記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/25
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
強い腰の痛みを生じさせ、発症すると日常生活に大きな支障をきたす「椎間板ヘルニア」。一般的に広く知られている病気ですが、発症する原因は何なのでしょうか。
今回は椎間板ヘルニアの原因について、遺伝的要因の他、肥満や喫煙など生活習慣的な要因が関係あるのか、ご説明していきます。
椎間板ヘルニアの主な発症原因は、椎間板の老化・劣化による損傷です。もともとの老化や劣化によって耐久性をなくしていた椎間板中心部のゼリー状組織である髄核(ずいかく)が、圧力に耐えられず突出して、神経を圧迫することで発症します。
髄核が突出するきっかけとしては、椎間板が老化・劣化している人が重いものを持ち上げる、引っ張る、身体をひねる、長時間座り続けるなどの動作が挙げられます。
一説には、肥満によって体重が増えると椎間板・髄核に加わる負担が増え、椎間板ヘルニアを発症しやすくなるという指摘もありますが、明確な因果関係は確認されていません。しかし、肥満による体重増加によって椎間板がつぶれ、劣化しやすくなるということは調査によって明らかにされています。
このため2018年現在の時点では、肥満が椎間板ヘルニア発症の直接原因となる可能性は低いものの、複合的な要因の1つにはなり得ると考えられています。
椎間板を含む骨格の大きさや位置、かたちには、遺伝子情報が大きく関係しています。骨格の形成には、先天的な遺伝子的要因と後天的な環境的要因の両方が作用していますが、生まれつき椎間板がもろい、狭いなどの遺伝的特徴があれば、発症はしやすくなります。
このため、両親に椎間板ヘルニアになりやすい骨格が見られる場合には、その骨格の特徴が遺伝して、子が椎間板ヘルニアを発症する可能性も高くなると考えられるのです。
ただし、椎間板ヘルニアになりやすい遺伝的特徴を持っているからといって、必ずしもその子が椎間板ヘルニアを発症するというわけではありません。遺伝的に、加齢による椎間板の老化・劣化に伴って発症リスクが高くなるものと理解しておきましょう。
喫煙によるニコチン摂取は、椎間板ヘルニアの発症原因になる可能性があります。
というのも、背骨と背骨の間に位置し、骨のクッションのような役割をしている椎間板には、血管が通っていません。このため、椎間板は周囲組織の毛細血管から染み出す血液からスポンジのように栄養を吸収し、そのクッション性と働きを維持しているのです。
しかし、喫煙によってニコチンの作用で毛細血管が収縮するようになると、椎間板に十分な栄養が行き届かず、薄くなってクッション性が失われて椎間板が劣化していきます。この結果、背骨同士が直接当たって神経をも圧迫して、椎間板ヘルニアを発症しやすくなるのです。
なお、喫煙による椎間板発症リスクの上昇は、受動喫煙でも同様だといわれています。たとえ自分が吸わなくても、同じ空間で過ごす家族や同僚に喫煙者がいた場合には、これが原因で椎間板ヘルニアを発症しやすくなりますので、注意が必要です。
椎間板ヘルニアの発症原因は「椎間板の老化や劣化」ですが、発症にいたる経緯やきっかけには、肥満・遺伝・喫煙などの先天的・後天的要因が複合的に絡み合っています。肥満・遺伝・喫煙のいずれも直接的な原因ではありませんが、発症の一因となっているケースは多いです。原因となるものを知れば椎間板ヘルニアの発症リスク減につながるかもしれませんので、一度自分の家族や生活習慣を振り返ってみましょう。