貧血と生理の関係-生理前と生理中の立ちくらみは貧血のせい?

2018/6/11

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

生理前や生理中に起こる立ちくらみは貧血によるものなのでしょうか?また、どのような対処をすればいいのでしょうか?貧血と生理の関係や、対処法について解説していきます。

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貧血と生理前・生理中の立ちくらみとの関係は?

生理(医学的には月経というのが一般的です)前や生理中のふらつき・立ちくらみの原因は、必ずしも貧血だとは限りません。健康診断で貧血と診断された場合や、普段から貧血気味で月経前症候群により悪化した場合などは、もともとあった貧血が生理中に出やすくなる可能性はあります。
また、出血量が多めの人は、生理の終わりごろになると貧血になることがあります。

生理前に立ちくらみや頭痛、腰痛などの症状が出るのはなぜ?

生理前の、排卵~生理までの2週間は黄体ホルモンの分泌により

  • 立ちくらみ
  • 頭痛
  • 腰痛
  • 腹痛
  • イライラ

などの「月経前症候群(PMS)」の症状が出やすくなります。

また、黄体ホルモンによる水分代謝への影響で、血圧変動や自律神経の乱れなどが起き、貧血や立ちくらみが生じることもあります。

自律神経が乱れによる体の影響の可能性も

自律神経失調症とは、検査しても異常が見られない心身の不調のことで、特に生理前は症状が悪化することが多いとされています。自律神経は、全身の各臓器のコントロールを行っているため、自律神経のバランスが崩れると、心身に下記のような影響を及ぼします。

  • 疲労感が続く
  • 体がだるい
  • 息切れ
  • 肩こり
  • 手足がしびれる
  • むくみ
  • めまい
  • 耳鳴り
  • 吐き気
  • 胃痛、動悸
  • 発汗
  • 冷え性の悪化
  • 食欲低下
  • お腹の張り
  • 下痢、便秘
  • 寝つきが悪い、就寝中に何度も目覚める
  • 気分が落ち込む
  • やる気の低下

以上のような症状は、他の病気(甲状腺機能低下や仮面うつ病など)でも起こるため、必ずしも自律神経失調症によるものとは限りません。そのため、心臓の働きやホルモンバランスの異常の有無を確認するために、内科や脳外科で検査を受けることをおすすめします。

生理中に貧血のような症状が出る場合は?

普段から(生理の時期を問わず)立ちくらみ・動悸・息切れなどの症状が見られ、生理時期に症状が悪化する場合は、貧血の可能性があります。また、血液検査で貧血と診断された場合や、生理時期のみに症状が出るという場合も、貧血の可能性があります。

生理前・生理中の貧血のような症状にはどう対処すればいい?

ストレスは大敵

脳にある「視床下部」という部分は、自律神経のコントロールを司っていて、心身に強いストレスがかかると、うまく機能しなくなってしまいます。そのため、自律神経を正常に機能させるためには、疲労・睡眠不足・栄養の偏り・カロリー不足・心理的ストレスなどの自律神経のバランスを乱す要因を避ける必要があります。

血糖コントロール

生理前に起こる立ちくらみが酷い場合は、自律神経のバランスを乱す要因や栄養不足・偏りを改善し、血糖値のコントロールをすることで、症状を軽減できる可能性があります。
食事を摂る際には、以下のことに気をつけるようにしましょう。

  • ビタミンやミネラルの豊富な食品を食べる
  • 足りない栄養素はサプリメントなどで補う
  • 砂糖が多く含まれている食品は避ける
  • 炭水化物のみの食事は避ける
  • 間食を控える
  • 食事を摂る順番に気をつける(「野菜類→肉」「魚→主食」の順番で食べると血糖値の変動を抑えることができます)

鉄剤による貧血治療

貧血は、鉄剤の服用や注射による治療が行われます。注射の場合は、頻繁に病院を受診する必要があるため、通常は内服薬による治療が行われます。ただし、胃痛・吐き気・便秘などの副作用により鉄剤の服用が難しい場合は、注射による治療がすすめられます。

サプリメントや食べ物

鉄分は、薬だけではなく、食品やサプリメントからでも摂取することができるので、日頃から積極的に摂取し、貧血の予防対策をすることが大切です。また、サプリメントで摂取する場合は、「ヘム鉄」と呼ばれる鉄分を選ぶようにしましょう。その際に、ビタミンCや葉酸を同時に摂取するとより効果が得られやすくなります。
鉄分が多く含まれる食品には、以下のようなものがあります。

  • 肉の赤身や魚
  • アサリやシジミ
  • 緑黄色野菜
  • プルーン

生理時の経血量が多い場合に行われる可能性がある治療

低用量ピルや黄体ホルモン剤
出血の元となる子宮内膜を薄くする効果があります。
偽閉経療法
注射薬により閉経の状態にして、生理を完全に止める方法です。ただし、閉経と同じ状態になるため、骨粗しょう症などを起こすリスクから6ヶ月以上の連用はできません。
ホルモン付加子宮内避妊具(ミレーナ)
過多月経に使用されることが多い方法で、避妊具を挿入することで子宮内膜を薄くする効果があります。
手術
子宮筋腫や子宮腺筋症を患っていて、将来的な妊娠を希望していない人の場合は子宮全摘術を行うこともあります。ただし、過多月経による貧血であれば改善が望めますが、月経前症候群の症状は卵巣からのホルモン分泌によるため子宮を摘出しても改善が望めない可能性が高いです。妊娠を希望しており過多月経の症状が重症の場合は、筋腫や腺筋症の部分だけを切除する核出術を行います。

おわりに:自律神経を整え、栄養補給にも注意して貧血を予防しよう

生理前や生理中の立ちくらみは、必ずしも貧血が原因というわけではなく、月経前症候群(PMS)や自律神経失調症などによっても起こります。生理前・生理中の貧血を防ぐためには、日頃から自律神経のバランスを乱す要因を避け、血糖値をコントロールすることが大切です。また、鉄分を多く含む食品やサプリメントなどから鉄分を補給するのもおすすめです。

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