記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
脳の血管が血栓によってつまり、動脈の狭窄や脳細胞の壊死が起こり、さまざまな症状が引き起こされる「脳梗塞」ですが、前兆として頭痛や吐き気が起こることはあるのでしょうか。
今回は激しい頭痛と脳梗塞の関係、そして、頭痛症状から発症が疑われる「くも膜下出血」という病気についても、解説していきます。
突然激しい頭痛に襲われたり、また頭痛に吐き気や嘔吐などを伴うときは、脳梗塞ではなく「くも膜下出血」の可能性も考慮します。
脳疾患のなかでも、特にくも膜下出血では激しい頭痛症状が出ることで知られていて、重症の場合には叫び、痛みで意識を失うほど激しい頭痛が現れるといいます。以下に、脳梗塞とくも膜下出血それぞれの前兆をまとめましたので、参考にしてください。
くも膜下出血は年間約2万人が発症するといわれ、このうち3分の1が死亡し、3分の1には何らかの障害・後遺症が残るといわれる、恐ろしい脳疾患です。
3つの層から成る脳のなかで、中間にあたる「くも膜」と「脳表」の間の血管で成長してきた動脈瘤(血管の瘤)が破裂し、2層の間で急速に出血が広がることで発症します。
動脈瘤は、破裂するかよほど大きくなって周囲を圧迫しない限り、何の自覚症状もなく少しずつ成長を続け、ある日突然破裂します。この動脈瘤が破裂するときに激しい頭痛を伴うといわれ、出血は血圧と頭蓋内圧が同じになれば止まりますが、脳ヘルニアなどで死亡することもあり得ます。
このように、くも膜下出血は誰にでもいつでも発症する可能性のある病気であり、予後が悪くなることもある重篤な病気なのです。
突然の激しい頭痛を訴え、くも膜下出血の発症が疑われる患者には、一般的に以下のような検査が行われます。
上記のうち、患者の状態や体質にあわせて複数の検査が行われ、検査結果を総合的に鑑みたうえで、くも膜下出血と診断されます。
実際の検査・診断の手順は、病院や医師の方針によって異なることもありますので、詳しくは受診する医療機関に問い合わせてください。
脳疾患にもさまざまな種類があり、激しい頭痛の症状は、脳梗塞ではなく脳卒中の一種であるくも膜下出血の可能性が高いと考えられます。くも膜下出血は痛みとともに脳内で動脈瘤が破裂し、脳の中で出血が広がる恐ろしい病気で、発症すると何らかの後遺症を残すケースも少なくありません。前兆を感じた場合は一刻も早く病院に行き、適切な検査・診断を受けて、治療を開始してください。