食事でがんを予防できる?食生活の改善で得られる効果とは

2017/3/23

佐藤 典宏 先生

記事監修医師

産業医科大学第1外科

佐藤 典宏 先生

現在、特定の食品や栄養素が、がんのリスクを軽減できるかどうかが研究されています。野菜や果物をたくさん食べることは、肺、口腔、食道、胃、大腸のがんのリスクを低下させることに役立つものの、研究者たちは、果物や野菜のどの栄養素が最も有用であるのかまでは特定できていません。では、どんなことに気をつければ、がんのリスクを軽減したり予防できたりするのでしょうか。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

研究でわかっていること

研究によると、 地中海食(魚、果物、野菜、豆、全粒粉などの食べ物を食べること)はがん予防を始めとするさまざまな健康上のメリットがあります。また、カルシウムとビタミンDは結腸直腸がんのリスクを低下させる、葉酸ががんのリスクを低下させるといった報告もあります。

ただいずれの報告も、効果を実証できるほどの根拠が集まっていない段階です。これらの報告が実証されるには、研究の積み重ねが必要です。したがって、現時点では野菜や果物を中心とした食生活を心がけ、脂肪分、塩分、コレステロール、糖分を控えた食事を心がけるのがよいと思います。

食生活改善のためにできること

健康的な食事には、果物、野菜、全粒粉、豆類(乾燥豆とエンドウ豆)、ナッツ類を含むものです。タンパク質については、魚、鶏肉、赤身肉、低脂肪および無脂肪乳製品の量を考慮してください。

また、脂肪は病気のリスクを下げる効果があるため、健康な食事の一部に含める必要があります。研究によると、善玉コレステロールを含む脂肪を使うと、総コレステロールの値を下げる効果がわかっています。善玉コレステロールを含む脂分として、以下のような物があります。

一価不飽和脂肪酸

キャノーラ油、オリーブ油、アボカド油およびピーナッツ油、およびその他のナッツ油に含まれる。また、豆類、オリーブ、種子、ナッツ、ナッツバター、新鮮なアボカドにも含まれます。

多価不飽和脂肪酸

トウモロコシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油のような植物油、ゴマ油、ヒマワリの種、トウモロコシ、大豆、および他の多くの種類の穀物、マメ科植物、ナッツおよび種子に含まれています。

オメガ3脂肪酸

サケ、ニシン、イワシ、サバといった、油を多く含む魚(油性魚)に多く含まれます。 また、亜麻仁(油)、クルミにも見られます。特に、魚のオメガ3脂肪酸は健康に効果的です。 たとえば心疾患のリスクがある場合、炎症や心臓発作のリスクを減らすことができるという結果があります。

植物化学物質とは

植物化学物質とは、植物の中に含まれている物質で、一般的な植物化学物質として、ベータカロテン、ビタミンC、葉酸、ビタミンEがあります。果物、野菜とともに植物化学物質を含む食品を食べることで、がんのリスクを減らしたり、骨や心臓、脳の健康をサポートしたりすることができる、と提唱する専門家もいます。

植物化学物質を多く含む食べ物は、ブロッコリー、カリフラワー、ニンジン、トマト、ニンニク、エンドウ豆(大豆を含む)、全粒、ナッツ、亜麻仁およびグレープフルーツがあります。

ハーブや栄養補助食品を摂るべきか

最新の栄養補助食品が、がんを予防または治療するという話を聞くと、飛びついてしまうかもしれません。しかし、「サプリメントが、がんを予防または治癒する」といった広告の宣伝文句は、効果が実証されていない可能性が高いです。食事にハーブやサプリメントを追加する前に、必ず主治医に相談してください。食事の内容を極端に変えてしまうと、新たな健康上のリスクが生じる可能性があるためです。

また、ビタミンEとベータカロチンの栄養補助食品は、非常に健康的なもので、がんのリスクを抑えるのに役立つと言われていますが、アメリカではこれについて異議を唱える団体もあります。また、喫煙など、肺がんのリスクがある人の場合、ベータカロチンを摂取すると肺がんのリスクを高めることがわかっています。そして、マルチビタミンが、がんのリスクを減らすのに役立つという根拠も今のところありません。

がんのリスクを高める食品は

がんを予防する効果がある食品はまだはっきりわかっていませんが、がんのリスクを高める可能性がある食品については研究によって明らかになっています。

がんのリスクを高める可能性がある食品

・加工肉(ハム、ベーコン、ソーセージ、サラミなど)
→結腸直腸がんのリスクを高める
・飽和脂肪酸が多い食品
→太りすぎによってさまざまながんのリスクを高める
・アルコール
→口、喉、食道、肝臓、乳房、結腸直腸のがんのリスクを高める

アルコールを飲む場合は、男性の場合は1日2杯、女性の場合は1日1杯までにしてください。1杯というのは、ビール350ml(4.5%アルコール)、150mlのワイン(12.9%アルコール)、またはウィスキー45ml(アルコール度数40度)です。

食生活の改善で予防できる病気

研究によると、食生活の改善によって、がんや2型糖尿病、骨粗しょう症および心臓病のリスクを下げるようです。

また、食生活の改善によって、健康的な体重を維持することにもつながる、という効果もあります。あまりにも体重が増えると、がんや心臓病、 高血圧および他のさまざまな健康リスクが高まります。 食物繊維が豊富で低脂肪の食事とともに、定期的な運動を心がけると、体重が減少するだけでなく、その維持もしやすくなります。

おわりに

特定の食品にがんのリスクを下げる効果があるかどうかがまだ明らかになっていないため、現時点では野菜や果物を中心とした食生活を心がけつつ、適度に運動するのが一番の予防と言えます。また、発がんリスクを高める食品はわかっているので、これらの食べ物をなるべく控えるようにすることも大事です。バランスのよい食生活を心がけて、健康的な日々を過ごしましょう。

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