記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/6/8
記事監修医師
前田 裕斗 先生
女性が高齢出産をする場合、ダウン症児の出生率が上がるという話がありますが、男性側の原因でダウン症児が生まれることもあるのでしょうか?また、遺伝が原因の場合もあるのでしょうか?以降で詳しく解説します。
ダウン症の原因は、女性側だけではなく、男性側にあることもありえます。
ダウン症の原因は染色体にあることがわかっています。生物の形をつくり、生きていくための情報はDNAの中に詰め込まれています。このDNAは非常に長いためにタンパク質と結合して、ヒモが畳まれるようにギュッとまとまり、染色体をつくっています。
ヒトの細胞の中には、性別以外を決めるための染色体が22組のペアで44本と、性別を決めるための染色体が2本あり、合計46本の染色体があります。それぞれには番号がついていて、障害や病気との関係が判明しているものもあります。ダウン症で最も多いタイプは、21番目の染色体が1本多くなっている「標準型(21トリソミー)」と呼ばれるタイプです。ダウン症候群の約90〜95%が、このタイプであるといわれています。
染色体の異常が起こるタイミングは2点考えられます。ひとつは、父方の精子や、母方の卵子がつくられるときに、何らかのトラブルが起きていたことが考えられます。2点めとしては、受精卵となってから細胞分裂をしていく過程で、何らかのトラブルが起きたことが考えられます。染色体異常は、偶発的に起こるものがほとんどです。統計では、女性が高齢化するほどにダウン症の出生率が高まるというデータがありますが、女性側だけが原因とは限りません。
ダウン症で最も多い標準型(21トリソミー)での染色体異常は、偶然に起こるものであり遺伝が原因で起きているとはいえません。
しかし、ダウン症の中でも「転座型」というタイプは遺伝が関与しています。これは、21番の染色体2本のうち、1本が他の染色体にくっついてしまうことによって起こります。
転座型の半分のケースにおいて、両親のどちらかに素因があることがわかっています。転座型の人はダウン症全体では数%程度といわれているため、遺伝による場合はその半数となり、極めて低い確率になります。
ダウン症で最も多い標準型タイプは、偶発的に起きた染色体異常が原因です。そのため、予防をするための方法はありません。また、なぜ染色体の異常が起こるのかどうかという原因もわかってはいないのです。女性を対象とした調査では、高齢になるほどにダウン症になる確率は高まるという結果が得られていますが、生殖機能は人それぞれ異なり、年齢だけで判断されるものでもありません。健康で規則正しい生活を心がけ、いつか迎える妊娠や出産のために体調を整えていきましょう。
ダウン症にはいくつかのタイプがありますが、最も多いタイプは標準型(21トリソミー)と呼ばれるタイプです。標準型で生じる染色体異常は、卵子でも精子でも、受精卵になってからでも起こりうるものですから、明らかな予防方法はありません。神経質になりすぎず、いつか迎える妊娠や出産に備えて体調を整え、健康な毎日を送っていくことが大切でしょう。