとは言えません。家族性があるというのは、「家族間で必ずしも同じ病気になるわけではないけれど、同じ病気になる可能性はある」ということです。たとえば糖尿病や近視には家族性があるといわれ、家族に糖尿病や近視の人がいると、子供も糖尿病や近視になる確率が高くなります。
ADHDの発症には、遺伝だけが関係するのではなく、さまざまな環境要因が複雑に影響しているのではないかと考えられています。
ADHDになるかどうかは、育て方が直接の原因ではありません。しかし、ADHDの症状は本人の努力ではどうにもならないことがあります。特に小さい頃から失敗経験が重なり続けると、自分に対して悲観的になり自己肯定感が低くなる可能性があります。また、学習面にも支障が出ることがあります。ADHDの特徴を理解し、周囲が適切な対応を行うことで、本人の自信を高め、人としての成長をうながしていくことが大切です。
以下に、育て方に関してのいくつかのポイントを挙げておきます。
本人が興味があるものが目に入ったり、近くにあることがわかれば「やりたい」「触りたい」という衝動を抑えることのハードルは高くなります。たとえば、宿題をする部屋には、おもちゃやテレビは置かないといった環境づくりが大切です。
一度に多くのことをやろうとすると、集中力が続きません。まずは、簡単なことでも最後までできることを大切にしましょう。どうしても、複数をやらなければならないときは、課題を小分けにすると良いでしょう。「できた」という達成感を積み重ねることで、自信につながります。
言葉での指示は、すぐに忘れてしまいやすいものです。短文を使って手順を示したり、絵に書いておくなど視覚的にしたり、具体的にしたりすると良いでしょう。
好ましい行動は、本人が嬉しくなる方法で褒めましょう。大げさに褒めることが嬉しい子もいれば、カードやスタンプなどささやかなメッセージを喜ぶ子もいます。また、シールを貼って、積み重ねたものを後で振り返ることが達成感に繋がることもあるでしょう。
妊娠中に胎児の障害の有無を確認できる検査が実施されています。さまざまな検査はありますが、検査でわかる障害は一部のものに限られています。ADHDを出生前診断で確認することはできません。
ADHDは生まれつきの脳機能の障害と、さまざまな環境要因が相互に影響しあって生じると考えられています。しかし、詳しい仕組みははっきりはしておらず、診断も出生後すぐに行うことはできません。また、ADHDを根治させる治療法はないのが現状です。
ADHDの症状を改善していくためには周囲が本人のことを理解し、好ましい関わり方を行いながら、自己肯定感をしっかりと育んでいくことが大切です。