記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/23
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
平日の朝遅くまでずっと寝ている、授業中に昼寝してしまう、休日は寝て過ごしてしまう……。10代の若者はいつも寝てばかり、と周囲の大人は思っているかもしれません。でも、睡眠の専門家によると、最近の10代の人たちはこれまでにないほど睡眠が取れていないというのです。
10代特有の体の変化や受験などのプレッシャーといった昔からあるストレスに加えて、ベッドの中でスマートフォンや携帯電話をずっと触っているといった外的要因などが、睡眠不足につながっていると言われています。
睡眠パターンは、光とホルモンによって決まります。夕方暗くなると、メラトニンと呼ばれる化学物質が生成され、体内時計に睡眠時間を知らせるサインを出します。でも、現代は人工の光が睡眠パターンを乱しています。部屋の照明、テレビ、ゲーム機、携帯電話、タブレット、パソコンは、すべてメラトニンの生成を止めるのに十分な光を放つのです。
学校の始業時間を遅くすれば、睡眠時間が確保されると考えるかもしれません。実際、アメリカのいくつかの学区では、パフォーマンスを改善するために生徒の授業開始時間を遅くすることを導入しましたが、睡眠不足の改善にはつながらなかったという結果が出ています。
平日の睡眠不足を解消するために、週末に長時間眠る人がいますが、これはあまり理想的ではありません。深夜まで起きている状態に加えて、長く眠ってしまうと、体内時計をさらに乱してしまう可能性があるためです。
重度の症例では、体内時計が乱れてしまった結果、夜遅くまで眠ることができなくなる人もいます。このような状態を遅延睡眠期症候群(DSPS)といいます。これは、時差ぼけの感覚に似ています。DSPSを治療するためには、毎朝約30分間明るい光の中で過ごすといった光線療法と、個人の自然な睡眠リズムを回復させる時間療法があります。
場合によっては、就寝前に少量のメラトニンを投与する治療を受ける人もいます。長期的にみると、この治療法は体内時計をリセットするのに役立ちます。
どんなに疲れていても、週末に寝だめすることは避けましょう。休日もできるだけいつもと変わらない時間に起床し、太陽の光を浴びましょう。
眠れない、眠ってもすぐ目が覚めてしまう、日中にどうにもならないほど強い眠気に襲われるなど、睡眠障害の可能性があるときは、医師に相談しましょう。医師は、睡眠問題に対処するための基本的なアドバイスができますし、必要に応じて睡眠クリニックを紹介してくれることもあります。
10代の子たちは十分な睡眠時間が取れていると思っているかもしれませんが、実際はあと1、2時間多く眠ったほうがいいことがわかっています。テレビを見る時間を区切ったり、早く寝るよう促したりして、子どもたちが十分な睡眠時間が取れる環境を整えてあげてください。