記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/22 記事改定日: 2019/1/28
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
睡眠不足によって風邪を引きやすくなるのはなぜか知っていますか?
ここでは睡眠不足と風邪の関係性について解説していきます。
対処法もあわせて紹介していくので、風邪対策に役立ててください。
睡眠中は、免疫細胞や成長ホルモンの働きが活発になり、傷ついた細胞の修復が行われます。そのため、質の良い睡眠をとることにより病気に対する抵抗力を高めることができます。逆に睡眠不足が続くと免疫力が低下し、風邪などの病気になりやすくなります。
免疫細胞は「細胞性免疫」と「液性免疫」の2つに分類され、睡眠によってその働きが大きく左右されます。細胞性免疫には、体内に入り込んだ細菌などを攻撃したり、取り込んだりする働き(貪食機能)があるのですが、睡眠不足や不眠症などによりその機能が低下してしまいます。
また、抗体や補体による防御機構を持つ液性免疫も、睡眠不足によりその働きが低下してしまいます。抗体や補体とは、免疫細胞により作られるタンパク質のことで、主に血液やリンパ液中に存在します。抗体は細菌と組み合わさることで細胞性免疫の働きを促進したり、ウイルスや異物と組み合わさることで感染力や毒性を消す作用があります。補体にはそれらの抗体の作用を増強する効果があります。
そして、睡眠不足による免疫低下は以下のことでも起こる可能性があります。
自律神経とは、身体機能のコントロールを司っている神経のことで、活動に関係する交感神経と、休息に関係する副交感神経の働きのバランスを取ることにより、健康な状態を保っています。
通常、睡眠中は副交感神経の働きが活発になるのですが、睡眠不足などの理由で副交感神経に切り替えられないと、自律神経のバランスが乱れ、心身に不調をきたしてしまいます。そのため、風邪になるリスクを高めることにも繋がります。
慢性的なストレスは免疫力の低下につながります。
コルチゾールや副腎皮質刺激ホルモンなどのストレスホルモンは、早朝から午前中にかけて徐々に分泌量が増え、夕方から夜中にかけて低下するようになっています。
特に、「徐波(じょは)睡眠」と呼ばれるノンレム睡眠よりも深い眠りのときに、最もストレスホルモンが少なくなるとされているため、睡眠の質が低下するとストレスホルモンの解消が追い付かなくなり、ストレスが溜まっていってしまうのです。
海外のある研究によって、平均睡眠時間と風邪が長引くことの間に相関関係があることが確認されており、夜間の平均睡眠時間が5時間以下の人の場合は、7時間睡眠をとる人と比較すると病気にかかるリスクが4.5倍になることがわかっています。
また、5~6時間睡眠の人の場合は4.2倍となり、6時間以上睡眠をとる人はリスクの増加がなくなることが確認されました。
風邪の回復や風邪の予防のために睡眠の質を高めるには以下のことに取り組みましょう。
風邪の予防や回復のためには質の高い睡眠を取ることが大切です。
質の高い睡眠を取るための対策には以下のようなものが挙げられます。風邪を引きやすい人や、風邪を引いた時にはぜひ実践してみて下さい。
風邪を引いたときに無理に食べる必要はありませんが、少しでも体調が落ち着いてきたら体力や免疫力を回復させるために少しずつ食べるようにしましょう。消化吸収の良いものや、栄養価の高いものがおすすめです。
免疫細胞全体の約6割が腸にあるといわれているほど、腸は免疫力と関係が深いため、なるべく腸に負担をかけない食品を摂取しましょう。
熱すぎるものや香辛料がきついもの、揚げ物などの胃腸に負担をかける食品は避けるようにしましょう。また、風邪の時は発熱などにより水分が多く消費されるため、電解質を含むスポーツドリンクや経口保水液などで、こまめに水分を補給しましょう。
体を温めることにより、体温が上がると免疫力向上につながります。
そのため風邪を引いたときには、温かい飲み物を摂取したり、重ね着をするなどの工夫をして、免疫力を高めるようにしましょう。
風邪を引いているときには、免疫力が通常時よりも低下しているため、1つのウイルスに感染した後に、また別のウイルスに感染する恐れがあります。風邪のウイルスは種類が多いため、1つのウイルスに免疫がついても、すぐに別のウイルスに感染する可能性が高いのです。
とくに風邪を引いているときは、喉の防御機能が弱まっているため、うがいや手洗いで予防する必要があります。うがいをする際は水だけでも効果がありますが、殺菌成分が配合されているうがい薬を使用することでより効果的になります。
発熱などにより多量の水分が失われると、脱水症状になる可能性があります。脱水症状になると、免疫力が弱まり回復が遅れるため、そうならないためにもこまめに水分補給を行いましょう。
風邪を引きやすくなるのには、睡眠不足による自律神経の乱れ・ストレスホルモン解消の妨げ・免疫力の低下などが関係していると考えられています。風邪を予防するためにも、十分な睡眠時間の確保や質の良い睡眠をとるように心がけましょう。