下痢が薬の副作用で起こることがあるって本当?

2018/5/30

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

病気の治療薬の副作用で下痢の症状が起こることはあるのでしょうか?また、副作用で下痢が起こったときには、どのような対処をすればいいのでしょうか?
ここでは、薬の副作用で起こる下痢について解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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下痢が薬の副作用で起こることがあるの?

治療薬として処方された薬の服用により、

  • 腸の粘膜に炎症が起こったり傷がつく
  • 腸管の動きが活発化する
  • 腸内細菌のバランスが崩れる

などの症状が起こると、下痢の症状が現れることがあります。薬剤性の下痢では、水分量が多い便や形のない便が頻繁に排出されます。

一般的には、下痢の持続時間が2週間以内の場合は急性、2~4週間の場合は持続性、4週間以上の場合は慢性と診断されることが多く、急性の下痢は90%以上が感染症によるものといわれています。それ以外の下痢は薬の副作用が原因のことが多く、慢性の下痢のほとんどが薬による副作用だとされています。

副作用で下痢を引き起こす薬は?

重度の薬剤性の下痢を起こすものとして、以下のような薬があげられます。

抗がん剤

  • イリノテカン
  • シタラビン
  • メトトレキサート
  • フルオロウラシル

抗生物質

  • ペニシリン系
  • セフェム系

消化器用薬

  • プロトンポンプ阻害薬
  • ミソプロストール

痛風発作予防薬

  • コルヒチン

免疫抑制薬

一般的には、投与を始めてから1~2週間以内に発症するとされていますが、抗がん剤では、投与中または直後から24時間以内に起こる早発性の下痢と、投与を始めてから数日~10日で起こる遅発性の下痢に分類されます。
また、複数の抗がん剤の飲み合わせにより、下痢が重症化する場合もあります。高齢者や持病のある人(腎機能・肝機能障害など)、免疫力が低下している人の場合は、薬剤による副作用が生じやすいので注意しましょう。

副作用による下痢かも・・・と思ったら

治療薬の服用期間中に、以下のような症状が続く場合は、薬剤による副作用の可能性があるので、すぐに担当医に相談するようにしましょう。また受診する際には、使用中の薬(種類・量・服用期間)や、症状(種類・程度・持続時間)などを医師に伝えてください。特に高齢者や乳幼児などは症状が重症化しやすいので、早急に受診をしましょう。
ただし、自己判断で薬を中止することは絶対にしないでください。

薬剤性の下痢の症状

  • 泥状や水のような便が出る
  • 急激な便意に襲われる、便意があっても排便がない
  • 激しい腹痛がある
  • トイレから動けないほど頻繁に下痢がある
  • 便中に粘液状のものが混じる
  • 血便が混じる

重度の下痢の症状

  • 口が渇く
  • 尿の量が減る
  • 頻脈
  • 血圧低下
  • 意識混濁

おわりに:薬の副作用による下痢は放置せずに担当医に相談を

治療薬の副作用で下痢の症状が現れた場合には、すぐに担当医に相談するようにしましょう。下痢が長引くと、脱水症状となり危険な状態になる恐れがあります。特に高齢者や乳幼児などは症状が重症化しやすいので、早急に受診するようにしましょう。
病院を受診するときには、服用している薬や症状について詳しく伝えることが大切です。受診時は、お薬手帳やメモ書きなどを持参することをおすすめします。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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