記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/8 記事改定日: 2018/11/12
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脳梗塞や脳出血の後に起こる可能性のある「脳血管性認知症」をご存知でしょうか?今回はこの脳血管性認知症について、症状の特徴やアルツハイマー型認知症との違い、介護にあたっての注意点などを中心にお伝えしていきます。
脳血管性認知症とは、脳梗塞やくも膜下出血、脳出血などいわゆる脳卒中になった後に起こる認知症です。脳血管の障害によって脳の細胞に栄養や酸素が送られなくなることで脳の細胞が破壊され認知症が起こります。
脳血管障害を起こした後に急激に認知症症状が出現し、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら症状が進行します。また、有病率は女性と比べて男性の頻度が高いといわれています。
脳血管性認知症は記憶障害が中核となることが特徴であり、血管障害から3か月以内に症状が見られる場合が多いです。
ただ、記憶障害は脳が障害された部位によって程度が異なり、物忘れをしたり、計算ができなくても今まで培ってきた専門的な知識は保持されることもあることから、「まだら認知症」と呼ばれることもあります。
また、一日を通しての変動も大きく、全く何もできないいわゆる抑うつ状態のこともあれば、意思がはっきりとしている日もあります。そして気持ちのコントロールができなくなるため突然泣き出す、怒りだすといった感情失禁という症状が見られることも特徴です。
他にも失語、失行、失認、実行機能障害などを来すため、日常生活や職業にも影響を及ぼします。
認知症には様々なタイプがありますが、患者数が多いのは脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症です。
脳血管型認知症は、脳梗塞や脳出血などが生じることで脳の細胞にダメージが加わって認知機能が低下することが原因で生じる認知症です。特に脳梗塞は、麻痺や言語障害などの目立った症状が現れることもありますが、微細な血管の梗塞では自覚症状がないことも多く、微小な脳梗塞を繰り返すことで知らず知らずのうちに認知機能が徐々に低下することも少なくありません。
一方、アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβなどのタンパク質が蓄積することで脳の細胞がダメージを受けたり、神経の働きを補う神経伝達物質が減少することで発症します。主に60歳以上の高齢者で発症することが多く、明確な治療法が確立していないため、発症すると症状の進行を抑える治療を行うことしかできません。
脳の細胞は一度死んでしまうと二度と治らないといわれています。
そのため、脳血管性の認知症を治すことは難しいでしょう。
そのため現状より悪化させない、つまり脳細胞にこれ以上ダメージを加えないように脳血管障害の再発を予防をしていくことが大切です。
また、意欲や自発性の低下、興奮といった症状に対しては脳循環代謝改善薬を使用することが有効な場合もあります。
脳血管型認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患が原因となります。脳の広範囲にダメージを与える脳血管疾患を発症した場合には、発症後から重度の認知症を発症することがあります。しかし、脳の微細な血管に梗塞を生じる場合には特に自覚症状がないこともあり、微小な脳梗塞を繰り返すことで徐々に認知機能が低下していくことも多々あります。
このように、脳血管性認知症の重症度や進行の程度は、原因となる脳血管疾患の発症の状況によって大きく異なるのです。一度ダメージを受けた脳の細胞が再生されることはなく、治療は脳血管疾患の再発を防ぐことや、脳血管の動脈硬化の進行を防いで脳への血流を維持することが目的となります。このため、高血圧や糖尿病、高脂血症など動脈硬化を引き起こす病気の治療を適切に行うことが治療の主体になるのです。
脳血管性認知症の場合、他の種類の認知症と異なり自分自身が認知症となってしまっていることを理解できている場合が多いため、そのことに配慮してケアをすることが必要になります。
「なぜこんなこともできないのか?」「さっきも同じことを言った」などという発言は脳血管性認知症の人を傷つけてしまいます。辛い状況を理解し、自尊心を傷つけないような声かけをすることが必要です。
また、患者さんの症状そのものが一日の中で波があることに加え、感情にも波があります。今やりたくないあるいはできないことを強要せず、できないことは手伝うなどして、無理をさせないような関わり方が良いでしょう。
脳血管障害は認知機能のみならず、身体機能や精神機能も低下するため、介護サービス等を利用して介護者の負担を減らすことで、心に余裕をもって関われるようにするのも一つの手段です。
脳血管障害を契機に発症する脳血管性認知症は、脳の障害の程度によって認知症の症状の程度も異なることが特徴で、何より脳血管性認知症になった自分自身が「認知症であること」を理解できていることが多いです。
脳血管性認知症の場合は、記憶障害だけでなく感情失禁も見られ、1日を通してでも非常に症状に波があります。そのため、「さっきまで覚えていたことでも、次聞いたときには忘れている」ということもあります。そんな本人の辛い状況を理解して自尊心を傷つけないような関わり方を心がけましょう。
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