記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/15 記事改定日: 2018/8/10
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
排便時に肛門が切れて出血が起こったり、肛門付近にいぼがあることで痛みが生じたりする厄介な「いぼ痔」。そんな痔を解消する薬には、いったいどんな種類があるのでしょうか?また、副作用の可能性はないのでしょうか?使用上の注意点も含めて、詳しく解説していきます。
注入軟膏は、特殊な形をした小さな容器に入っている、使い捨ての軟膏です。先端が細くノズルのようになっており、この部分を肛門内に挿入して、本体部分を押すことで肛門より中に薬が注入されます。浣腸をイメージするとわかりやすいでしょう。
男女ともに、痔の半分以上はいぼ痔であるという調査報告があります。いぼ痔には、肛門より奥側にできてしまうもの(内痔核)と肛門より外側にできるもの(外痔核)がありますが、注入軟膏はその形状から、肛門より奥にできる内痔核に使いやすい軟膏です。手を汚さず、内部に挿入したときも違和感が少ないように工夫されています。
また、必ずしも中に挿入しなくても良く、薬を指にとって患部にぬったり、清潔なガーゼにのばして患部に貼ったりしても使用できます。そのため、外痔核や、肛門周囲の皮ふが切れてしまう切れ痔にも使うことができます。
1日に使用できる上限回数が決められているので、回数に合わせて排便後や入浴後に用いると良いでしょう。
軟膏タイプの薬は、適量を清潔な指にとって患部に塗ったり、ガーゼなどにのばして患部に貼ったりして使用します。肛門の内側には対応しきれず、肛門の外側にできたいぼ痔や切れ痔に用いることに適しています。
注入軟膏と同様に、1日に使用できる上限回数が決められています。回数に合わせて排便後や入浴後に用いるようにしましょう。
処方されたまたは購入した座薬を見てみると、肛門に挿入しやすい形状の錠剤が個包装されているかと思います。使い方としては、まず包装を外し、錠剤の下のほうを持って肛門に十分に押し込みます。和式便座にしゃがむように少し足を広げて膝を曲げると挿入しやすくなります。座薬を入れたら、そのまま肛門に力を入れながら膝を伸ばしましょう。
座薬は、肛門内に挿入されると体温によって溶け出し、すばやく患部に直接広がります。薬が溶けるまではやや違和感があり、激しく動くと座薬が外に出てしまうこともあるため、薬を使用した直後はできるだけ安静にしましょう。肛門内に挿入するため内痔核に対応しています。
他の薬と同様に、1日に使用できる上限回数が決められています。回数に合わせて排便後や入浴後に用いると良いでしょう。
痔に関する薬は、医師によって処方される薬のほか、身近なドラッグストアなどで手に入る市販薬の種類も豊富です。また、漢方薬も使われることがあります。
そして、痔の内服薬は大きく2種類あります。ひとつは錠剤や顆粒タイプで、胃や腸で成分が吸収されることで痔の症状に作用するものがあります。もうひとつは舌下錠とよばれ、舌の下側に錠剤をおくことで血管に成分が吸収され、血流に乗って痔まで移動して作用するものです。舌下錠では、消化器官で代謝を受けることなく、直接患部へ到達できるという特徴があります。
内服薬には、主に血の流れを良くする作用や、切り傷や擦り傷の治りを促進する作用などがある薬剤があります。また、便通を調整する成分が含まれているものもあります。
副作用の全くない薬はありません。痔に対する薬にも副作用のリスクはあり、症状に合わせた適切な使用が大切です。
特にステロイドについては、医師が処方する薬だけではなく、市販薬の成分としても含まれていることがあります。ステロイドは長期の服用によって、副作用が起こることがわかっており、感染が生じやすくなったり、皮膚が過敏になり患部が赤くただれてしまうことがあります。
また、肛門周囲には多くの細菌が存在しているため、細菌感染のリスクもあります。自己判断で症状を悪化させる前に、医師の診察を受け、適切な治療を受けるようにしましょう。
なお、市販薬には子供に使ってはいけないものなど、使用に制限がかけられているものもあります。購入時には店頭の薬剤師などに相談をすることも大切です。
つらいいぼ痔の痛みには即効性のある薬を使用したいものです。
いぼ痔の薬には、肛門内に注入するタイプの軟膏や座薬、飲み薬など様々な種類のものがあります。その中でも即効性があるものは、有効成分が直接いぼ痔に作用する注入軟膏です。
また、含まれる成分も様々ですが、抗炎症作用が強いステロイドや痛みをブロックする麻酔成分が含まれたものを選ぶとよいでしょう。
妊娠中は、大きくなった子宮によって肛門周辺に圧力が加わる状態になります。そのため、肛門周囲の静脈が圧迫されてうっ血を生じ、いぼ痔ができやすくなるのです。また、妊娠中はホルモンバランスの変化や腸管の圧排、脱水などによって便秘になりやすく、いぼ痔を悪化させる原因になります。
しかし、自己判断で安易に市販薬を使用するとお腹の中の赤ちゃんに影響を与える恐れがあります。いぼ痔に悩んだときは、必ずかかりつけの産婦人科で相談してから薬を処方してもらうようにしましょう。
痔の薬には、注入タイプや軟膏、座薬のほかに、口から飲む内服薬もあります。市販薬は身近で手に入ることもあり、自己判断で治療をしている人もいるでしょう。しかし、痔の種類によって適した薬のタイプは異なり、また副作用のリスクがあるステロイドが含まれている薬もあります。そのため、まずは医師に状態を確認してもらい、合った薬を処方してもらうことが望ましいです。