記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/22 記事改定日: 2019/2/17
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
花粉症治療の方法の一つに、注射での治療がありますが、この注射治療にはどんな種類があるのでしょうか。また、どんな副作用のリスクがあるのでしょうか。それぞれ解説していきます。
ヒスタグロビン注射はアレルギーの原因に関係なく、アレルギー疾患を体質から改善する根本治療に用いられます。
週に2回程度、原則6回の注射をおこなうことで、3~4か月間あらゆるアレルギー反応を抑える効果が期待できます。注射を受けたすべての人に同じ効果があるとはいえませんが、ステロイドとは違って副作用が非常に少ない注射です。
一方、ノイロトロピン注射に使用されている成分は痛みを軽減する働きが知られており、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの主要症状に効果的です。
また、ノイロトロピン注射は他の薬との併用をしてもほぼ問題がありません。消炎鎮痛剤や抗アレルギー剤などの花粉症の薬、ビタミン剤などと併用しても、予期しない副作用があらわれることもほとんどないといわれています。
他にも、ノイロトロピン注射は化学合成されていないため、比較的体液に近く、注射時にあまり痛くないこともメリットにあげられます。
ヒスタグロビンとノイロトロピンにはメリットだけでなく、副作用のリスクもあります。
ヒスタグロビン注射は、献血などで得られた人の血液から、免疫グロブリンと呼ばれる人の体に含まれる主なたんぱく質成分を抽出して作られた、化学合成によらない自然成分の注射です。しかし、ショックなどの副作用がゼロであるとは言い切れません。
ヒスタグロビンの注射が初めての場合は接種後、念のため経過観察を行う必要があります。また、免疫不全症の患者や癌などの治療で免疫抑制剤を投与している人、ステロイドホルモンの長期投与、大量投与をしている人などは慎重に経過を見てください。
他にも、喘息患者で生命のリスクを有する症状がある人、衰弱状態にある人、以前ヒスタグロビン注射でアレルギー症状が出現したことがある人は、原則としてヒスタグロビン注射は行えません。
一方、ノイロトロピン注射も、化学合成によらず作られた注射です。ワクシニアウイルスと呼ばれる安全なウイルスをウサギの皮膚に注射し、炎症を生じた皮膚組織から抽出した、たんぱく質を構成する成分にならず、生体に何らかの反応をもたらす成分を含んでいます。こちらは、長期連用でも副作用がほとんど無いといわれています。
皮下免疫療法とはアレルゲン免疫療法の一種であり、アレルギーの原因物質である「アレルゲン」を皮下に少量ずつ注射していくことで身体を慣らし、アレルギーが起こりにくい体質に導く治療法です。
花粉症では花粉に含まれる成分の注射が行われますが、症状が改善するまでには3~5年ほどかかるとされています。しかし、その後は治療を続ける必要はなくなりますので非常に効果が高い治療と言えます。
ただし、治療中は通院回数が多くなることやアレルゲンの注射によって呼吸困難や血圧低下などを引き起こすアナフィラキシーが生じる可能性があるなど、注意しなければならないこともあります。一般的には、薬物療法やレーザー治療などに効果が見られない重症な花粉症患者に対して行われる治療ですが、治療の必要性やメリット・デメリットなどについて担当医とよく話し合ってから行うようにしましょう。
花粉症の注射の中では、「注射1本で1シーズンの症状が抑えられる」と謳うケナコルト注射もあります。ケナコルト注射は長期的に通院する必要がなく、費用も安く抑えられるため、手軽な治療法に思えますが、実は中身はステロイドです。
ステロイドは非常に強い免疫抑制作用があるため、免疫反応の一種である花粉症の症状も抑えられますが、その高い効果と引き換えに副腎皮質機能低下や皮膚障害、月経異常など、様々な副作用が強く出る可能性があります。
必ず治療内容を確認し、日本耳鼻咽喉科学会や日本アレルギー学会が推奨する治療ガイドラインに沿った治療を受けるようにしましょう。
注射での花粉症治療は、すでに症状が始まっている方や内服薬や点鼻・点眼剤で治りにくい方に大変効果的です。ヒスタグロビンやノイロトロピン注射は副作用のリスクが低く、安全性も高いですが、中にはこれらの注射が適さない人もいます。まずは医療機関を受診して、医師による診察を受けてください。
また、花粉症の治療は注射だけにとどまらず、さまざまなものがあります。自分に合った治療法を見つけ、医師の指示に沿った治療をおこないましょう。