風邪に抗生物質が効かないって本当?

2018/6/29

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

風邪をひいたときに抗生物質を処方されたことのある方は少なくないと思いますが、近年では、「風邪には抗生物質は効かない」という考え方が浸透しつつあります。その理由や抗生物質によるリスクについて、以降ではご紹介していきます。

風邪のときに抗生物質は使わないほうがいいって本当?

抗生物質は、いわゆる風邪(感冒)の症状においては、あまり意味がありません。

まず、一般的に風邪とは、のどの痛みや、くしゃみ、鼻水、頭痛、だるさ、発熱、せきといった複数の症状が現れて、通常は1週間程度で治るものをいいます。風邪の症状を引き起こしている原因のほとんどはウイルスです。抗生物質は細菌に対して効果がある薬剤で、ウイルスに対しては効果がありません。抗生物質を肺炎の予防のために処方されることもありましたが、現在ではそういった予防効果はないとされています。

厚生労働省によると、風邪に対して抗生物質を処方しても回復が早くなることはなく、かえって嘔吐や下痢など副作用のリスクもあるとされています。そして、風邪に対しての抗生物質の使用については「使わないことを推奨する」としています。

厚生労働省ホームページを編集して作成】

風邪を治すために・・・と、抗生物質に頼っちゃダメ!

これまで抗生物質を処方された機会が多い人の中には、医療機関で抗生物質を処方してくれないことを不満に感じる人もいるかもしれません。しかし、抗生物質をむやみに使うと、体の中で抗生物質に対して強い菌である「薬剤耐性菌」を生んでしまうことがあります。

薬剤耐性菌はMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)など、いくつかの種類があり、世界レベルで問題となっています。薬剤耐性菌は健康な人には問題はありませんが、健康上に問題がある人が感染すると、治療の方法がない重篤な状態を招くことがあります。特に院内感染においては、もともと重篤な症状の人に感染が広がり、複数の人の命に関わることもあります。

薬剤耐性菌を生まないようにするためには、ひとりひとりが正しい使い方を心がけることが必要です。抗生物質が処方されるときには、何のために必要であるのかということや、正しい飲み方を確認しましょう。また、処方された抗生物質を、自己判断で中途半端に止めたり、同じ症状だからと残っていた抗生物質を飲んだりすることも薬剤耐性菌を生む原因になります。抗生物質が処方されたときは、必ず服用の指示に従って飲み、最後まで飲み切りましょう。

おわりに:風邪に抗生物質は効かない。ただし、処方されたときは指示を守って最後まで飲み切ることが大切。

現在では、風邪に対しての抗生物質の処方は推奨されていません。抗生物質をむやみに使うことで、薬剤が効きにくい薬剤耐性菌が生まれてしまうことがあります。薬剤耐性菌は、健康な人には問題はありませんが、健康上に問題がある人にとっては重篤な症状を招き、治療の手立てがないという状態になりかねません。抗生物質が処方されたときには、必ず服用の方法を守って、飲み切ることが大切です。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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