脳卒中の治療法―虚血性脳卒中の場合

2017/3/23

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

脳卒中には、血流が滞ることで起きる「虚血性脳卒中」と、血管が破裂してことで起きる「出血性脳卒中」があります。虚血性脳卒中を発症した場合、症状の治療とともに、再発予防のための薬の投与が行われます。投薬治療は短期間で終わるものがほとんどですが、長期にわたって服用する必要がある場合もあります。

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血栓溶解

虚血性脳卒中は、アルテプラーゼ(血栓を溶解して血流を回復させる薬)を注射するのが一般的です。この薬を使用する治療法は、血栓溶解と呼ばれています。アルテプラーゼは、発症から4時間以内に投与するのが最も効果があります。

アルテプラーゼを使う場合、事前に虚血性脳卒中かどうかを診断するために脳のスキャン(CTスキャンもしくはMRI)を行うことが重要です。万が一脳卒中の原因が出血性のものだった場合、アルテプラーゼの血流促進効果のために出血を悪化させる可能性があるためです。

抗血小板薬

抗血小板薬(血液をさらさらにする薬)として、アスピリンが投与されるのが一般的です。アスピリンは鎮痛剤として知られていますが、抗血小板薬として使われることもあります。アスピリンのほかに、クロピドグレルやジピリダモールといった抗血小板薬を使うこともあります。

抗凝固薬

将来、血栓ができてしまうリスクを減らすために、抗凝固薬(血液が固まるのを防ぐ薬)を投与する場合もあります。抗凝固剤は、血栓の発生を防ぐために血液の化学組成を変化させることで血栓ができるのを予防します。

ワルファリン、リバーロキサバン、ダビガトランおよびアピキサバンは、長期にわたって投与できる抗凝固剤です。一方、短期間の投与に使われる抗凝固剤としてヘパリンがあります。

抗凝固剤は、以下の場合に投与されます。

・心房細動(心拍数が不規則になり、血栓を引き起こす可能性がある)の症状がある
・血栓の病歴がある
・深部静脈血栓症(DVT:静脈に血栓ができる病気)を患っている

抗高血圧薬

高血圧の人には、血圧を下げる薬が処方されることがあります。一般に使われる治療薬として、以下のようなものがあります。

・チアジド系利尿薬
・アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤
・カルシウム拮抗薬
・ベータ遮断薬
・アルファー遮断薬

スタチン

血中コレステロール値が高すぎる場合、スタチンを服用することが勧められます。スタチンは、コレステロールを生成する肝臓の酵素(化学物質)を遮断して、血液中のコレステロール値を下げます。また、コレステロール値がそれほど高くない場合であっても、スタチンを投与して脳卒中のリスクを下げる場合もあります。

頸動脈内膜切除術

虚血性脳卒中の中には、脳に血液を運ぶ頚動脈(首の動脈)の内壁が狭くなったために起きるものがあります。これは頚動脈狭窄(けいどうみゃくきょうさく)と呼ばれるもので、脂肪プラーク(血管内にできる脂肪のかたまり)が蓄積することで発症します。

頸動脈狭窄症がひどい場合、動脈のつまりを取り除く手術(頸動脈内膜切除術)を勧められることがあります。これは、首を切開して頸動脈を開き、脂肪沈着物を除去する手術法です。

おわりに

虚血性脳卒中の場合、血管を詰まらせている血栓を溶かしたり、血液の流れを回復させたりするための投薬治療が中心となりますが、場合によっては手術を行う場合もあります。これらの治療は、医師が画像診断をはじめとするさまざまな検査を経て、患者に最も効果のある方法が選ばれます。医師の説明をよく聞き、安心して治療に専念できるようにしましょう。

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