痔の手術は日帰りで受けられるの?手術後の過ごし方は?

2018/6/13

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

痔の治療法の一つに手術がありますが、痔の手術は日帰りで受けられるものなのでしょうか?また、手術後の日常生活ではどんなことに注意する必要があるのでしょうか?術後の再発や後遺症の可能性についても、併せてお伝えしていきます。

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痔の手術は日帰りで受けられるって本当?

痔は症状によっては手術による治療が必要ですが、以前は入院が必要だった手術も日帰りで行うことができるようになりました。仕事や家庭の都合で長期の入院が難しかった人にとっても治療が受けやすくなり、医療費の軽減も期待されています。

しかし、すべての患者さんが日帰りで手術を受けられるわけではありません。痔の症状だけではなく、全身状態、そして術後の対応ができる環境にあるかどうかで、入院が必要になることもあります。日帰りで手術を受けられる目安として、日本大腸肛門病学会では以下のように挙げられています。

  1. 全身状態良好で重大な合併症を持たない患者
  2. 術後経過の説明を十分理解し、術後の処置が自分で行える
  3. 年齢は70歳以下
  4. 独居ではなく術後の緊急時にも対応できる状態にある
  5. 通院にかかる時間が1時間半以内

そのほか、医師や病院など医療機関側の事情も合わせ、日帰りで行うか入院で行うかを決めていくことになるでしょう。

日帰り手術後の過ごし方は?

日帰りとはいえ、麻酔を使う手術に変わりはありません。以前は入院で行っていたような術式もあるため、術後の過ごし方には注意点があります。入院時は、病院スタッフと一緒に行っていた術後の管理も、日帰り手術では家庭で管理をしなければなりません。

例えば手術では、痔そのものを処理した部分と、肛門の外側に傷ができます。傷口が回復するまでは、傷に負担をかけず、傷を清潔に保ちましょう。排便後はお尻を洗って十分に乾かすことが必要です。また、便秘や下痢は、傷口を広げたり刺激をしたりするため、便通のコントロールも大切になります。

手術当日は、帰宅後の激しい運動は避けて入浴もしないようにします。手術翌日に通院して患部の診察を受け、問題なければ入浴や排便、家事などを行っていけるようになりますが、2週間程度は力仕事や激しい運動、長時間の車の運転、自転車やバイクの運転は避けましょう。いずれも、手術をした場所に負担がかかるのを防ぎ、出血や痛みのリスクを抑えるためです。

また、痔の治療で入院はしないにせよ、手術後は数回の診察が必要です。そして、手術直後は傷への負担をかけないような生活が必要となるため、仕事や家庭のスケジュール調整は必要となります。特に、旅行や出張は急な出血や悪化に対応しきれなくなるので、術後すぐの予定には入れないようにしましょう。

手術後の後遺症や再発はないの?

手術を行えば、患部自体は取り除かれるため再発はしません。しかし、便秘や下痢といった便通の異常や、肛門に負担のかかる生活を行っていれば別の部位で症状が現れることはあります。

また、痔の手術には、以下のようにいくつかの後遺症があります。

肛門狭窄(こうもんきょうさく)
手術の際に、肛門を切り取らなければいけないこともあります。その後遺症で、肛門が狭くなってしまい、便の出しづらさや、出血、肛門が切れるといった症状が現れます。
粘膜脱(ねんまくだつ)
肛門を切り取ったことで、中の粘膜が外に出やすくなってしまう状態です。手術後数十年経ってから現れることもあり、粘液でベタベタしたり、出血をしたりします。
便漏れ、便失禁
肛門を調節するための筋肉が切断されてしまい、肛門のしまりがゆるくなってしまうことで、便漏れや失禁が起きてしまう状態です。

痔の症状は、最初から手術だけが選ばれるわけではありません。薬物療法や生活習慣の改善が優先されることもあります。不安な点は医師と確認をし、必要であればインフォームドコンセントも検討すると良いでしょう。

おわりに:痔の手術はメリットとデメリットを理解したうえで受けるかどうかを決めよう

以前は入院をして行っていたような痔の手術も、日帰りで行えるようになってきました。ただ、痔の程度は個人で異なり、手術後の傷の管理や定期的な受診が必要になるため、誰しもが日帰りで受けられるとは限りません。

また、手術をしたからといって手術前と同じような生活を続けていれば、別の部位で痔にならないとは限りません。手術のメリット・デメリットをしっかりと確認しておくことや、生活習慣や排便習慣の見直しが大切となります。

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