記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/27 記事改定日: 2020/8/19
記事改定回数:3回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
貧血になると、立ちくらみや動悸などいろいろな症状を引き起こすことがありますが、症状として手足のしびれが出ることがあります。今回は、手足のしびれを引き起こす貧血についてやめまいや立ちくらみと手足のしびれについて解説していきます。
貧血の中でも最も代表的な「鉄欠乏性貧血」では、手足にしびれの症状が出ることはほとんどないといわれています。
偏食やダイエットによって鉄分が不足し、鉄分を原料とするヘモグロビンが十分に作られなくなったことで起こる貧血です。
ヘモグロビンは血の赤みのもとであり、血液に乗って酸素や栄養を届ける役割があるため、鉄欠乏性貧血では酸欠によるめまいや動悸などの症状が出やすいのが特徴です。
一方、「巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)」という鉄欠乏性貧血とは異なる原因で発生する貧血があります。
ビタミンB12や葉酸が不足することで赤血球をうまく生成できず、貧血を起こす巨赤芽球性貧血では、めまいや立ちくらみといった典型的な貧血症状のほか、白髪、舌の荒れや手足のしびれが出ることがあるといわれています。
前述したとおり、巨赤芽球性貧血はビタミンB12または葉酸の不足や吸収障害によって、赤血球がうまく作られなくなることで起こります。
このビタミンB12と葉酸はどちらも赤血球をうまく作るために必要な成分ですが、偏食などで不足すると異常な形や大きさの赤血球ばかりが生成されるため、結果として貧血になるのです。
また、食物から摂ったビタミンB12と葉酸は一旦胃で吸収され、そこで内因子と呼ばれる分泌物と結合して初めて、きちんと吸収されて赤血球の原料となります。
このため、胃の不調や切除、内因子に抗体ができる自己免疫疾患がある場合は吸収障害が生じ、偏食と同様にビタミンB12・葉酸不足による巨赤芽球性貧血になる可能性があります。
なお、葉酸は飲酒量の多い人や妊婦、ビタミンB12は菜食主義者に不足しやすいといわれる栄養成分です。
そして巨赤芽球性貧血で手足にしびれが出るのは、ビタミンB12の不足によって手足の神経細胞の生成が阻害されるためと考えられています。
めまいや立ちくらみなど、典型的な貧血症状とあわせて手足のしびれが出てきた場合には、巨赤芽球性貧血やそのほかの病気を疑い、医療機関でしかるべき検査・治療を受けましょう。
巨赤芽球性貧血は放置すると、さらに貧血症状や神経障害症状が強くなります。
また、ビタミンB12は脳の機能を維持するのに必要な栄養素でもあるため、巨赤芽球性貧血を放置したままビタミンB12が著しく不足した状態が続くと認知機能が低下したり、錯乱や異常行動などの意識障害を引き起こしたりすることがあります。
葉酸が著しく不足することにより「味覚障害」の症状が出ることもあります。
貧血や神経障害以外にも全身に様々な影響を及ぼすこともありますので、できるだけ早めに治療を始めるようにしましょう。
めまいや立ちくらみ、動悸などの貧血症状とともにしびれが現れたときは、できるだけ早く病院で診察を受けるようにしましょう。
受診に適した診療科は一般的な内科です。簡単な血液検査を行うことで貧血の有無などはすぐに調べることができますので、かかりつけの医療機関でよいでしょう。
まれに脳や神経系の異常によってこれらの症状が見られることもあるため、「内科でいいの?」と不安に思う方もいますが、必要があればしかるべき医療機関を紹介してもらえますので安心してください。
巨赤芽球性貧血による手足のしびれは、とくにビタミンB12の不足が原因と考えられるため、治療法としてはビタミンB12を補う補充療法が行われるのが一般的です。また、食事からの吸収に障害を起こしている可能性も高いため、患者の様子を見ながら週に2~3回ペースから注射・点滴によるビタミンB12の投与を行っていきます。
なお、ビタミンB12はある程度蓄積していくため頻繁に投与を行う必要はなく、投与ペースは2~3か月に1回くらいまで減らせるケースが多いようです。
巨赤芽球性貧血以外にもめまいや立ちくらみと共に手足のしびれが生じる病気があります。
特に注意しなければならない病気は、脳の血管がつまる脳梗塞や血管が破れる脳出血です。
このような病気が「小脳」や「延髄」に生じると、ふわふわとした体が浮き上がるようなめまいや手足の痺れ、脱力、頭痛などが引き起こされます。
突然これらの症状が現れた場合、痺れに左右差がある場合は注意が必要です。思い当たる症状がある場合は、なるべく早めに病院を受診するようにしましょう。
貧血の中でも一般的な鉄欠乏性貧血の場合は、手足のしびれはほぼ見られません。ただし貧血症状と一緒に手足のしびれが出るときには、巨赤芽球性貧血などの病気の疑いがあります。専門治療が必要な病気もあるので、該当する症状がある場合は、一度医療機関を受診しましょう。