記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/3
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「過呼吸」という言葉を一度は聞いたことがあるかと思いますが、過呼吸になると具体的にどのような症状が現れるのでしょうか?また酸欠とはどのような違いがあるのでしょうか?以降で解説していきます。
過呼吸の主な症状として、呼吸が浅く速くなることがありますが、その他にも以下のような症状が起こることがあります。
このような息苦しさが起こる原因は、酸素の吸入量が増えることにより、血液中の二酸化炭素の量が低下し、それ以上二酸化炭素を減少させないように呼吸中枢が呼吸数を抑えようとするためだとされています。
しかし、呼吸中枢の抑制に従い呼吸数を減らすと、今度は酸素を吸入することができなくなるので、呼吸数が速くなり、余計に苦しくなるという悪循環が起こります。
また、血液中の二酸化炭素分圧が低下することで、血液がアルカリ性に傾く呼吸性アルカローシスになることがあります。呼吸性アルカローシスになると、血管収縮が起こり、以下のような症状が現れることがあります。
このような症状は、血管収縮に伴い血流が減少し、カルシウムイオンが減少することにより起こるとされています。まず血液がアルカリ性に傾くと、血液中のアルブミンと水素イオンを分離させてpH(水溶液中の水素イオン濃度)を正常な状態に戻そうとします。しかし分離したアルブミンがカルシウムイオンと結びついてしまうと、血中のカルシウムイオンが低下し、しびれや硬直などの症状の発生の原因となってしまうのです。
過呼吸は、通常時よりも呼吸が浅く速くなることにより、血中の二酸化炭素が大幅に減少し、血液がアルカリ性に傾くことで息苦しくなる症状のことです。症状が重くなると、しびれ、けいれん、意識混濁などの症状が起こることがあります。
一方、酸素欠乏症(酸欠)とは、空気中の酸素濃度が18%未満になったときに、必要な酸素量を吸入出来なくなり、引き起こされる症状のことです。通常、私たちが暮らしている空間は酸素濃度が約20.9%に保たれているため、18%を下回ると筋力低下、意識混濁などが起こり、最悪の場合死に至ることもあります。
特に多くの酸素を必要とする脳は影響を受けやすいため、酸欠事故は死亡災害などの深刻な事態を引き起こしやすいとされています。
過呼吸は、以下のようなメカニズムで発生します。
また過呼吸は、緊張や不安などの精神的ストレスが急激に高まることにより起こるとされています。そのほかに、自律神経の乱れも原因の一つと考えられています。自律神経の乱れにより心身の様々なバランスが崩れると、呼吸速度が上がり血中の酸素量が増加するためです。そのため、自律神経の乱れの原因となる以下のようなことが、過呼吸を引き起こす要因となります。
過呼吸になると、本人がパニック状態に陥ることが多いため、周囲の人はまずは慌てずに患者やその家族に落ち着くように促しましょう。
過呼吸を引き起こしている患者さんは、周囲の目を引きやすく、騒がしい環境だと不安を増悪させてしまうため、できるだけ静かで人の少ない場所に移動するようにしましょう。
浅く速い呼吸は、息苦しさやしびれなどの症状を悪化させるため、息を吸うよりも吐くことに意識を集中させるようにしましょう。
口をすぼめて、ろうそくの火を吹き消すようにイメージすると、ゆっくりと息を吐きやすくなります。また、声がけを行いながら背中を呼吸のリズムで優しく叩くの、効果的です。
不安感を増悪させないように、患者を安心させるような声がけを行いましょう。
不安や緊張などの精神的ストレスが強く、慢性的に発作が起こっている場合は、精神科や心療内科の治療をすすめるようにしましょう。
過呼吸の応急処置は、口に紙袋を当てて呼吸を促すペーパーバッグ法を行うものだと思っている患者さんもいますが、最近ではこの方法は本人に恐怖や混乱を引き起こす恐れがあるため、あまり推奨されていません。最悪の場合は、二酸化炭素の吸入量が過剰になり、窒息に至るケースもあります。そのため、ペーパーバッグ法は行わないようにしましょう。
過呼吸は、主に緊張や不安などの精神的ストレスや自律神経の乱れなどが原因となり発症するとされています。浅く速い呼吸以外に、息苦しさや動悸など過呼吸の症状が起きたら、まずは落ち着いて息を吸うよりも吐くことに意識を集中させるようにしましょう。