記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/11
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高血圧だと心不全になるリスクが高くなるというのは本当なのでしょうか?また、血圧を下げるためには何をすればいいのでしょうか?血圧と心不全の関係性と、高血圧の予防方法について解説していきます。
心不全とは、心臓のポンプ機能が低下して、全身に十分な血液が送れなくなってしまった状態です。
心不全の原因のひとつとして高血圧がありますが、高血圧が引き起こす心不全として、心臓の収縮機能が弱まり十分な血液を送り出せなくなってしまう「収縮機能不全」と、心臓が硬くなることでうまく拡張できなくなり心臓に戻ってきた血液を取り込めなくなる「拡張機能不全」があります。
収縮機能不全を起こすと、心臓に戻ってくる血液量に見合った血液量を送り出すことができなくなり、血液が心室に溜まるようになります。高血圧が続くと血管壁に強い圧力がかかり、心臓に血液を送る冠動脈の壁が厚くなり、動脈硬化を誘発します。また、肥満や糖尿病、高脂血症などは高血圧と合併することで、動脈硬化の進行を促進し、狭心症や心筋梗塞を引き起こします。
その結果、心筋の働きの低下して心臓が収縮できなくなってしまい、収縮機能不全が起こると考えられています。
高血圧の状態が続くことは、心臓にとても負荷がかかります。その負荷に耐えるために心筋細胞の肥大化や間質の線維成分の増加が進むと、心臓がうまく拡張できなくなってしまうのです。
すると、血液が戻ってくるスペースがなくなってしまうために血液が肺静脈から心臓へと戻ってこれず、肺に血液が留まってしまうようになります。この状態が長く続くと、拡張機能不全に陥るおそれがあります。
拡張機能不全による心不全は、収縮機能に異常が見られないため、発見が遅れることが多いといわれています。とくに高齢者の発症率が高いので、若年期から高血圧気味の状態が続いている人は注意しましょう。
心不全は、何らかの原因により心機能の低下が起こる症状なので、その発症の原因となる病気を治療することが必要となります。
特に、高血圧は心臓の筋肉の質を劣化させてしまうため、血圧のコントロールは重要になります。
狭心症や心筋梗塞、弁膜症などが原因となっていて必要と判断された場合は、風船療法(冠動脈に風船を入れて膨らませることで、動脈の流れを改善する)や冠動脈バイパス手術、人工弁置換術(弁を人工弁に取り替える)などが行われることがあります。ただし、心臓の機能が著しく低下している場合は、これらの治療を行っても効果があまりみられないことがあります。
高血圧になっても自覚症状が起こらないことが多いです。血圧を測る習慣がなければ、自分が高血圧ということを自覚していないことも少なくないでしょう。
高血圧を予防するには、毎日決まった時間に血圧を計測することを習慣づけましょう。そのうえで、下記のような対策を日常生活にうまくとり入れてください。
1日の飲酒目安量(女性は以下の量の半分)
ビール | 中瓶1本(500ml) |
ワイン | グラス1.5杯(180ml) |
焼酎 | 0.6合(108ml) |
なお、①~③の治療に取り組んでも血圧が高い状態が続くのであれば、早めに病院を受診しましょう。日常生活の見直しで高血圧の改善が難しいと判断された場合は、降圧剤の処方が検討されることがあります。
高血圧が続くと血管壁や心臓に負荷がかかり続けるため、収縮機能不全や拡張機能不全による心不全が起こりやすくなります。
とくに拡張機能不全による心不全は、収縮機能に異常が見られないため、発見が遅れやすいといわれているので注意しましょう。毎日定期的に血圧を測ることを習慣づけ、塩分を控えた食事、体重の減量、適度な運動などを取り入れながら、血圧をコントロールしていきましょう。