貧血と血圧が低いことって何が違うの?

2018/6/16

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

症状が似ているため混同されがちな貧血と低血圧ですが、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか?また、どのような対処をすればいいのでしょうか?貧血と低血圧の違いについて解説していきます。

貧血と血圧が低いことって違うの?

貧血と低血圧では、めまいなど似たような症状が起こることがありますが、以下のように全く違うものです。

貧血

貧血とは、血液中に含まれる赤血球数またはヘモグロビンの量が、通常よりも低くなる状態のことです。ヘモグロビンは複合タンパク体と鉄から構成されており、鉄不足が起こると、赤血球の縮小・赤みが薄くなる・酸素を体内に運搬出来なくなるなどの症状が起こります。

ただし、鉄不足以外が原因となり貧血が起こることもあり、例えば、胃潰瘍・腸のポリープ・不正性器出血・過多月経などによって慢性的な出血が生じ、貧血が発症することもあります。特に女性は毎月の月経により多くの血液を必要としますが、その出血量が骨髄で作られる血液量を超えると、貧血が進行する可能性が高くなります。

低血圧

動脈を通る血液が血管壁に与える力を血圧といい、血圧は体の各場所によって異なります。
通常の血圧は、高い所から低い所に血液が流れることにより血圧が安定していますが、低血圧の場合は逆に、低い所から血液を流さなければならなくなり、十分な血液が脳や体の末端に行き渡らず、全身の倦怠感・立ちくらみ・めまい・冷え性・肩こり・動悸・食欲不振などの症状が起こります。
ただし、低血圧は高血圧と比べて重い病気になるリスクは低いとされており、逆に長生きをする人が多いとも言われています。

低血圧の基準値は特に規定されてはいませんが、一般的には、収縮期血圧100~110mmHg以下、拡張期血圧60mmHg以下を低血圧と呼ぶことが多いです。
低血圧の種類は、はっきりとした原因がわからない本態性低血圧が最も多く、他にも、急に立ち上がった時に起こる起立性低血圧や、食事後に眠くなる食後性低血圧などがあります。

貧血と低血圧の対処法は?

貧血の対処法

貧血はヘモグロビンの量の減少により起こるので、改善するためには鉄分とタンパク質を積極的に摂取することが必要となります。
まずは貧血の有無を確認するために、病院で採血を受けましょう。貧血の治療では、貧血を引き起こしている根本的な病気を改善しなければいけないので、その原因を特定する必要があります。

例えば、胃潰瘍の出血が続いていて貧血が起こっている場合は、胃潰瘍の治療と出血を抑える治療を施し、過多月経が原因の場合は子宮筋腫の手術やピルの内服を行うことで貧血を改善させます。また、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などの血液の病気によって貧血が起こることもあり、その場合は専門医の治療が必要になります。

低血圧の対処法

低血圧は、心臓から拍出された血液が血管壁を押す力(ポンプ作用)の低下により起こります。
低血圧には様々な原因があり、自律神経の乱れやアレルギー疾患が原因で起こることもあります。まずは自分の基礎血圧を計測し、本当に血圧が低いことで起こっている症状かどうかを確かめましょう。

食生活では水分補給をこまめに行い、腎臓や心臓に問題がなければ食塩も多めに摂取してかまわないとされています。タンパク質、ミネラル、ビタミンなどの栄養素をバランスよく摂取することも大切です。ただし、自分が知らないうちに病気なってしまっている可能性があるので、塩分の摂取量については医師に相談した方がいいでしょう。

本態性低血圧(原因のはっきりしない低血圧)

薬物療法に頼る前に、過労や睡眠不足を避け、規則正しい生活を送ることが大切です。
また朝起きるのがつらいという人は、目覚めたときに急に起き上がるのではなく、しばらくベッドの上に座ってから起き上がるなど、急激な動作は避けるようにしましょう。

起立性低血圧(長時間立っていると起こる低血圧)

起立性低血圧は、満員電車などの人の多い場所や、猛暑や台風などによって症状が起きやすくなるので、交通手段や外出時間の変更を行うなどの工夫をしましょう。また、下半身の筋力を強化することで、血行が良くなることがあります。

おわりに:まずは血液検査と血圧検査を受けましょう

貧血とは、血液中に含まれる赤血球数またはヘモグロビンの量が、通常よりも低くなる状態のことで、主に鉄不足が原因で起こるとされています。低血圧は、血液が動脈を通る時に血管壁に与える力が弱くなることで、はっきりとした原因がわからない本態性低血圧が多いとされています。
貧血を改善するためには鉄分とタンパク質の摂取と、根本的な原因の病気を改善することが必要となり、低血圧の改善には、水分や食塩の補給や、規則正しい生活習慣を心がけることが重要です。

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