記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
特にがん治療でリンパ節を切除した人などに、生じることがある「リンパ浮腫」。このリンパ浮腫は、マッサージをすれば解消できるのでしょうか?自分でできる浮腫の解消法について解説します。
身体には動脈、静脈のほかに、皮膚のすぐ下に「リンパ管」が網目状に張り巡らされ、タンパク質や白血球などを運ぶ「リンパ液」が流れています。わきの下や首や脚の付け根には「リンパ節」という豆のような形のものがあり、感染やがんが全身へ広がるのを抑えています。
「リンパ浮腫」は、主にがん治療でのリンパ節の切除や放射線によるリンパの流れの停滞からくる、腕や脚のむくみです。切除などした場所に近いところからむくみはじめ、腕や脚が以前より太くなってだるい、重い、疲れやすいなどの症状があらわれます。重症化すると皮膚が乾燥して硬くなる、毛深くなる、間接が曲がりにくいなどの変化が起こります。がん治療を受けたすべての人が発症するわけではありませんが、一度発症すると治りにくいという特徴があり、軽ければ自己管理をしながら日常生活を送ることができますが、重症化すると生活に支障をきたすことがあります。
リンパ浮腫を発症してしまった場合には、むくみを改善し重症化を防ぐことが重要です。専門医に受診し、日常生活での注意点を守り、スキンケアを行うといった自己管理を行うとともに、個々の症状に応じて「用手的リンパドレナージ」とよばれるマッサージ、「圧迫療法」や「圧迫下での運動」を組み合わせた「複合的治療」を行うことが推奨されています。
用手的リンパドレナージは、腕や脚にたまったリンパ液を正常なリンパ節に誘導してむくみを改善する、専門的な医療行為です。一般のマッサージや美容目的のリンパドレナージとは異なり、技術を持たない人が自己流で行うと逆に悪化してしまう場合もあります。また、用手的リンパドレナージは必ずしも必要なものではなく、治療の基本となる圧迫が不適切であれば、むくみは改善しません。
治療の基本は、圧迫によって皮下組織内の圧力を高めてリンパ液がたまるのを防ぐ圧迫療法です。まず自分でできるのは、寝るときには脚や腕を上げて寝ること、立っているときには少し脚や腕を動かしてマッサージ効果を得ることです。
日中の活動時には、専門医の指導に従って適切な弾性ストッキングや弾性スリーブをつけましょう。軽度から中度のリンパ浮腫では弾性スリーブやグローブ、ストッキングなどの「弾性着衣」、高度の場合は「弾性包帯」を用います。この状態でできるだけ大きくゆっくりと筋肉を動かすような運動をすることも効果的です。腕にむくみのある場合にはゆっくり大きく手を握ったり開いたり、ひじや手首の曲げ伸ばしをし、脚にむくみのある場合にはゆっくりひざや足首の曲げ伸ばしをします。ただし、過度な運動は逆効果となりますので、注意が必要です。
リンパ浮腫の解消法としては、専門的な医療技術に基づく用手的リンパドレナージというマッサージがありますが、自己流では逆に症状を悪化させる可能性があります。専門医の指導のもと、弾性着衣などで適度な圧迫を保ちながら、セルフケアで改善させていきましょう。